著者
木村 欣司 野呂 正行 辻本 諭 中村 佳正
出版者
一般社団法人日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.307-322, 2005-09-25

A new method for constructing the minimum polynomial for the symbolic computation in terms of the discrete Toda equation is proposed. For the sparse matrices, the proposed method is efficiently carried out on a finite field arithmetic avoiding the division by zero. As a consequence, this paper presents new methods for the symbolic computation of the solution of simultaneous equation, the determinant and the eigen polynomial of a large scaled sparse matrix.
著者
辻本 諭
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.567-588, 2015-02-25

本論文の目的は,イングランド内の3教区(セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ,チェルシ,ブラッドフォード・オン・エイヴォン)の定住資格審査記録をもとに,18世紀イギリスの陸軍兵士とその家族の実像を明らかにすることにある。兵士の入隊前の職業,識字能力,不動産賃借,市民社会への復帰過程の各項目について審査記録の情報を分析すると,「この世の屑」という言葉でしばしば表現される,18世紀以来の古典的な兵士像がきわめて一面的であることが明らかとなる。むしろ彼らの多くはありふれた中・下層の民衆であり,それぞれの社会的・経済的事情に合わせて自ら主体的に入隊を選択した人々であった。兵士の妻についても,結婚以前に奉公人ないし徒弟として職業経験を持つ,典型的な中・下層の女性が多く含まれていた事実を指摘することができる。軍隊と市民社会の間に見られるこうした人的同質性は,両者が絶えざる人の循環によって強固に結びついていたことを示している。民衆によって媒介されるこの草の根の結合関係こそは,募兵制を原則とするイギリスが大規模な軍事拡大を行っていくための前提条件であった。
著者
中村 佳正 江口 真透 辻本 諭 小原 敦美 太田 泰広 広田 良吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中村は正定値行列の空間上の算術平均演算と調和平均演算の繰り返しによって,与えられた正定値行列の平方根行列に2次収束する算術調和平均のアルゴリズムを定式化した.このアルゴリズムは情報幾何学的には空間の2点間の互いに双対な測地線上の中点をたどる算法という意味をもつ.小原は算術調和平均のアルゴリズムが定義される正定値行列空間を対称錘の空間上に拡張し,これらの平均演算が測地線の中点を定めるなど対称錘の空間の情報幾何構造を解明した.正定値が成り立たない場合,算術調和平均のアルゴリズムは一般に収束しない.近藤と中村は,算術調和平均のアルゴリズムの漸化式の一般項が行列式表示されることを発見した.可解なロジスティックマップについても同様な表示が見つかった.さらに,この表本式と系の可解性に基づいて,不変測度と積分計算によらずに,系のLyapunov指数が正となることを示した.さらに,中村と辻本はアルゴリズム機能をもつ離散時間可積分系のプロトタイプである離散時間戸田方程式(qdアルゴリズム)の並列化の研究を開始した.まず,2個のプロセッサーによる分散メモリ型並列計算機システムを構築し,qd表を左右に2分割してそれぞれのプロセッサーで並列に計算させることに成功した.この並列化によって3重対角行列の固有値計算時間が約60%に減少した.さらに,qd表の特性に注目して一部を斜め45度に分割することでさらに並列化効率が改善されることを確認した.以上の研究は可積分によるアルゴリズム開発の今後の研究において有用になるものと考えられる.