著者
寺井 洋平
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.5-13, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
30

この総説では,全ゲノム情報から見えてきたニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax,Temminck 1839)と他のハイイロオオカミ(C. lupus)(イヌを含む)の関係について紹介する.ニホンオオカミはかつてアジアに生息していたハイイロオオカミの1系統であり,約100年前まで日本列島南部(本州,四国,九州)に分布していたが,その後絶滅した.ニホンオオカミの系統が東アジアで他のハイイロオオカミから分岐したのは17,000年から4万年前程度だと推定される.ニホンオオカミはイヌに最も近縁なハイイロオオカミの系統であり,またニホンオオカミの祖先が東ユーラシアのイヌの祖先と交雑したと推定されている.そのため,現存の東ユーラシアの在来イヌのゲノムにはニホンオオカミの祖先のゲノムが含まれている.江戸時代にはイヌとニホンオオカミの交雑個体がいたことも示され,日本列島ではイヌとニホンオオカミは関係が深かったのかもしれない.ニホンオオカミについては,いつ日本列島に渡来したか,いつ小型化したかなどまだまだ謎は多いが,今後の日本列島出土のイヌ/オオカミの古資料を用いた古代ゲノム情報がさらにニホンオオカミの姿を明らかにすると期待している.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (11 users, 15 posts, 27 favorites)

こちらが2023年の今もっともアチアチな論文。ニホンオオカミとハイイロオオカミとの関係だけでなくイヌを含むその他のイヌ科動物との遺伝的交流についても解析している。 J-STAGE Articles - 全ゲノム情報から知るニホンオオカミ https://t.co/VNq91DmzBq
寺井洋平. (2023). 全ゲノム情報から知るニホンオオカミ. 哺乳類科学, 63(1), 5-13. https://t.co/AHzC7thBiP
全ゲノム情報から知るニホンオオカミ https://t.co/o6qZoiyUnD
全ゲノム情報から知るニホンオオカミ https://t.co/dV9oR8cI6D これが無料で読めるのは本当にすごい。イヌとオオカミの進化の歴史を調べる上でニホンオオカミが非常に重要な位置にあったことがわかる。著者は「イヌはどこで誕生したか」という謎について、おそらく東アジアだと推定している。
@satoyamanagain 最新! https://t.co/E9fwQ5DtVm
ゲノム関連の総説(https://t.co/rH4T3iUjFW)は、↑にあげたプレプリント段階の英語論文が重要な位置づけにあるのでそっち読まないと把握しきれない部分もあるけど、ニホンオオカミは今世界中で話題沸騰中のイヌの原種との関わりがあるかもという点がポイントだと思った。 https://t.co/XJCUqBN3cH
「特集 ここまでわかった絶滅した日本の狼の起源」『哺乳類科学』63巻1号 > ―はじめに― https://t.co/r8cYJRwZBi > 全ゲノム情報から知るニホンオオカミ https://t.co/rH4T3iUjFW > ニホンオオカミの形態学~その研究史と今後の発展~ https://t.co/fojJoMBmup
J-STAGE Articles - 全ゲノム情報から知るニホンオオカミ https://t.co/VNq91DmzBq

収集済み URL リスト