著者
眞崎 直子 橋本 修二 川戸 美由紀 尾島 俊之 竹島 正 松原 みゆき 三徳 和子 尾形 由起子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-169, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
23

目的 人口動態統計に基づく東日本大震災後の自殺死亡数を観察し,岩手県,宮城県と福島県(以下,3県と記す)の沿岸部の市町村と沿岸部以外の市町村での大震災後の自殺の超過死亡について,検討した。方法 基礎資料として,統計法第33条による人口動態統計の調査票情報から,2010年1月1日~2013年3月31日の死亡情報を利用した。死亡の定義としては,死亡年月日,死亡者の住所地市町村,性別,死亡時年齢,原死因コード(国際疾病分類第10回修正;ICD-10)とした。それ以外に,2009~2013年度の住民基本台帳人口と2010年の国勢調査人口を利用した。地域と期間別に自殺による死亡数を集計した。死亡者の住所地市町村を用い,3県の市町村およびそれ以外に区分し,沿岸部と沿岸部以外に分類した。期間としては,死亡年月日を用いて,東日本大震災の発生月(2011年3月)の1年前から2年後までの3年間とし,月に区分した。自殺は,ICD-10のX60~X84と定義した。自殺SMRは,地域と期間ごとに,3県以外の全国の同年同月の死亡率を標準死亡率として計算し,その有意性を近似的な検定方法で検定した。人口としては,2009~2012年度の住民基本台帳人口から線型内挿法で算定した。ただし,住民基本台帳人口では,公表資料の最終年齢階級が80歳以上のため,性別に80歳以上人口を2010年の国勢調査人口で80~84歳と85歳以上に比例按分した。結果 3県の沿岸部と沿岸部以外における東日本大震災前後の自殺SMRを算出した。震災後2年間(2011年3月~2013年2月)を通して,自殺SMRは沿岸部と沿岸部以外ともに増加傾向がなかった。3県において,震災前1年間に対する震災0~1年の自殺SMRの比は0.92,震災1~2年の自殺SMRの比は0.93であり,いずれも有意に低かった。3県の県別に沿岸部と沿岸部以外ごとにみると,震災前1年間に対する震災0~1年と1~2年の自殺SMRは0.73~1.07であり,福島県沿岸部の震災1~2年で0.73,宮城県の沿岸部で震災後1~2年で0.83および全体で0.90,3県全体の沿岸部以外について,震災1~2年で0.80,沿岸部以外で0.90,全体で震災0~1年,1~2年それぞれ0.92,0.93と有意に低く,一方,有意に高いものはなかった。結論 東日本大震災後の3県の自殺死亡について,震災から2年間には自殺死亡の増加がなかったと示唆された。今後は,中長期的に観察を継続していくことが大切であると考える。
著者
石飛 マリコ 越田 美穂子 尾形 由起子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.5_13-5_24, 2013-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

本研究は,高齢な親と同居している男性統合失調症患者が「自立」に向かうプロセスを明らかにすることを目的とした。男性統合失調症患者7名に半構成的面接を行い,M-GTAを用いた分析の結果,【頼みの綱は親の支え】【親のかかわり変化の気づき】【ケアされる側からケアする側への行きつ戻りつの逆転】【親への依存と自立の混在からの葛藤】【つきまとう病の存在】【気負わない親子関係】【社会のなかの居場所の獲得】【親が他界することへの前準備】の8つのカテゴリーが生成された。【親のかかわり変化の気づき】【ケアされる側からケアする側への行きつ戻りつの逆転】【社会のなかの居場所の獲得】が「自立」に影響していた。 男性統合失調症患者と親との立場の逆転が生じていることを肯定的に受け止め,自信や意欲の向上につなげること,社会から孤立しコミュニケーションが乏しく,ストレス対処方略が少ない男性統合失調症患者の特徴を踏まえた支援が必要である。
著者
山口 のり子 尾形 由起子 樋口 善之 松浦 賢長
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.69-78, 2013 (Released:2014-02-26)
参考文献数
33
被引用文献数
2

目的 地域社会全体で子育てに取り組む意識としての「子育ての社会化」の構成概念を明らかにし,その「子育ての社会化」意識・行動と「地域に対する評価」,「ソーシャル・キャピタルの認識」との関係について明らかにする。方法 調査Iでは,「子育ての社会化」に関連する文献検討により 7 つの構成概念を仮説として考え,その構成概念を表す58項目を作成し,A 町の20~60歳未満の女性227人を対象に自記式質問紙調査を行った。分析方法は,最尤法,バリマックス回転を用いた因子分析を実施し,クロンバックの α 係数を算出した。調査IIでは,調査Iで得られた「子育ての社会化」意識・行動を示す32項目と「地域に対する評価」15項目,「ソーシャル・キャピタルの認識」10項目について,B 市内の C 中学校区に居住する,就学前の子どもを持つ母親353人,小学生を持つ母親325人,45~60歳未満の壮年期女性383人,計1,061人を対象に自記式質問紙調査を行った。3 つの指標の関係を重回帰分析と共分散構造分析を用い検討した。結果 調査Iでは,有効回答148件を分析対象とし,「子育ての社会化」意識・行動の構成概念として,「地域共同子育て意識」,「子育て支援行動」,「子育て交流意識」,「ボランティア意識」,「公的扶助意識」,「子ども育成態度」,「地域へのまなざし」,「支え合い意識」の 8 因子32項目が抽出された。調査IIでは,有効回答375件を分析対象とし,「子育ての社会化」意識・行動を従属変数とし,「ソーシャル・キャピタルの認識」,「地域に対する評価」を独立変数とした重回帰分析の結果,「ソーシャル・キャピタルの認識」が「子育ての社会化」意識・行動に与えている影響は,有意であった。共分散構造分析の結果,「ソーシャル・キャピタルの認識」と「地域に対する評価」は,独立した関係であると仮定したモデルの適合度が高かった。「子育ての社会化」意識・行動を従属変数とし,「ソーシャル・キャピタルの認識」の下位尺度である「信頼」,「社会参加」,「つきあい・交流」を独立変数とした重回帰分析の結果,「つきあい・交流」が「子育ての社会化」意識・行動に与えている影響が有意であることが明らかになった。結論 「子育ての社会化」意識・行動に影響する要因として,母親や地域住民の「ソーシャル・キャピタルの認識」が関連していることが示され,その中でも「つながり・交流」が影響していることが明らかになった。
著者
櫟 直美 尾形 由起子 小野 順子 中村 美穂子 大場 美緒 吉田 麻美 猪狩 崇 平塚 淳子 田中 美樹 吉川 未桜 山下 清香
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-23, 2022-03-31

「目的」本研究の目的はA県の3年間にわたる訪問看護ステーション連携強化の取組について意義と課題の整理を行い、今後の訪問看護ステーション連携について検討することを目的とした。「方法」A県の同意の得られたすべての訪問看護ステーション419か所に所属する訪問看護師3,750名を対象として無記名自記式質問紙調査を実施し、統計学的解析を行った。「結果」936名から回答を得た(有効回答率:25.0%)。交流会に参加して他のステーションと連携がしやすくなったのは37.1%だった。今後の必要性について、交流会を必要とする肯定群は936人中641人(68.5%)で、同行訪問研修を必要とする肯定群は936人中562人(60.0%)だった。しかし同行訪問研修の実際の参加率は16.8%にとどまり、参加の困難さがあった。医療介護福祉の連携意識は、年代と職位に有意な差があった。また交流会および同行訪問研修の必要性と連携意識に有意な差があった。在宅医との連携では、最も必要であると感じているが、連携の取りやすさでは困難さを感じていた。「考察」本研究結果では訪問看護ステーション間での連携の深まりを明らかにすることはできなかった。しかし交流会や同行訪問研修の必要性を感じている割合が高かったことから継続する意義はあると考えた。その意義として具体的には、連携上の課題が共有でき、医療的ケアの知識や技術が学べることや運営方法を知る機会となることである。また在宅医療推進のために在宅医との調整の積み重ねの必要性があり、コミュニケーションスキルを磨き、連携力を獲得していくための場への積極的参加の啓発と参加しやすい仕組みづくりが必要である。
著者
山口 のり子 福岡 洋子 中村 美穂子 猪狩 崇 尾形 由起子
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
no.18, pp.21-26, 2021-03-31

在宅医療推進のための官民学協働を基盤とした多職種連携・協働で取り組んだ、『ケア・カフェ』の効果を明確にした。 研究協力者は、ケア・カフェの企画及び実践を行っている地域の保健・福祉・医療関係者の多職種(薬剤師、理学療法士、管理栄養士、主任介護支援専門員、看護師、保健師)とした。方法は、半構造化面接(FGI)を行い、質的に分析した。 結果は、官民学の多職種連携・協働による「ケア・カフェ」の効果として、[ケア・カフェによる多職種連携の士気の高まり][官民学の役割認識の高まり][多職種の主体性の高まり][住民に寄り添う各種専門職の専門性の向上][多職種が「死生観」を培う][地域への発信力向上の必要性の認知]の7つのカテゴリーが抽出された。 多職種連携を推進するためには、地域の中でカフェのようなリラックスした雰囲気で多くの職種との対話ができる場の確保や、多職種と行政・大学等が協働し活動基盤を築くこと、多職種で「死生観」について考える機会を持つこと、住民参加を進めること、多職種連携の現状を地域へ発信する力を高めることに効果があることが示唆された。
著者
眞崎 直子 橋本 修二 川戸 美由紀 尾島 俊之 竹島 正 松原 みゆき 三徳 和子 尾形 由起子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-169, 2018

<p><b>目的</b> 人口動態統計に基づく東日本大震災後の自殺死亡数を観察し,岩手県,宮城県と福島県(以下,3県と記す)の沿岸部の市町村と沿岸部以外の市町村での大震災後の自殺の超過死亡について,検討した。</p><p><b>方法</b> 基礎資料として,統計法第33条による人口動態統計の調査票情報から,2010年1月1日~2013年3月31日の死亡情報を利用した。死亡の定義としては,死亡年月日,死亡者の住所地市町村,性別,死亡時年齢,原死因コード(国際疾病分類第10回修正;ICD-10)とした。それ以外に,2009~2013年度の住民基本台帳人口と2010年の国勢調査人口を利用した。地域と期間別に自殺による死亡数を集計した。死亡者の住所地市町村を用い,3県の市町村およびそれ以外に区分し,沿岸部と沿岸部以外に分類した。期間としては,死亡年月日を用いて,東日本大震災の発生月(2011年3月)の1年前から2年後までの3年間とし,月に区分した。自殺は,ICD-10のX60~X84と定義した。自殺SMRは,地域と期間ごとに,3県以外の全国の同年同月の死亡率を標準死亡率として計算し,その有意性を近似的な検定方法で検定した。人口としては,2009~2012年度の住民基本台帳人口から線型内挿法で算定した。ただし,住民基本台帳人口では,公表資料の最終年齢階級が80歳以上のため,性別に80歳以上人口を2010年の国勢調査人口で80~84歳と85歳以上に比例按分した。</p><p><b>結果</b> 3県の沿岸部と沿岸部以外における東日本大震災前後の自殺SMRを算出した。震災後2年間(2011年3月~2013年2月)を通して,自殺SMRは沿岸部と沿岸部以外ともに増加傾向がなかった。3県において,震災前1年間に対する震災0~1年の自殺SMRの比は0.92,震災1~2年の自殺SMRの比は0.93であり,いずれも有意に低かった。3県の県別に沿岸部と沿岸部以外ごとにみると,震災前1年間に対する震災0~1年と1~2年の自殺SMRは0.73~1.07であり,福島県沿岸部の震災1~2年で0.73,宮城県の沿岸部で震災後1~2年で0.83および全体で0.90,3県全体の沿岸部以外について,震災1~2年で0.80,沿岸部以外で0.90,全体で震災0~1年,1~2年それぞれ0.92,0.93と有意に低く,一方,有意に高いものはなかった。</p><p><b>結論</b> 東日本大震災後の3県の自殺死亡について,震災から2年間には自殺死亡の増加がなかったと示唆された。今後は,中長期的に観察を継続していくことが大切であると考える。</p>
著者
清原 智佳子 梶原 由紀子 尾形 由起子 小野 順子 田中 美樹 石村 美由紀 江上 千代美
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47--53, 2018-03-31

目的:効果的な子育て技術を習得することを目的に発達障がいの子どもをもつ12名の親を対象にステッピングストーンズトリプルPの介入を行い親のストレスの変化、子育て技術の役立ち頻度、終了後の受講者満足度について調査を行った。方法:受講前後のDASS、25の子育て技術の質問紙、受講者満足度の質問紙の調査を行った。DASSはWilcoxon符号順位検定を行った。結果:対象者12名のDASSの受講前後の評価の結果はDASS総点において改善をみとめた(P<.05)。技術総点(6.47±.08)であり、すべての技術を使用していた。満足度は総点(5.82±1.0)であり、満足感があったと推測できる。考察:トリプルP受講前と比較し、トリプルP受講後は子育て技術の知識が増え、技術を使って子育てを行ったことで、親の抑うつ状態は軽減した。