著者
趙 慶喜
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.35-47, 2018 (Released:2018-10-12)
参考文献数
14

本稿はここ数年韓国で熾烈な論争を引き起こしている女性嫌悪言説を追跡したものである。「嫌悪(혐오)」という語には,憎悪(hate)と嫌悪(disgust),そして恐怖(phobia)が混在している。嫌悪は新自由主義時代のグローバルな現象であると同時に,韓国社会を強力に規定してきた分断イデオロギーや敵対性の記憶によって増幅される情動である。本稿では,2015年以後に起きたいくつかの出来事を通して,「女嫌」という情動の増幅と転換の過程を考察した。江南駅女性殺害事件とともに触発された韓国の「女嫌」論争は,メガリアンという新たなフェミニスト集団を誕生させた。メガリアンは女性嫌悪に反対するという消極的な立場にとどまらず,「女嫌嫌」を目指すミラーリング戦略をとった。ミラーリングは単に原本のコピーに止まらず,原本がいかに差別と嫌悪にまみれたものであるのかを反射を通して知らしめる戦略であった。彼女たちは,男性たちの女性への快楽的な嫌悪表現や日常的なポルノグラフィをそっくりそのまま転覆することで男女の規範を撹乱した。メガリアが爆発的な波及力を持ちえたのは,女性たちの共感と解放感という同時代的な情動が共振した結果であった。しかし,女嫌をめぐる葛藤は単なる男女の利害関係をこえたより複雑な分断にさらされた。とりわけLGBTへの反応は,右派/左派あるいは世代や宗教のあいだの様々な対立構図を生み出した。たとえばキリスト教保守陣営による「従北ゲイ」という言葉は,反共と反同性愛を結合させることで韓国社会の内なる敵への憎悪と嫌悪を凝縮させ,フェミニストやLGBTなど既存の境界を撹乱する存在に対する過剰な情動の政治を作動させた。本稿は「女嫌」言説の増幅過程を通して,それが韓国社会に蓄積された様々なイデオロギー的葛藤のひとつの兆候であることを明らかにした。

言及状況

外部データベース (DOI)

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・最近読んだ論文 趙慶喜「韓国における女性嫌悪と情動の政治」 https://t.co/3PV5OSCajy 韓国でのフェミニズムの勃興については詳しく追えていなかったので、流れが少し分かった。江南駅の事件は知っていたが、メガリアン、テレビ番組の流れは知らなかった。あとキリスト教との関係など。
@aswtryv @kkrkkr88 https://t.co/gSKgbzdeVG
@Shogo_tkhs @Artanejp そうなんですが、言葉の濫用が酷いものです。 ネットの弊害でもありますね。 メガリアンとも区別しなければなりません。それを全て「フェミ」で片付けようとするからおかしくなる… フェミはフランス革命から今まで同じ主張ですね。 https://t.co/gSKgbzdeVG
@terrakei07 是非とも、メガリアンという言葉でフェミニズムと区別して頂きたいです。フェミニズムは男性差別ではありません。 メガリアンという言葉の使用を! https://t.co/gSKgbzdeVG
@nippon_ukuraina それはフェミニストではなく、メガリアンですね。 メガリアンとフェミニズム、フェミニストを区別していきましょう。影響力のあるナザレンコさんがちゃんと区別していけば、後に続く人も多いかと思われます。 現在の似非フェミはメガリアン。 https://t.co/gSKgbzdeVG 過激派です。
このような間違った認識が広がるのは、やはりインターネットの弊害なんだろうなぁ…メガリアンとかいう言葉もできたみたいなので、いい加減、フェミニズムと区別しなければ、どんどん酷くなりそうですね。 https://t.co/gSKgbzdeVG https://t.co/v5wzkPvBoM
趙慶喜「韓国における女性嫌悪と情動の政治」『社会情報学』6巻3号、2018年、35-47頁。 https://t.co/PluKg9lqDt
J-STAGE Articles - 韓国における女性嫌悪と情動の政治 https://t.co/MjrUHhxQu7
J-STAGE Articles - 韓国における女性嫌悪と情動の政治 https://t.co/LpScofwEFN 何日か前にご丁寧に「あなたのツイートはメガリアンに利用されてますよ」と言ってくる人がいたので、割と新し目の話を読んでた

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