著者
小原 敦美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

情報、システム科学分野のさまざまな問題が、正定値対称行列あるいはそのひとつの一般化である対称錐上の構造あるいは数理計画問題として定式化されるようになってきている。本研究は、対称錐と関連の深いJordan代数を道具として1.対称錐およびその部分集合の幾何構造や性質、特に情報幾何との関連、2.対称錐上の線形計画問題アルゴリズムの開発と解析3.これらの知見のシステム科学分野とくに制御理論への応用を目的としていた。これに対して研究実績としては1については、情報幾何で特徴的な双対接続のJordan代数による特徴付け(裏ページ発表論文3)、錐の特性関数のレベルセット上のダイバージェンスの性質(発表論文2)やアファイン幾何との関連(発表論文1)、また対称錐上の平均の定義と測地線との関連(発表論文4)などの成果が得られた。2については、1と関連して双対な接続に関して平坦の部分集合の重要性が明らかになっているが、計算量と曲率の明確な関係はまだ得られていない。部分的な結果は発表準備中であるが、今後の課題としたい。3については対称行列の正定値性を順序とする不等式、いわゆる線形行列不等式を用いた応用的な結果を得た。制御理論への応用として、発表論文5,6をあげておく。
著者
中村 佳正 江口 真透 辻本 諭 小原 敦美 太田 泰広 広田 良吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中村は正定値行列の空間上の算術平均演算と調和平均演算の繰り返しによって,与えられた正定値行列の平方根行列に2次収束する算術調和平均のアルゴリズムを定式化した.このアルゴリズムは情報幾何学的には空間の2点間の互いに双対な測地線上の中点をたどる算法という意味をもつ.小原は算術調和平均のアルゴリズムが定義される正定値行列空間を対称錘の空間上に拡張し,これらの平均演算が測地線の中点を定めるなど対称錘の空間の情報幾何構造を解明した.正定値が成り立たない場合,算術調和平均のアルゴリズムは一般に収束しない.近藤と中村は,算術調和平均のアルゴリズムの漸化式の一般項が行列式表示されることを発見した.可解なロジスティックマップについても同様な表示が見つかった.さらに,この表本式と系の可解性に基づいて,不変測度と積分計算によらずに,系のLyapunov指数が正となることを示した.さらに,中村と辻本はアルゴリズム機能をもつ離散時間可積分系のプロトタイプである離散時間戸田方程式(qdアルゴリズム)の並列化の研究を開始した.まず,2個のプロセッサーによる分散メモリ型並列計算機システムを構築し,qd表を左右に2分割してそれぞれのプロセッサーで並列に計算させることに成功した.この並列化によって3重対角行列の固有値計算時間が約60%に減少した.さらに,qd表の特性に注目して一部を斜め45度に分割することでさらに並列化効率が改善されることを確認した.以上の研究は可積分によるアルゴリズム開発の今後の研究において有用になるものと考えられる.