著者
五島 史行 浅間 洋二 中井 貴美子
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.12, pp.1171-1174, 2005-12-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

線維筋痛症とは, 全身に強い痛みを起こす原因不明の疾患である. めまい, 耳鳴などの蝸牛前庭症状を主訴として耳鼻咽喉科を初診することがある. 症例は38歳女性, 主訴はめまい, 全身の痛み. 聴覚, 平衡機能検査では明らかな異常を認めなかった. 外来加療中に痛みが増悪し, カウンセリング, 自律訓練法を導入した. 入院し, A型ボツリヌス毒素注射, プレドニゾロン点滴などの治療を行い軽快退院となった. 入院中も嘔吐を伴う回転性めまい発作が定期的に認められたが, 明らかな眼振は観察されなかった. 神経の統合異常, 体性感覚の異常などがめまいの原因と考えられた. 薬物治療や心理的治療により疼痛を緩和することが結果的にめまいを抑制したと考えられた.
著者
伊藤 直人 森川 将行 飯田 順三 平尾 文雄 東浦 直人 岸本 年史 橋野 健一 南 尚希 中井 貴 中村 恒子 南 公俊 山田 英二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-985, 1998-09-15

高血圧を伴った神経ベーチェット病で,剖検によって死因がクモ膜下出血と診断された,まれな1例を経験したので報告する。クモ膜下出血の出血部は神経ベーチェット病の病変の中心である橋底側の動脈で,経過中に高血圧を併発していることもあり,神経ベーチェット病と高血圧およびクモ膜下出血との関連が示唆された。
著者
五島 史行 矢部 はる奈 中井 貴美子 藤野 紀子 小川 郁
雑誌
日本心療内科学会誌 (ISSN:13429558)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-9, 2008-02-20
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
田中 文雄 赤木 成子 藤本 政明 結縁 晃治 杉原 博子 増田 游 斉藤 稚里 小河原 利彰 中井 貴世子 難波 正行 岡田 聡子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.851-856, 1994-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

めまいおよび耳鳴を主訴に来院した59症例に対してトフィソパムを投与し, 自覚症状, 他覚所見の改善度を検討した. 同時に心理テストであるTMIおよびシェロング起立試験を施行した. 全般改善度は軽度改善以上で, めまいに対して85%, 耳鳴に対して83 %であつた. めまいでは併用薬を用いた群で改善率が高かつたが, 耳鳴では併用薬のない群でも高い改善率が得られた. TMIでは, II型+IV型での著明改善の割合が1型での著明改善の割合より高い傾向を示した. またシェロングの起立試験では, 施行したすべての症例で陰性化を認めた. トフィソパムは自律神経機能不全の悪循環を断ち切ることにより, めまいおよび耳鳴を改善することが示唆された.
著者
藤 さやか 平井 美紗都 茂原 暁子 中井 貴世子 折田 頼尚
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.8, pp.1117-1126, 2016-08-20 (Released:2016-09-08)
参考文献数
17
被引用文献数
4

2006年から2013年までに鼻出血を主訴とし当科で加療した1,096件 (923人) を対象とした. 男性628件 (57.3%), 女性468件 (42.7%) で, 平均年齢は58.3歳 (1~98歳) であった. 出血部位はキーゼルバッハ567件 (51.7%), 出血なし288件 (26.3%), 出血点不明93件 (8.5%) と続いた. 初診時に行った止血法は, 電気焼灼47.1%, 経過観察24.0%, 局所止血剤20.6%で, 鼻中隔出血に対しては主に電気焼灼を行い, 鼻中隔以外の出血にはガーゼパッキングや局所止血剤が多く用いられていた. 1,096件中, 入院対応とした群は66件 (6.0%) であり, うち再出血あり群19件, なし群47件で, 帰宅対応とした1,030件 (94.0%) のうち, 再出血あり群116件, なし群914件であった. 入院群では, 出血点不明や鼻中隔以外からの出血が多く, 主にガーゼパッキングで止血し, 高血圧や心疾患既往, 抗血小板薬の内服歴, 前医での処置を受けた症例が有意に多かった. 名義ロジスティック回帰分析による初診時点での再出血リスク因子は, 出血点が上鼻道・中鼻道・不明な症例, 高血圧の既往, ガーゼパッキングが有意なリスク因子であった. 中でもガーゼパッキングを行わざるを得なかった症例は電気焼灼よりも約4倍再出血を来しやすく, 出血点を同定しピンポイントで止血処置を行うことが重要と考えられた.
著者
中井 貴大 木村 圭佑 岩田 研二 山崎 年弘 坂本 己津恵 松本 隆史 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.79, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 脊髄損傷、脳卒中片麻痺、パーキンソン病(以下:PD)患者に対するトレッドミル歩行訓練(以下:TT)効果についての報告は数多くあり、高いエビデンスを認めている。そこで、今回Th11破裂骨折にて下肢に不全麻痺を呈したPD患者に対して、自宅内での歩行再獲得にTTが有効であった症例について報告する。【症例紹介】 症例は70歳代女性で、腰背部痛の増悪により歩行困難となりTh11破裂骨折の診断を受けた。急性期病院にて硬性コルセットを作成し保存療法となり、発症42日後に当院回復期リハビリテーション病棟に入院し、自宅復帰に向けたリハビリテーションの介入を開始した(患者1日あたりの単位数7単位)。病前は夫と二人暮らしで、既往歴にPDがあったがADLは自立レベル、IADLも一部自立していた。なお、本研究は当院の倫理委員会が定める倫理規定に従い実施した。【初期評価】 Hoehn-Yahr重症度分類はStage3レベルであり、動作時に姿勢反射障害を認めた。また、入院時は座位保持で腰背部痛が増悪(NRS8/10)し、座位時間は約30分程度であった。さらに右下肢には軽度から中等度の表在感覚低下を認め、入院時下肢筋力は右下肢がMMT2~3レベル、左下肢が3~4レベルであった。病棟での移動手段は車椅子で、介助者による駆動の介助が必要であった。歩行は疼痛が強かったため行っていない。入院時機能的自立度評価法(以下、FIM)は64点であった。【経過・アプローチ】 腰背部痛の軽減、座位時間の延長に伴い、入院約2週間後平行棒内歩行訓練を開始した。当初は平行棒を両手で把持した状態でも膝折れが生じるため監視レベルに留まり、入院約1ヶ月で住宅評価を行ったところ短距離を独歩で移動しなければいけない区間が存在したため、歩行能力向上を目的にTTを開始した。TT開始初期は設定速度0.5㎞/hとし、前方両手支持での環境設定とした。歩行能力向上に伴い難易度調整を行った。TT開始から約1ヶ月で速度2.0㎞/h、支持物なしにて約3分間連続歩行が可能となった。TTの効果判定として、10m歩行を測定し、速度、歩行率、介助数の側面から訓練効果について検証した。TT開始当初は10m最大歩行速度0.59㎞/h、歩行率0.88step/sec、介助数3回であったが、約1ヶ月のTT訓練介入で速度2.02㎞/h、歩行率1.68step/sec、介助数0回と歩行速度、歩行率、介助数において改善を認めた。TT開始約2週間で病棟内シルバーカー歩行自立となり、退院時には約50mを介助なしで独歩にて移動可能となったが、自宅環境との違いより、病棟内歩行はシルバーカーに留まった。なお、退院時FIMは99点と向上した。【考察】 TT開始当初の歩容は、PD特有の体幹前傾位で小刻み歩行であった。さらに破裂骨折の影響のため下肢筋出力低下を認め、支持性が低く歩行速度も低下していた。また左右動揺が大きく、バランスを崩した際は姿勢制御が困難であった。TTの導入により、能力に合わせた高速度での歩行を繰り返し行うことと股関節伸展を意識した立脚後期を作ることでCentral Pattern Generatorが賦活し、歩行時の筋活動パターンが学習され、歩行能力向上につながったのではないかと推察された。また、動作特異性から一定量の歩行訓練を行うことで、実動作への転移が高く、短期間での訓練効果が得られたのではないかと考えられた。