- 著者
-
小林 敬一
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.4, pp.401-414, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
- 参考文献数
- 57
- 被引用文献数
-
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2
近年,教授による学習が効果的な理由を説明する様々な考えが提案されてきた。本論文では,その学習効果の背後にどのような心的過程が仮定されているかという観点から,それらの説明を次の5つの仮説に整理した。(a)知識構成仮説:教授・教授準備が知識構築や生成的処理を促進することで学習効果を生み出す。(b)動機づけ仮説:教師役を務めることが学習内容の知識構成的な処理を動機づける。(c)説明生成仮説:説明産出の行為やその準備が知識構成を促す。(d)メタ認知仮説:教授的説明の産出や生徒役との相互作用がメタ認知的モニタリングを介して知識構成を促進する。(e)検索練習仮説:説明産出に伴う検索練習が学習効果を生み出す。さらに,先行研究の知見を批判的に検討した結果,知識構成仮説とメタ認知仮説を肯定する証拠は多少揃っているが,残り3つの仮説については証拠がほとんどないか知見が分かれていることが示唆された。最後に,教授による学習研究の課題と展望を述べた。