著者
唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.396, pp.57-62, 2015-01-15

MIMOシステムの伝送特性評価(通信路容量やBER特性)には、通信路行列(A)の相関行列(A^HA、AA^H)の固有値分布を把握することが重要である。次世代ワイヤレスシステムでは、大規模アレーによるMIMOシステム(Massive MIMO)に期待が高まっているが、Massive MIMOでは、相関行列のサイズが大規模になる。そのような大規模ランダム行列の漸近固有値分布は、マルチェンコ・パスツール則に従う。本稿では、漸近固有値分布とそこから導き出される漸近通信路容量に対し、限定されたMIMO(それほど大規模でないMIMO)の特性評価に、漸近固有値分布の理論がどこまで通用するかを明らかにする。
著者
唐沢 好男 中田 克弘 ポンマサック パーワンナー
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.192, pp.43-48, 2012-08-23

近年、パソコンの処理能力が上がり、高速・広帯域のデータを長時間リアルタイムで記録できる時代になってきた。筆者らは、電波伝搬測定等の手段として、電波環境を丸ごとパソコンのハードディスクに収録する装置(トータルレコーディングシステム:TRS)の性能向上に取り組んできた。また、このTRSにより、21世紀初頭の電波環境を収録し、後世に記録として残す電磁環境アーカイブの構築を目指している。今般、サンプリングレート400MHzでのTRSを新たに構築し、本年3月時点でアナログTV放送がサービス中であった仙台地区において、100kHZ〜200MHZでの電波環境のデータ取得実験を行ったので、この結果を報告する。また、TRSは、単に電波環境の記録・再生のみならず、電波伝搬特性測定などの環境解析手段としても有用である。このTRS応用の一例も示す。
著者
唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.1706-1720, 2003-09-01
被引用文献数
89

本論文では,MIMOチャネルの情報伝送能力の鍵を握る電波伝搬を対象として,そのチャネルモデリングの研究を概観する.MIMOチャネルはチャネル応答行列の特異値分解により固有値の大きさに応じた独立のパスをもつ等価回路として表される.そのパスの大きさは,送受信双方の周囲の到来角プロファイルとともに,その途中の伝搬構造にも依存する.またアダプティブな制御においては不安定問題が内在し,隠れた難しさがある.これらの項目を取り上げ,最後に,電波伝搬の視点からのMIMOの研究課題を挙げる.
著者
関口 高志 三浦 龍 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.171-181, 1997-02-25
被引用文献数
8

比帯域幅の広い広帯域信号に対応したビームスペース形構成のアダプティブアレーアンテナを提案する. マルチビームフォーマ部は, それを構成する各ディジタルビームフォーミング回路にタップ付遅延線回路を用いて, 広帯域信号を通過できるように構成した. タップ付遅延線回路の荷重係数は, 各ディジタルビームフォーミング回路の位相特性が同一となり, かつ指向特性が周波数にほとんど依存しないように決める. マルチビームフォーマに続くビームセレクタでビームを選択し, それらのビームの線形結合により干渉信号を抑圧する. これらの線形結合係数は適当な適応アルゴリズムで制御する. 提案する構成は, タップ付遅延線回路を用いたエレメントスペース構成のアダプティブアレーに比べて, 制御すべき荷重の数は著しく少ない特徴をもつ. 適応アルゴリズムにCMA(Constant Modulus Algorithm)を用いた計算機シミュレーションにより, エレメントスペース構成に比べて収束が早く, 干渉波抑圧能力も遜色ないことを示す.
著者
唐沢 好男 篠澤 政宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.90-96, 2002-01-01
参考文献数
8
被引用文献数
12

サブバンド信号処理型アダプティブアレー(SBAA)のメリットは分割したサブバンドことに並列信号処理ができることであり, トータルとしての計算量も大幅に軽減できることである.一方, その代償として遅延波の取込み能力などの性能面での低下が免れず, その問題解決が必要である.そこで, 本論文では, OFDM方式のなかで取り入れられているガードインターバル(サイクリックプレフィックス)付加の仕組みを, 通常のデータ伝送に取り入れ, 上記SBAAの性能を極限にまで引き出す方法を提案する.また, その性能を計算機シミュレーションによって評価する.
著者
付 鑑宇 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1884-1894, 2002-11-01
被引用文献数
8

本論文ではOFDM変調方式を用いて多くのユーザが混信なく回線接続ができる無線アクセス方式:OFDMAのイメージを示し,その伝送特性を検討している.ここでは,周波数帯域(ユーザの全帯域幅)を全ユーザで共有し,一つのユーザが使用するサブキャリヤ数を固定する条件で,ユーザが優先順位に従って,伝送状況の良いサブキャリヤを選んでいく方式を提案する.その際,サブギャリヤごとに所要のBERを満たすように変調方式を伝搬特性に応じて可変する適応変調方式を取り入れる.この方式が理想的に動作した場合の伝送特性(スループット特性)が定量的に評価できる理論モデルを示す.また,そのモデルによる評価が妥当であることを計算機シミュレーションによって示す.
著者
小佐古 昂 土屋 潤三 高崎 和之 唐沢 好男 小松 覚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.58, pp.1-6, 2009-05-21
被引用文献数
2

GPS(Global Positioning System)は全世界的な測位システムとして広く利用されている。ITS車車間通信に自動車位置情報として利用する場合には、建物反射等マルチパス伝搬によって生じる測位誤差の低減が必要になっている。そこで本稿では、L1帯(1575.42MHz)GPS電波を対象に信号を受信・保存し、オフラインでの電波解析を可能とするGPSトータルレコーディングシステム(GPS-TRS)を試作し、その性能評価を行った。また、システムを用いて収録した信号について直接解析を行った。
著者
中嶋 信生 唐沢 好男 本城 和彦 山尾 泰 藤井 威生
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

自動車事故防止を目的として,高信頼な車車間情報通信,高精度測位,危険の表示方法等の研究開発を行った.具体的にはMIMO+アダプティブ複号化,路側無線機中継,車の置かれた状況に応じたルーティング手法等の適用により,車車間通信の高信頼化を図ると共に,電波干渉の強い車車間通信に耐える低歪・高能率な無線回路を開発した.衝突防止に向けた車対人の相対測位ならびに歩行者の高精度電波測位では, 2. 4 GHzの周波数で推定誤差1m以下を達成した.ウェアラブル型の常時即時認識可能なドライバー用情報表示機器を実現した.
著者
Kumar Das Nirmal Theodorus 宮台 典尚 篠澤 政宏 谷口 哲樹 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.230, pp.133-138, 2003-07-23
被引用文献数
2

本稿では空間・偏波領域における電波伝搬特性の測定や新しい伝送方式の実環境での動作を評価するため試作したMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)実験装置を紹介する.この装置は送信入力4ブランチ,受信出力8ブランチの4×8のMIMOであり,例えば4ブランチを4素子のアレーアンテナとして使うことも,直交偏波を取り入れた2素子・2偏波のブランチとして使うこともできる.そして,電波暗室においてAlamoutiの時空間符号化伝送や固有モード伝送などMIMOの基本伝送実験を行い,この装置の基本動作を確認した.
著者
竹本 淳 高橋 宏和 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.386, pp.85-90, 2009-01-14

地上デジタル放送の移動体受信環境並びに室内での受信においては,直接波の受信が期待できず,一般に弱電界エリアになるために,伝搬環境,特に受信所望波の到来方向及び遅延時間の定量的かつ高分解能な把握が重要となる.到来方向推定にはアレーアンテナが有用であるが,一般的手法では複数の到来波を判定するために波数と比べアレー素子数を十分大きくする必要があり,かつ,全てのブランチの信号を同時に取得しなければならない。また、遅延時間の推定には受信側において既知の広帯域信号が必要になることから,実放送波を利用する到来波・遅延時間推定には有用かつ簡便な手法が確立されていない.そこで,本稿では,高SN比の信号が受信される場所と被測定環境との2点で同時収録を行い,高SN比信号を基準信号として目的信号を精密に解析する新しい測定法を提案する.本手法では,トータルレコーダ(1台)を用いて,被測定信号と高品質信号を各アレー素子について同時収録し,オフライン処理により基準・被測定双方の受信データから相関行列を作成,ここから固有値解析を行って,到来波の角度特性や遅延特性の精密な測定が可能であることを述べる.
著者
前山 利幸 高崎 和之 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.416, pp.53-58, 2006-12-07
被引用文献数
5

伝送線路として利用する人体の周波数特性を解析した。解析の結果、40MHz以下の周波数帯域を利用することで空間より20dBほど少ない損失で伝送できること、またその伝送帯域は複雑な周波数特性を持つことがわかった。筆者らは、周波数特性の変動に耐性の高い変調方式を用いて、40MHz以下の周波数帯域に信号を配置する方法で、高速で安定的な人体通信方式を提案する。提案方式の実験系を構築し、伝送帯域幅6MHzのOFDM信号で伝送実験を行い、およそ17Mbpsの伝送が実現できることを示す。