著者
三好 勉信 守田 治
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.529-544, 1993-08-25

水の物理過程が、地球の大気大循環にどの様な影響を与えているかを調べるために、水の物理過程を全て排除した大気大循環モデルを作成した。水の物理過程を排除したモデルで得られた大循環は、水の物理過程を全て含んだモデルで得られる大循環とは大きく異なった。例えば、地表のアルベドをすべての地点で0.1とした場合、水の物理過程を含んだ場合の地表付近の平均温度は289Kであるのに対して、水の物理過程を排除した場合は279Kである。地表付近での極と赤道の温度差は、水の物理過程を含んだ場合は約40Kであるのに対して、水の物理過程を排除した場合は約100Kである。気温の鉛直分布、南北分布についても、2つの実験で大きく異なった。帯状流は、水の物理過程を含んだ場合は緯度30-50゜で最大となるのに対して、水の物理過程を排除した場合は60-70゜で最大となる。直接子午面循環(ハドレー循環)の南北幅は、2つの実験でほほ同じになったが、循環の強さは、水の物理過程を排除した方がはるかに弱くなった。さらに、波の活動度、間接子午面循環(フェレル循環)の南北幅、強さも、2つの実験で大きく異なった。地表面及び大気の熱収支について詳しく調べ、それらを基に水の物理過程を含んだ場合と排除した場合の熱収支の違いについて議論を行った。また、水の放射過程が熱収支に及ほす影響、および水の蒸発、凝結、カ学による水蒸気輸送が熱収支に及ほす影響について議論を行った。
著者
藤原 均 三好 勉信 陣 英克
出版者
成蹊大学理工学部
雑誌
成蹊大学理工学研究報告 (ISSN:18802265)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.89-94, 2011-12

In order to under stand complete pictures of the energy, momentum, and molecular transfer in the atmospheric regions, dynamical features of the whole atmosphere, and near space environment, we have developed a new general circulation model(GCM) which covers all the atmospheric regions. Numerical simulations with this GCM have shown new aspects of the upper atmosphere: e.g., wavy structures and day-to-day variations of the thermosphere, generation and propagation of disturbances in the polar thermosphere due to the auroral activity. We report on some simulation results, possibility of space weather prediction, and some ongoing projects for studying the Earth' and space environments.
著者
麻生 武彦 岡野 章一 藤井 良一 前田 佐和子 野澤 悟徳 三好 勉信 佐藤 夏雄 江尻 全機 佐藤 薫 小川 忠彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

最終年度におけるそれぞれのサブテーマの実績概要は以下のとおりである1.EISCATレーダーによる極域電磁圏熱圏大気ダイナミックスに関しては2003年11月11日から19日における8日間のキャンペーンデータ等をもとに、流星レーダー等との比較、イオン温度からの中性温度の導出における定量的な誤差評価、中性温度における大気潮汐成分の解析検討、F層イオン温度の緯度分布と電離層等価電流の分布の比較による両者の密接な関連の解明等を行った さらに下部熱圏における大気ダイナミクスの理解のため、EISCATキャンペーン観測データ解析から準2日波、大気潮汐波、平均風の高度変動および緯度変動、イオンドラッグ加速度、コリオリ加速度、および全加速度の導出とそれらの比較を通してのイオンドラッグの重要性の吟味等を行った。またオーロラ粒子エネルギー導出のための4波長フォトメータ観測をトロムソにて実施し、電子密度高度分布をEISCAT観測データと比較した2.流星レーダーによる極域中間圏・下部熱圏大気ダイナミックス観測ではスバルバールでの4年余の連続観測により、極域大気潮汐波クライマトロジーの解明を行うとともに、トロムソ流星レーダー、EISCATレーダー、MFレーダーとの観測値の直接比較、NSMRレーダーとの比較による大気潮汐波モードの解明、高エコー率を利用しての大気重力波の水辺伝播方向解析と平均流とのかかわり、運動量輸送等について検討した3.HFレーダーによる極域電磁気圏・熱圏ダイナミックスの観測については、EISCATヒーティング装置を用いたSuperDARN CUTLASSレーダーとの共同実験により周期の異なる地磁気脈動の励起伝播について興味ある結果を得た4.オーロラ夜光スペクロトグラフによる極冠域オーロラ・夜光の観測では、酸素原子発光および酸素イオン輝線発光と、ESRによる電離層の電子温度・密度、イオン温度、イオン速度の同時観測データから、低エネルギー電子降下時に磁力線に沿った速度数100m/sのイオン上昇流が発生することを定量的に明らかにした。5.ALISによるオーロラ・大気光トモグラフィ観測では、ヒーティングとの同時観測、しし座流星群の光学観測などが試みられたほか、先端的逆問題手法のトモグラフィー解析への応用研究を始めた6.数値モデリングと総合解析においては中間圏・熱圏下部における半日潮汐波の日々変動について、大気大循環モデルによる数値シミュレーションにより調べた。特に、下層大気変動が、中間圏・熱圏下部の半日潮汐波に及ぼす影響および太陽放射量の日々変動(F10.7の日々変動)が熱圏の大気潮汐波に及ぼす影響を調べた。また流星レーダーで見出された12時間周期付近のスペクトル等についてもモデルによる検討を行った
著者
藤原 均 野澤 悟徳 前田 佐和子 三好 勉信 品川 裕之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地表から大気上端(~700km高度)にいたる領域の気温、風速、組成変動を計算可能な数値モデルが研究代表者らのグループによって世界で初めて開発された。この数値モデルシミュレーションとレーダー観測データから、下層大気に起源を持つ高度300 km付近の超高層大気変動のいくつかを明らかにした。特に、極冠域では従来認識されていた以上の激しい大気変動を観測、シミュレーションの双方から明らかにすると伴に、低緯度領域では、これまではシミュレーションでは再現不可能であった真夜中の温度極大の再現に成功した。