著者
中田 忍 三崎 旭 佐々木 郁美 角田 万里子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.139, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】 “果物の王様”と言われ、日本の果物消費量で常にトップのバナナは、未熟な段階で収穫、熟成後に店頭に並べられる。そこで、バナナが完熟する過程に起こる成分変化を検討した。また、これまでバナナ果実のパルプ中にα-マンナンやグリコーゲンに結合するレクチンが存在し、末端のα-Man/Glcだけでなく、多糖類の特定の内部糖鎖も認識することを明らかにしてきた。このことから、消化酵素の作用に影響を及ぼす可能性も考えられ、バナナレクチンの糖鎖結合性についても検討を行なった。 【方法】収穫後のバランゴンバナナを25℃で熟成させ、経時的に水抽出した甘味成分を陰イオンカラムクトマトグラフィーで分析した。また、市販の新鮮なバナナより調製したタンパク質画分をα-1,3またはβ-1,6/1,3グルカンを結合したアフィニティーカラムおよびゲル濾過を行い、レクチンを精製した。 【結果】糖濃度は収穫直後に5%以下で、1週間後から徐々に増加し、20日後には22%となった。糖質の主成分はGlc、FruおよびSucであり、熟成が進むほどFruの比率が増加した。また、バナナ果実レクチンはSDS-PAGEで均一(14kDa)で、ゲル濾過の結果から二量体と考えられた。各種糖鎖との定量沈降反応の結果、α-グルカンのうちα-1,3結合を含むelsinanやnigeranには結合するが、pullulan(α-1,6)には反応しなかった。β-グルカンではpustulan(β-1,6)には結合し、curdlan(β-1,3)とは結合しなかったがschizophyllan(β-1,3、O-6分岐)にはある程度結合した。これらの結果からバナナ果実レクチンは非還元末端の関与しない特定の内部結合を認識しうるユニークな特異性を有することが明らかとなった。
著者
田原 モト子 岸田 恵津 三崎 旭
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.111-118, 2000-06-10
参考文献数
28
被引用文献数
1

北アメリカ原産のイネ科マコモ属の単子葉植物, ワイルドライス (<i>Zizania palustris</i>) は, その独特の風味が好まれている。我々はその特異なテクスチャーに関連する成分としてデンプンおよび細胞壁多糖に着目し, ワイルドライス製品の多糖成分の分画を行い, 特にデンプンの性状を調べた。<br>1) ワイルドライス粉末からアルカリ浸漬法によりデンプンを分離し, この上清からエタノール沈澱により水溶性多糖を分離した。ふるい上の残渣を脱脂・除タンパク後再度デンプンを分別し, 不溶性残渣から細胞壁標品を得た。<br>2) ワイルドライスからのデンプンの収量は30.5%であり, ウルチ米の半分以下であった。ワイルドライスの細胞壁標品の収量 (3.54%) は, ウルチ米 (0.12%), モチ米 (0.3%) と比較すると, 細胞壁の含量が著しく高いことを示唆している。<br>3) デンプン画分の走査電子顕微鏡写真から, ワイルドライスのデンプン粒の形はウルチ米と類似の多面体で, サイズはやや小さく, 1.5-6μm程度の粒径であった。細胞壁標品の走査電子顕微鏡像から, ワイルドライスの細胞壁はウルチ米に比し相当厚く強固な様子が観察された。<br>4) デンプンをイソアミラーゼおよびプルラナーゼで完全に分枝切断し, ゲルろ過により鎖長分布を調べた結果, ワイルドライスのFr. I (アミロース) の比率は23.8%で, ウルチ米よりかなり高かつた。一方, Fr. III (アミロペクチンの短鎖長, DP 10-30) とFr. II (長鎖長, DP 30-60) の比は3.5で, ウルチ米 (2.6) よりも大きかった。<br>5) 上記の枝切りデンプンの精密鎖長分布を, 陰イオン交換高速液体クロマトグラフィーにより解析した結果, 短鎖部分の鎖長分布はワイルドライスでは11糖が最多で, またウルチ米, モチ米と比べて10-14糖部分の含量 (モル%) が高く, アミロペクチンの微細構造も米とは異なることが示唆された。