著者
山川 香織 大平 英樹
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-52, 2018 (Released:2020-03-13)
参考文献数
81

過度のストレスに曝されるような危機的な状況において,われわれは不合理な選択をしてしまうことがある。危機的状況によって生じた自律神経系,内分泌系,免疫系などの生物学的反応は,情報の更新や感情処理などに関連する脳領域を修飾しヒトの意思決定を変容させる。これまでの研究により,異なる時間的特性をもつそれぞれの生物学的反応が,認知・行動に特異的な影響を与える可能性が示されている。本論では,急性ストレス暴露が意思決定に与える影響およびその背景にある認知機能に関する実証的知見を概観する。そして基盤となる神経・生物学的メカニズムについて時間的要因の観点から考察し,その適応的役割について論ずる。
著者
上田 路子 山川 香織 松林 哲也
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

計画していた4つの研究計画のうち、17年度は主に「自殺報道が自殺者数に与える影響の解明」及び「経済実験」の準備の二つを行った。<自殺報道が自殺者に与える影響の解明> 著名人の自殺やいじめ自殺に関するメディア報道をきっかけに自殺が社会全体に広がっていく「ウェルテル効果」は各国でその存在が確認されている。しかし、なぜ自殺に関する報道が自殺者数を増やすのかという因果メカニズムはこれまで明らかになっていない。そこで、自殺報道に接したときに一般の人々や自殺リスクの高い人々がどのような反応を示すかを調べることを目的として、2010年から2014年に自殺によって亡くなった著名人の死後ツイッターに投稿されたポストを分析し、その量と内容を検討した。また、量や内容と自殺者数の関係も分析した。分析の結果、自殺報道後にツイッターで反応が大きかった著名人の自殺の場合には、一般の自殺者数が増えることが明らかになった。一方、新聞やテレビなどでは報道数が多かったとしても、ツイッター上で反応が少なかった場合、自殺者の増加を伴わないことも確認した。先行研究は主に新聞報道の量や内容と報道後の自殺者数の関連を調べてきたが、本研究の結果は新聞やテレビなどのメディアにおける報道を分析対象とするだけでは、一般の人の反応を探るには不十分なことを示唆している。なお、この結果は英文学術誌(Social Science and Medicine)に研究論文として発表した。現在はツイッターに投稿された内容の感情分析を行っているところであり、結果は18年度中に論文として発表する予定である。<経済実験> 実験の実施に支障が出るため、詳細は明らかにすることができないが、実験の準備を進めた。18年度中には実験を行う予定にしている。