- 著者
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中嶋 信生
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, no.4, pp.666-679, 2001-04-01
- 被引用文献数
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28
携帯電話は, 総加入数がPHSも含めると我が国の総人口の50%を超えた今でもなおiモード人気等で増加を続け, 更に2001年からは本格的マルチメディア通信を可能とするIMT-2000がスタートするなど, 今後も通信トラヒック量はますます増えるであろう.一方, 周波数資源は有限で, 新たな通信需要を賄うためにはより高い周波数帯の開拓か新技術開発を行わざるをえない.無線伝送技術としての周波数利用率の向上はこれまでめざましいものがあったが, 限界に近づきつつある.抜本的な容量増大の鍵を握る技術の一つがアダプティブアレーアンテナである.所要送信出力の低減もアダプティブアレーの大きな特徴である.指向性制御等の基本技術が進歩してアダプティブアレーは, 理論的に優れた性能が得られるようになってきた.残るのは実用化にかかわる諸問題の解決である.ただし, この問題が非常に難しくて, これまで移動通信におけるアレーアンテナの普及を阻んできた.本論文では, 様々な角度から実用上の問題の所在を明らかにし, 今後アレーアンテナ実用化に向けて検討すべき方向を明らかにするよう試みた.我が国における最近の研究開発動向も紹介している.