著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 豊田 隆謙
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.423-426, 1999-04-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

慢性B型肝炎患者を配偶者にもつ女性が,初診時すでに妊娠していたためにワクチンを施行せず妊娠を継続したところ,妊娠中にHBVに感染した.本例はHBV感染前からウイルス学的に経過を観察され,急性B型肝炎の発症前後の臨床データの経過が明らかになった.さらに,妊婦に対するワクチン使用の問題や周産期の急性肝炎の取り扱いの問題をかかえており,Gianotti-Crosti症候群を合併した点など示唆に富む症例であった.
著者
田中 篤 高橋 宏樹 根津 佐江子 上野 義之 菊池 健太郎 渋谷 明隆 大平 弘正 銭谷 幹男 Lorenzo Montali Pietro Invernizzi 滝川 一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.51-59, 2009 (Released:2009-03-02)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

疲労は原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者の主要症状の一つとされており,近年欧米では臨床上の重要な問題としてPBC患者の疲労に関する報告が相次いでいるが,日本人PBC患者における疲労症状の実態は不明である.われわれは疲労症状の評価尺度として頻用されるFisk Fatigue Severity Score(FFSS)の日本語版をback translation法によって作成し,日本人PBC患者166名を対象としてその妥当性を統計学的に検証した.クロンバックのα係数は0.900を超えており,評価尺度の内的整合性は良好であった.SF-36との間にも高い相関が存在し,ことに疲労と関係の深い「活力」「日常役割機能(身体)」との間に最も強い相関がみられた.主因子法による探索的因子分析ではphysical, cognitive, socio-relational, socio-emotionalと推定される4因子が抽出され,これらによって結果全体の66%が説明可能であった.以上より今回作成した日本語版FFSSの妥当性が検証された.今後これを用いて日本人PBC患者の疲労症状について詳細に検討する予定である.
著者
阿部 靖彦 佐々木 悠 上野 義之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.225-242, 2019 (Released:2019-03-20)
参考文献数
104
被引用文献数
1

好酸球性食道炎は主に食物抗原に対するIgE非依存型(遅延型)アレルギー反応によって好酸球浸潤を主体とする炎症が食道上皮を中心に発生,慢性的に持続し,食道運動障害や食道狭窄をきたす疾患である.元々は小児領域の疾患と考えられていたが,近年,とくに欧米において成人のつかえ感,food impactionの主な原因として注目されている.好酸球浸潤は食道に限局し,好酸球性胃腸炎とは独立した疾患単位として取扱われる.診断は自覚症状と組織学的に有意な好酸球浸潤を証明することが基本となり,内視鏡検査で縦走溝,白色滲出物,輪状溝などの特徴的な所見を認識しつつ,生検を行うことが必要となる.治療においては,原因食物の特定と除去食の有用性が確認されているが,その実施には極めて高度な医学的管理を要するため適応は限定され,薬物治療が主体となる.第一選択はPPI投与,無効な場合はステロイド食道局所(嚥下)治療が推奨されている.本邦では欧米と比較し症状や所見が強い典型例は少ないが,近年のアレルギー疾患の増加とともに今後増加してくる可能性がある.厚生労働省の指定難病としても告示されており,その病態や診断,治療について理解しておく必要がある.
著者
想田 光 岩井 岳夫 金井 貴幸 宮坂 友侑也 佐藤 啓 根本 建二 上野 義之 嘉山 孝正
出版者
日本加速器学会
雑誌
加速器 (ISSN:13493833)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.144-150, 2020-10-31 (Released:2021-10-05)
参考文献数
12

Yamagata University has carried out a heavy ion treatment facility project since 2004. Building and treatment machine has been constructed since 2017. The carbon ion medical accelerator consists of a permanent-magnet type electron cyclotron resonance (ECR) ion source, a series of linear accelerator of radiofrequency quadrupole (RFQ) and interdigital H-mode drift tube linac (IH-DTL) with an energy of 4 MeV/u, and an alternative gradient synchrotron of 430 MeV/u. There are two irradiation rooms, one has a fixed horizontal port and the other has a rotating gantry port with superconducting magnets. Since the irradiation rooms are placed above the accelerator room, the footprint of the building is only 45×45 m, which is significantly smaller than preceding facilities. The synchrotron has a variable-energy flattop operation pattern with 600 energies. This operation enables a three-dimensional spot scanning irradiation without range shifters. A superconducting rotating gantry is equipped with a pair of improved scanning magnets in the downstream of the final bending magnets and is downsized to 2/3 of the first model built in NIRS. The construction of the building was completed in May 2019. The treatment irradiation will start in February 2021 after machine optimization and clinical beam data measurement.
著者
阿部 靖彦 野村 栄樹 佐藤 剛司 上野 義之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.3378-3393, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
26

好酸球性食道炎は食道上皮への多数の好酸球浸潤を特徴とする慢性炎症によって食道運動障害や器質的狭窄を来たす疾患である.病因として食事中の抗原や空気中に浮遊している花粉などの抗原に対する過剰な免疫反応が想定されているが不明な点が多い.本症は近年欧米で増加しており,食物のつかえ感やfood impaction(食物の食道嵌頓)の一因として非常に注目されている.本症の診断の基本は症状と病理組織所見であるが,2次的な食道好酸球浸潤の除外,とくにGERDとの区別のため,PPIに対する反応性の評価が必要とされている.本症は特徴的な内視鏡像を呈する場合があり,これらを認識しておくことが診断において重要となる.本稿では,現在,国内外で用いられている診断基準を示しながら,診断のポイントについて,とくに内視鏡像,病理組織像の点から解説する.
著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 下瀬川 徹 豊田 隆謙
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.346-349, 1999-06-25
被引用文献数
8 6

献血時 (32歳時) にHBVキャリアではないと確認されている症例 (33歳) がHBVの急性感染後にキャリア化した. この症例のウイルスをシークエンスし分子系統樹解析したところgenotype Aであった. 最近, 成人感染後にキャリア化した本邦の1例の検討でgenotypeがAであったと報告された. さらに当科外来で唯一の夫婦ともHBVキャリアの症例では, 夫婦ともにgenotype Aが検出された. 当科外来患者 (宮城県が中心, n=222) のgenotypeの検討ではgenotype Aは3.6%しか存在しなかった. 以上より, genotype Aが急性感染すると成人でもキャリア化することがあると考えられた. 欧米では成人感染後のキャリア化が多く, 本邦では成人感染後のキャリア化は少ないとされている. Genotype Aが欧米で多く本邦で少ないことが, その原因であると考えられた.