- 著者
-
山川 香織
大平 英樹
- 出版者
- 日本生理心理学会
- 雑誌
- 生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.1, pp.40-52, 2018 (Released:2020-03-13)
- 参考文献数
- 81
- 被引用文献数
-
1
過度のストレスに曝されるような危機的な状況において,われわれは不合理な選択をしてしまうことがある。危機的状況によって生じた自律神経系,内分泌系,免疫系などの生物学的反応は,情報の更新や感情処理などに関連する脳領域を修飾しヒトの意思決定を変容させる。これまでの研究により,異なる時間的特性をもつそれぞれの生物学的反応が,認知・行動に特異的な影響を与える可能性が示されている。本論では,急性ストレス暴露が意思決定に与える影響およびその背景にある認知機能に関する実証的知見を概観する。そして基盤となる神経・生物学的メカニズムについて時間的要因の観点から考察し,その適応的役割について論ずる。