著者
山下 信行 宮城 友豪 下田 慎治 堀 史子 谷本 博徳 一木 康則 山元 英崇 野村 秀幸
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.487-495, 2016-09-20 (Released:2016-09-30)
参考文献数
33

症例は60歳代男性.200X年に限局皮膚硬化型全身性強皮症(SSc)と診断された.無投薬で経過観察を受けていたが,初診から6年後に肝障害が増悪し入院となった.血液検査では肝胆道系酵素の上昇と抗ミトコンドリア抗体陽性を認めた.抗核抗体・抗セントロメア抗体はSSc診断時から陽性であった.また免疫グロブリン値(IgG,IgM)はいずれも基準内であり,画像検査では横隔膜下の肝臓に脱落壊死を認めた.肝生検の結果もあわせて自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎のオーバーラップ症候群と診断し,副腎皮質ホルモンとウルソデオキシコール酸を投与した.肝胆道系酵素は速やかに改善し,IgG,IgM値も治療前の半値以下に低下した.肝臓の脱落壊死部分は萎縮し,肝の変形が残った.SScにオーバーラップ症候群が合併した症例は,これまでに数例の報告しかなく,貴重な症例と考える.
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胆管細胞は自然免疫リガンドと疎水性胆汁酸の暴露により細胞内酸化ストレスが亢進するとともにAE2発現が低下し、IL-6やケモカインの産生が亢進した。胆管細胞でのAE2発現をsiRNAで落としても同様であった。またAE2発現が低下した胆管細胞周囲には自己免疫細胞が有意に遊走することも明らかになった。IFN-gの存在で更にAE2発現が減弱した。またこのようなPBC模倣環境では胆管細胞の老化を認め、一連の現象は細胞老化関連分泌現象であることが示唆された。病理的に検討した結果、PBC胆管では酸化ストレスが亢進しAE2発限低下を認めた。またPBC胆管の中でも胆管炎活動性が高いほどAE2発現は低下していた
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

原発生胆汁性肝硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎を病理学的特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。今回胆管上皮細胞破壊におけるToll様受容体(TLR)リガンドとNK細胞の役割を明らかにした。TLR3リガンド刺激で単球から産生されるIFN-aの存在下で、TLR4リガンドで刺激されたNK細胞が、自己の胆管上皮細胞を破壊する事が明らかになった。実際に肝臓由来の単球からのIFN-a産生はPBCにおいてその他の疾患対照群と比較して亢進していた。また免疫染色の結果から破壊された胆管周囲にCD56陽性のNK細胞がPBCでより多く散在している事が明らかとなった。次にマウスモデルを用いて、病初期の免疫誘導にNK細胞のような自然免疫攻撃細胞の果たす役割を明らかにした。NK細胞を除去すると抗ミトコンドリア抗体の産生や自己抗原反応性T細胞からのサイトカイン産生が抑制された。しかし門脈域の炎症は対照群と比較して大きな差は認め得なかった。これらの結果は、PBCの病因病態は多段階あり、NK細胞は免疫寛容の破綻に関与している事が示唆された。