著者
平川 仁尚
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.679-682, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
1
被引用文献数
1

最近増加傾向にある医療的背景を持たないケアマネジャーは訪問看護師など医療者とのコミュニケーションを苦手としているといわれる。そこで, 訪問看護師とケアマネジャーのコミュニケーションを円滑にするための教材作成の基礎資料とするため,「ケアマネジャーを悩ませる訪問看護師の行動傾向」をテーマに参加者に約1時間グループ討論してもらった。参加者は8人で, その内訳は職種別に医師1人, 看護師1人, 医療系 (看護系) ケアマネジャー2人, 非医療系ケアマネジャー3人, 福祉職1人であった。出された意見をKJ法の技法の一部分を用いてグループ化した結果,「病院と同等の医療管理レベルをチームに要求する」,「必要最低限の業務しかしたくない」,「在宅経験が少なく, 知識が医療的なものに偏っている」,「権威勾配を背景にチームを上から管理しようとする」,「クライアントや家族の前で感情をコントロールできない」,「専門用語を使いすぎる」,「特別指示書に変えたがる」の7グループが抽出された。こうした訪問看護師に対するケアマネジャーの本音は, 病院から地域・在宅に医療の重心がシフトしていく中で, 病院外における看護師の在り方を考える上で重要な情報である。一方, ケアマネジャーにとっても訪問看護師の行動傾向を知ることでマネジメントのノウハウを蓄積しやすくなるものと期待される。
著者
平原 佐斗司 山口 泰弘 山中 崇 平川 仁尚 三浦 久幸
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.60-67, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
17

目的:末期認知症高齢者の肺炎に対する抗菌薬の予後と苦痛の改善効果を検討する.方法:国内外のデータベースから検索式を用い,末期認知症の肺炎の抗菌薬治療の予後と苦痛の改善効果についての2つ の CQs を含む5つの CQs に該当する 604 論文を抽出,最終的に採用した 17 論文のうちこれらの CQ に該当する6論文を解析した.結果:末期認知症高齢者の肺炎の抗菌薬治療は予後を改善する可能性があり,とりわけ短期の予後の改善が期待できる.抗菌薬治療の予後改善効果は認知症や嚥下障害の重症度や過去の肺炎回数と関連していた.また,抗菌薬治療が肺炎による死亡前の苦痛を軽減する可能性が示唆された.
著者
比嘉 輝之 我那覇 章 近藤 俊輔 親川 仁貴 安慶名 信也 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.909-916, 2021

<p>Cochlear implant surgery has been introduced successfully and is now one of the commonly performed surgeries. However, the surgical strategy of cochlear implantation in patients with chronic middle ear diseases, such as chronic otitis media and cholesteatoma, has not yet been fully established. In the present report, we describe the surgical technique adopted and prognosis of two patients with severe adhesive otitis media who underwent cochlear implant surgeries. Both underwent one-stage cochlear implantation combined with external auditory canal closure (blind-sac closure). Mastoidectomy with removal of the whole canal wall was performed to remove the otitis lesion thoroughly, and external auditory canal wall closure was performed to prevent recurrence of the lesion. A pneumatized tympanic cavity was observed and canal wall closure was maintained in both cases. Both patients acquired fair hearing ability with the cochlear implants. No severe complications have occurred until now, four years since the cochlear implantation. Although external ear canal closure destroys the natural structure of the external ear, one-stage cochlear implant surgery combined with canal closure is useful for elderly patients with systemic complications who desire shortening of hearing-deprived period.</p>
著者
上里 迅 真栄田 裕行 金城 秀俊 安慶名 信也 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2020

肺癌患者において開胸下の右上葉切除術と,頸部アプローチによる巨大な腺腫様甲状腺腫(AG)摘出術の同時施行例を経験したので報告する。患者は頸部圧迫感を主訴とする70歳の男性。精査の結果,右肺上葉S2区の肺癌と同時に上縦隔におよぶ右甲状腺腫瘤が発見された。甲状腺腫瘤は気道を圧排し,頸部圧迫感の主因であると考えられたため,肺癌と同時に甲状腺腫瘤摘出が計画された。AGは頸部操作のみで摘出可能であった。術後の経過は極めて順調であったが,縦隔炎や膿胸,胸骨骨髄炎など合併症の発症リスクを抑えるため,気管切開を併施せず,気管内挿管による気道管理を選択したことが理由として考えられた。
著者
金城 秀俊 安慶名 信也 金城 賢弥 喜瀬 乗基 上里 迅 喜友名 朝則 平川 仁 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.331-337, 2020

<p>耳鼻咽喉・頭頸部外科医にとって前頸部腫瘤の症例にはよく遭遇するが,同腫瘤が上縦隔を超えて開胸に至る例は稀である。われわれは頸部から縦隔に連なる巨大成熟奇形腫の1例を経験したため報告する。症例は15歳,男性。当院受診2カ月前に左頸部痛を自覚した。受診1カ月前の学校検診で前頸部腫脹を指摘され前医を受診し,CT検査で頸部から縦隔に連なる腫瘤を認めたため当院紹介となった。腫瘤は可動性不良であり,気管は右に偏位していた。喉頭内視鏡検査では上気道狭窄や声帯麻痺は認めなかった。CT,MRI検査で腫瘤内部に脂肪組織を疑う部分や石灰化を認める嚢胞性病変を認めた。血液検査所見ではSCC抗原が6.8 ng/mlと上昇していた。上記所見より成熟奇形腫と判断したが精査中にも増大傾向にあり,窒息や悪性転化の可能性も否定はできず準緊急的に手術をした。頸部襟状切開とtransmanubrial approachにて腫瘤を摘出した。手術中はECMOをスタンバイしていたがECMOを使用せずに手術は終了した。術後病理は成熟奇形腫で悪性所見は認めなかった。術後一過性に左反回神経麻痺を認めたが,4カ月後には改善した。</p>
著者
平川 仁 鈴木 基之 西野 宏 佐藤 雄一郎 石木 寛人 篠崎 剛 海老原 充 新橋 渉 上條 朋之 岡本 牧人 別府 武 大堀 純一郎 松浦 一登
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.75-81, 2018

頭頸部癌終末期患者における症状について多施設調査を行った。根治不能頭頸部癌と診断され,癌の進行による状態悪化のために入院となった患者を対象とした。11施設から100人の患者が登録され,そのうち転院した患者などを除く72人が死亡まで観察可能であった。最終観察時における出血や滲出液を伴う自壊腫瘍を持つ症例は36.1%であった。またそれに伴う制御不能な出血を認めた症例は5例であった。1例は頸動脈破裂による急速な転機をたどった。残りの4例は出血および血圧低下による止血を繰り返し最終的に心肺停止となった。栄養経路に関して61.1%で経腸栄養摂取が可能であった。頭頸部浮腫は36.1%に認めた。喉頭発声による意思の伝達は50%で不可能であった。頭頸部癌の終末期症状は決して軽いものではない。しかしその症状・頻度,病態の理解が進み,適切な指針を今後作成できれば,患者は終末期の時間を自宅近くの医療施設もしくは自宅で過ごすことができるようになると期待される。
著者
平川 仁尚
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.675-678, 2014

本研究の目的は, 認知症デイサービスの独自性を明らかにすることである。愛知県岡崎市にある認知症デイサービスセンターにおいて,「認知症デイサービスについて思うこと」をテーマに関係者6名で, フォーカスグループディスカッションを行なった。そして, その内容をKJ法によりまとめた。その結果, 認知症のデイサービスの専門性と独自性は, 重度な認知症高齢者のケアの成功体験を通じた本人・家族・スタッフのクオリティーオブライフの高さにより支えられていることが分かった。
著者
真栄田 裕行 安慶名 信也 金城 秀俊 上里 迅 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.396-402, 2017

<p>甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患として知られており,治療の有無にかかわらず確定診断後1年以上の生存を見ることはまれである。近年新たな治療法としてレンバチニブやソラフィニブ等の分子標的薬が登場したが,現状では手術が根治治癒の期待できる第一選択であることに変わりはない。2012年甲状腺未分化癌コンソーシアムにおいて,未分化癌に関する予後規定因子およびそれに基づいた個別化治療指針が提唱された。今回当科で経験した未分化癌症例の治療と,コンソーシアムにおける治療指針がどの程度合致するか検証した。その結果,個別化治療指針の内容はかなりの程度で許容できるものであり,未分化癌治療方針決定の一助となり得ると思われた。ただし現状の予後不良因子該当数のみですべての治療方針を決定するのは困難であり,実際には患者ごとの検討が必要であることは言うまでもない。</p>
著者
安井 浩樹 網岡 克雄 青松 棟吉 阿部 恵子 平川 仁尚 倉田 洋子 野田 雄二 植村 和正
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.289-293, 2011-10-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1)地域の医療・介護現場における医師,薬剤師,看護師,介護士などの多職種連携推進を考えるワークショップを行った.2)「地域における多職種連携に必要なものとは?」,「地域における多職種連携を妨げている要因とは?」,「地域における多職種連携を妨げている要因への対策」についてディスカッションを行った.3)重要な課題として,コミュニケーション,情報共有,リーダーシップ,その他が抽出され,その他には,医療・介護の制度面の改善の他,多職種連携の意義の明確と共有が挙げられた.