著者
工藤 伸一 石田 淳一 吉本 恵子 水野 正一 大島 澄男 古田 裕繁 笠置 文善
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.12-18, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
16
被引用文献数
7

Radiation Effects Association has carried out radiation epidemiological study for nuclear industry workers during 1990-2010. We assembled a cohort of 204,103 workers. The average cumulative dose was 13.8 mSv (median 1.0 mSv, interquartile range (IQR) 0.0-10.7 mSv) and the average follow-up period was 14.2 year. The present report has not concluded that low-dose radiation increases cancer mortality based on the follow-up data through 2010. One reason is that analyses among 75,442 respondents― the average cumulative dose was 25.8 mSv (median 6.3 mSv, IQR 0.2-28.0 mSv) and the average follow-up period was 8.3 year―to the lifestyle surveys revealed the decrease of the ERR after adjusting for smoking habits or educational year, suggesting that confounder has a large effect on the association between radiation exposure and mortalities in the cohort. Another reason is that in analyses on all cohort members, no significant ERR was observed in all death, and leukemia excluding chronic lymphoid leukemia. Significant ERR was seen in all cancers excluding leukemia, but this significance of the ERR might be affected by confounder such as smoking, because the significance of the ERR in all cancers excluding leukemia originates in the significance of the ERR in lung cancer.
著者
山田 美智子 笠置 文善 三森 康世 宮地 隆史 大下 智彦 佐々木 英夫
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.267, 2008 (Released:2008-10-15)

背景と目的:胎児期に被爆した被爆者では小頭症や知的障害等の神経系への影響が認められる。今回、広島成人健康調査集団の被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者とその対照において、原爆被爆が認知機能や認知症の発症に影響したか否かについて調査した。 方法:対象者は1992年の調査開始時に年齢60歳以上で認知症を認めない2286人である。認知機能は認知機能スクリーニング検査(CASI)を用いて評価した。認知症の診断は認知機能スクリーニング検査と神経内科医による神経学的検査の2段階法を用い、人年法により線量階級別の粗発症率を求めた。原爆被曝の認知症発症への影響の評価には他のリスク要因を考慮してポワソン回帰分析を用いた。放射線治療による被曝情報は病院調査と問診調査から得られた。 結果:認知機能は加齢と共に低下し、低学歴で低かったが、被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者では認知機能に被爆の影響は認められなかった。約6年の追跡期間中に206人が新規に認知症を発症した。60歳以上の1000人年あたりの粗認知症発症率は15.3(男性12.0、女性16.6)であった。被爆線量別の1000人年あたりの発症率は被爆線量5mGy以下、5-499mGy,500mGy以上で各々16.3、17.0、15.2であった。いずれの被爆線量群でもアルツハイマー病が優位な認知症のタイプであった。ポワソン回帰分析の結果、全認知症ならびにタイプ別認知症において、他のリスク要因を調整後に被爆の影響は認められなかった。対象者の内、68人がこの調査以前に放射線治療を受けていたが、認知症を発症したのは2人にすぎなかった。 結論:原爆被爆者の縦断的調査において認知機能ならびに認知症発症と放射線被曝の関連は認められなかった。
著者
工藤 伸一 石田 淳一 吉本 恵子 古田 裕繁 笠置 文善
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.265-274, 2017 (Released:2018-02-24)
参考文献数
33
被引用文献数
1

Although many radiation epidemiological studies have been carried out, there is still uncertainty about the health effects of low dose and low dose-rate radiation in humans. One reason for this uncertainty is that the risk of radiation itself may be too small to detect. Another possible reason is that the main components of cohorts or statistical method vary in each study. Comparing the Excess Relative Risks (ERRs) with other studies is often one approach; however, few studies have denoted the validity of comparing ERRs. To verify the differences in study methods, we summarized them and the results of radiation epidemiological studies to date. Some of these studies targeted high background residents or patients who received CT scans. In the present work, we focused on cohort studies among nuclear industry workers because they assured more accurate dose measurements and had no possibility of reverse causation (i.e., patients who received CT scans had worse health conditions, which prompted the need for the scans). In addition, we limited the studies to those that summarize derived excess relative risks of mortality based on a linear model.
著者
杉山 裕美 三角 宗近 岸川 正大 井関 充及 米原 修治 林 徳真吉 早田 みどり 徳岡 昭治 清水 由紀子 坂田 律 グラント エリック J 馬淵 清彦 笠置 文善 陶山 昭彦 小笹 晃太郎
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.149-149, 2009

【目的】放射線影響研究所は、原爆被爆者コホート(寿命調査集団)において、病理学的検討に基づき、1987年までに罹患した皮膚癌の放射線リスクを検討し、基底細胞癌に放射線リスクがあることを報告している。本研究では観察期間を10年延長し、皮膚癌の組織型別罹患率の放射線リスクを再検討した。<br>【方法】寿命調査集団120,321人のうち、原爆投下時に広島市、長崎市とその周辺で被爆し、放射線線量推定方式DS02で被爆放射線量が推定されている80,158人を対象とした。皮膚癌は1958年から1996年までに登録された症例について病理学的な検討を行い、第一癌を解析の対象とした。ポワソン回帰により、皮膚癌における放射線の過剰相対リスク(ERR=Excess Relative Risk)を組織型別に推定した。<br>【結果】寿命調査集団において、336例の皮膚癌が観察された。組織型別には悪性黒色腫(n=10)、基底細胞癌(n=123)、扁平上皮癌(n=114)、ボウエン病(n=64)、パジェット病(n=10)、その他(n=15)であった。線量反応に線形モデルを仮定しERRを推定したところ、基底細胞癌について統計的に有意な線量反応が観察された。前回の解析(1987年までの追跡)ではERR/Gyは1.8(90%信頼区間=0.83-3.3)であったが、今回の解析ではERR/Gyは 2.1(95%信頼区間=0.37-1.2, P<0.01)であった。さらに基底細胞癌の線量反応について赤池情報量規準(AIC)に基づき検討したところ、0.6Gy(95%信頼区間=0.34-0.89)を閾値とし、傾きが2.7(95%信頼区間=1.1-5.1)とする閾値モデルがもっともよく当てはまった(ERR at 1 Gy = 1.1、95%信頼区間=0.43-2.05)。また基底細胞癌においては被爆時年齢が1歳若くなるほどリスクが有意に10%上昇した。<br>【結論】皮膚表皮の基底細胞は放射線に対する感受性が高く、特に若年被爆者において放射線リスクが高いことが確認された。また基底細胞癌における線量反応の閾値は、1Gyよりも低く、0.6Gy であることが示唆された。
著者
箱田 雅之 笠置 文善
出版者
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
雑誌
痛風と尿酸・核酸 (ISSN:24350095)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.33-39, 2020-07-25 (Released:2020-07-25)

国民生活基礎調査によれば,1986年以降の30年間において我が国の痛風患者数は約4倍,男性に限れば約5倍の増加を見ている.国民生活基礎調査は住民の自己回答に基づいていることから,他の指標として医師の診断に基づく診療報酬明細書(レセプト)データベースとの比較を行った.2013年と2016年の国民生活基礎調査で示された通院者率は,レセプトデータベース(2010年~2014年)による痛風有病率と同等の結果であった.したがって,国民生活基礎調査の結果は痛風患者の動向をほぼ正確に反映していると考えられた.痛風が急激に増加した要因であるが,痛風の有病率が国民生活基礎調査においてもレセプトデータベースによる解析結果においても60歳代から70歳代においてピークを示したことから,近年の高齢者数の増加がその背景にあると考えられた.さらに,高齢者の中においても,男性では痛風有病率は経年的に上昇傾向であり,痛風患者数の増加に寄与したと考えられた.今後も高齢者数は増加し続け,2042年にピークを迎えると推定されていることから,痛風患者数の更なる増加が予想された.