著者
中村 英人 石野 洋子
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.79-94, 2019-12-31 (Released:2020-01-18)
参考文献数
19

わが国のオープンデータへの取組みは,2012年のIT総合戦略本部による「電子行政オープンデータ戦略」の決定などを通じて政府主導で始まり,地方自治体にも広まりつつある。当該自治体の規模の大きさがオープンデータ化の進展に影響していることは公表されているデータから容易に推定されるが,規模に内在する要因を定量的に解明した先行研究は,これまでにない。この解明が本研究の第一の目的である。次に,従来から存在するホームページと新たなオープンデータの間の,データ重複の問題を考える。それらのサイトに類似した紛らわしいデータが存在すると,様々な問題を生じさせる可能性がある。そこで,地方自治体のデータ公開の実態を調査し,そこに潜む課題を明確にすることが第二の目的である。その際,人口統計データに焦点を当てた。我々は,先進自治体へのインタビュー調査,オープンデータ実態調査(総務省)の人口規模による差異解析,そして,人口統計データの公開状況調査という3段階の調査を経て,以下のことを発見した:(1)地方自治体のオープンデータ化の推進には,自治体の規模に加え,担当部署とプロセスが大きく関係していること,(2)ほとんどの自治体が既存のホームページをそのまま維持した状態で,新たにオープンデータのサイトを追加する形を取っていること,(3)両方のサイトでデータが内容的に重複しているにもかかわらず,それらのデータの同一・差異について明記していないところが多いこと。
著者
長谷川 卓 中村 英人 黒田 潤一郎 守屋 和佳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

C4植物は700万年前頃に顕在化した被子植物で,通常の光合成回路の前段にCO2濃縮回路を持ち効率的な炭素固定を行う.この形質の成立過程は謎に包まれているが,「白亜紀中期の約1億年以上も前のオーストラリア南西~南極大陸にかけてがC4植物誕生の場である」という仮説を立て,これを検証する.炭素循環の大きな攪乱期の前後の試料から有機分析を進め,分子レベルの炭素同位体比分析など先進的手法も取り入れる.どの時代でどの環境激変と連動してC4植物が誕生・進化したかを明らかにし,その時代の環境背景を更に詳しく理解していく.C4植物のみに由来する有機分子の発見を期待している.
著者
中村 英人
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.147, 2011

生物の進化にともない生合成経路も進化してきた。分類群ごとに特徴的な化合物組成は化石の形態形質同様に生物とその生合成経路の進化過程について重要な示唆を与える。生物由来の有機分子は生体の死後,生物分解や化石化過程を経て失われてゆくが,一部の脂質分子は地質学的時間を経てなお残存し,古生代や中生代など古い時代の堆積物からも検出される。特定の起源生物に由来することが明らかな化合物はバイオマーカー(分子化石)として,それらの生物の起源の探索や古環境復元などに応用されてきた。近年,分子生物学の発展に伴い,多様な生体化合物の代謝生理が急速に明らかになりつつある。化合物レベル,骨格レベルでの生合成経路と生理機能の解明は,テルペノイドバイオマーカーの起源分類群の化石形態には残らないような古生態学的特徴を復元する手がかりになり,起源分類群の進化過程についてもいっそうの理解をもたらす可能性がある。
著者
中村 英人 沢田 健
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in Organic Geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.31-42, 2007
参考文献数
16

The chemical compositions of woody fossil fragments collected by picking manually and density centrifugation from sandstones of the Lower Cretaceous Yezo Group in Oyubari, central Hokkaido, Japan were analyzed by KOH/methanol hydrolysis (saponification) after solvent extraction. Organic compounds bound in macromolecules of the woody fragments with ester bonds, obtained by saponification, were mainly composed of short-chain (C<sub>14</sub> to C<sub>18</sub>) fatty acids and series of <i>n</i>-alkanols ranging from C<sub>12</sub> to C<sub>28</sub> homologues. These ester bound constituents are attributed to moieties of polyester parts of selectively preserved resistant macromolecule like cutin or suberin. Even carbon-number predominance was observed in both compounds, which indicated that biological components were well preserved. The bound fatty acids showed similar distribution patterns among all samples, indicating that these moieties might have been altered by strong diagenetic processes. On the other hand, the distribution patterns of <i>n</i>-alkanols significantly varied. In particular, those of long-chain (>C<sub>20</sub>) <i>n</i>-alkanols varied possibly depending on plant taxonomy. Thus, we suggest that these parameters are strongly useful as molecular paleobiological indicators for chemotaxonomic analyses. Also, the distributions of short-chain <i>n</i>-alkanols and the ratios of short to long-chain homologues are presumably useful indicators for diagenesis, taphonomy and environment.