著者
小林 洋一 菊嶋 修示 宮田 彰 三好 史人
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.20-36, 2010 (Released:2010-07-14)
参考文献数
10

ATP(アデノシン三リン酸)は多くの不整脈の診断と治療に用いられる.そのなかで,上室不整脈に対するATPの使い方としては,上室頻拍の停止,上室頻拍の鑑別診断,wide QRS頻拍の鑑別診断,上室頻拍に対するカテーテルアブレーションの評価,WPW症候群に対するカテーテルアブレーション後の副伝導路再発の予知,心房細動に対するカテーテルアブレーションの評価,などがあげられる.まず,ATPのヒトにおける上室の刺激伝導系への作用を概説し,次にATPの基本的な使い方を,さらには,臨床的な診断治療における有用性につき述べ,その他今まであまり使われていない使用方法にも触れる.Ca拮抗薬はすでに20年以上前から不整脈治療に用いられてきたが,本章では静注薬に的を絞り,ATP,ベラパミル,ジルチアゼムの使い分けについて解説する.
著者
三好 史隆 倉本 到 渋谷 雄 辻野 嘉宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.831-839, 2006-10-01
被引用文献数
5 5

ユーザがPCを用いて作業を行っているときに,優先的に行われている作業のことをメインタスクと呼ぶ.そして,そのメインタスクに割り込んで表示される情報のことを周辺情報と呼び,その提示方法のことを周辺表示法と呼ぶ.周辺情報により,ユーザは効率的に作業を進めることが可能になるが,周辺表示法が適切でなければ,ユーザは周辺情報を見逃したり,逆にメインタスクを邪魔され,効率良く作業を行うことができない.つまり,"メインタスクを邪魔しない"ということと"情報提示を気づかせやすい"ということが周辺表示法に求められている.しかし,この二つはトレードオフの関係にあり,両方を同時に満たすことは困難である.そこで,ユーザが周辺情報を受け取りながら作業を効率的に進めるためには,周辺表示法がユーザの作業に与える影響を知ることが重要となる.本研究では,"メインタスクへの妨害の度合"の指標として「タスク集中度」を提案し,これに加えて,"気づかせやすさ"の指標である認知時間を用いて周辺表示法を評価する.
著者
礪波 朋子 三好 史 麻生 武
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.158-167, 2002-08

本研究の目的は,幼児同士の共同意思決定場面で子ども達が実際に行った相互作用を詳細に分析し,そこで生じる対話の構造を検討することであった。幼稚園年中児28名(平均年齢5歳3カ月),年長児58名(平均年齢6歳0カ月)が同性2人組でロケット模型の中に入り,退出するという共同意思決定をするか,15分経過し実験者が迎えに来る時まで乗り続けた。ロケットから降りるか乗り続けるかを巡る子ども達の発話及び行動を分析した。その結果,両者の意見が一致しても必ずしも最終的な共同意思になるとは限らないことが明らかになった。実際の退出を巡るやりとりの中で,約60%の子ども達が1回以上意見変容していた。どちらも3回以上意見変容するペアも全体で16%存在した。また,自己の直前の意見を変えたり他者を裏切るような変容が全意見変容の24%を占めていた。以上の結果より,幼児の意思は変わり易く,他者とのやりとりの「場」の中で揺らぎながら生成されていくことが明らかになった。本研究では,幼児期の顕著な意思の揺らぎを,精神内機能がまだ十分に発達していないときに意思決定を精神間交渉に委ねていることを示すものとして捉えた。最後に,この時期に自己と他者の異なる意見を折裏したダブルボイス発話が少し見られたことは内的対話が可能になり精神内機能が発達してきた萌芽と考えられることを指摘した。