- 著者
-
上村 裕和
- 出版者
- 日本頭頸部癌学会
- 雑誌
- 頭頸部癌 (ISSN:13495747)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.346-352, 2015-10-25 (Released:2015-11-26)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
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化学放射線療法による根治治療が広く行われるようになった現在でも,頸部郭清術は頭頸部癌治療において重要な役割を担っている。精度と安全性の高い頸部郭清術を行える技術を身につけておく必要があるが,その基礎として解剖学的知識は欠かせない。頸部郭清術は筋膜に囲まれる間隙に存在するリンパ節を脂肪組織等と共に摘出する手術である。筋膜は時として明確に捉え難いことがあるが,頭頸部の骨格や筋肉を理解・把握しておくことで迷走することを回避できる。これらに精通して各手術器械の適切な使用に習熟しておくことによって,安定した手術が提供できるだけでなく,腫瘍切除における困難な状況を克服することが可能になると期待される。そのような観点からは解剖学的構造に沿った合理的で鋭的な手術を行うトレーニングを積み重ねておくことは無駄にはならないであろう。