著者
横田俊平 黒岩義之 大西孝宏 中島利博 中村郁朗 西岡久寿樹
出版者
医薬ジャーナル社
雑誌
アレルギー・免疫 (ISSN:13446932)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.786-793, 2018-05-15

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に多彩な症状を呈する副反応症例の解析により,症候学的に,① 生命機能,② 高次脳機能・辺縁系,③ 感覚機能,④ 運動機能の4つの機能の恒常性の破綻が推定され,HPVワクチンのL1抗原とアジュバントによる視床下部・脳室周囲器官の病変が原因と推定された。一方,ASIA(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)症候群は,アルミニウム塩,シリコンのアジュバント作用に由来し,自己免疫疾患はアジュバントによる慢性刺激が原因であると推定された。いずれも症候を詳細に検討する余地が残されており,今後,一般的症候との差異を明らかにする必要がある。
著者
黒岩 義之 平井 利明 横田 俊平 鈴木 可奈子 中村 郁朗 西岡 久寿樹
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.185-202, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
50

脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.
著者
和佐野 喜久生 湯 陵崋 劉 軍 王 象坤 陳 文華 何 介均 蘇 哲 厳 文明 寺沢 薫 菅谷 文則 高倉 洋彰 白木原 和美 樋口 隆康 藤原 宏志 佐藤 洋一郎 森島 啓子 楊 陸建 湯 聖祥 湯 陵華 おろ 江石 中村 郁朗
出版者
佐賀大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本学術調査は農学及び考古学の異なる専門分野から、東アジアの栽培稲の起源に関する遺伝・育種学的研究および中国の古代稲作農耕文化の発祥・変遷・伝播についての中国での現地調査、考古遺物・文献・資料の収集とその研究解析、現地専門家との討論を行うことであった。これまでの3回の海外調査によって、多くの研究成果を得ることができた。研究代表者の和佐野がこれまでに行った古代稲に関する調査は、中国の長江のほぼ全流域、黄河の中下流域、山東半島、遼東半島および海南島の中国全土にわたるものとなった。また、調査・測定した古代稲の実時代は、新石器時代の紀元前5,000年から前漢時代までの約5,000年の長期間に及び、その遺跡数も18カ所になった。稲粒の粒大測定は、大量にあるものからは約100粒を任意抽出し、それ以下のものは全粒を接写写真撮影によって行った。また、中国古代稲の特性を比較・検討するために、韓国の2カ所および日本の14カ所の古代遺跡の炭化米の調査も並行して行った。以上の調査結果に基づいて、次のような結論を得ることができた。(1)紀元前5,000年ころの気温は現在より2度は高かったこと、および北緯30度周辺に位置する城背渓および彭頭山遺跡文化(紀元前6,000-7,000年)の陶器片および焼土中に多くの籾・籾殻・稲わらの混入が発見されたことから、紀元前6,000-7,000年頃には北緯30度付近に稲(野生か栽培されたものかは分からない)が多く生育していたと考えられる。彭頭山遺跡の籾粒は6ミリ前後のやや短粒であった。(2)古代稲粒の大きさ・形の変異の状況および稲作遺跡の時代的新旧の分布状態から、東アジアの稲作は、長江の下流域・杭州湾に面した河姆渡および羅家角両遺跡を中心とした江南地方に、紀元前5,000年以上溯る新石器時代に始まったと考えられる。(3)長江の中流域には、紀元前6,000-7,000年の城背渓および彭頭山遺跡から稲粒が発見されているが、稲作農耕の存在を証拠づけるものがまだ発見されていないこと、河姆渡および羅家角両遺跡と同時代の紀元前5,000年頃の稲作遺跡が存在しないこと、中流域に分布する多くの遺跡が紀元前3,000-4,000年のものであること、などから、稲作は下流域から伝播したものと考えられる。(4)長江の最上流域の雲南省の稲作遺跡は紀元前1,000-2,000年の新しいものであり、稲粒も粒が揃った極端な短円粒であること、さらには、雲南省の最古の稲作遺跡である白羊村遺跡の紀元前2,000年頃には、黄河流域からの民族移動の歴史があること、などから、稲作のアッサム・雲南起源説は考えられない。アッサム・雲南地域は、周辺地域から民族移動に伴って生じた稲品種の吹きだまり(遺伝変異の集積地)の可能性が強いことを提唱した。(5)黄河の中下流域の前漢時代の古代稲は、長大粒で日本の現在の栽培稲とは明らかに異なるものであったが、淮河流域の西周時代の焦荘遺跡の炭化米は、九州の弥生中期の筑後川流域のものによく類似した。(6)山東半島の楊家圏遺跡(紀元前2,300年)の焼土中の籾粒は日本の在来の稲品種によく類似したが、遼東半島の大嘴子遺跡の炭化米は短狭粒で、韓国の松菊里遺跡(紀元前500年)、あるいは日本の北部九州の古代稲粒のいずれとも異なるものであった。このことから、稲作が朝鮮半島の北から内陸を南下したとは考えられない。(7)山東半島の楊家圏遺跡、松菊里遺跡(紀元前500年)、および日本の北部九州最古の稲作遺跡・菜畑遺跡のやや小粒の古代稲粒は、浙江省呉興県の銭山漾遺跡の炭化米粒の中に類似するものがかなり見られた。このことは、日本への最初の稲作渡来が江南地方から中国大陸の黄海沿岸に沿って北上し、山東半島から韓国の西海岸を南下しながら北部九州に上陸した可能性を示すものである。森島、湯および王は、雲南省と海南島の野生稲の現地調査を行い、中国の野生稲の実態を明らかにした。佐藤は河姆渡遺跡の古代稲の電子顕微鏡写真撮影によって、同遺跡の稲が野生稲の特徴である芒の突起を有すること、さらに小穂の小枝梗の離層が発達していることを確認した。藤原と湯は、江蘇省青浦県の草鞋山遺跡(紀元前3,400年)周辺を発掘し、当時の水田遺構の確認および稲のプラントオパール分析を行い、当時の稲作の実態を明らかにした。樋口、白木原、高倉、菅谷および寺沢は、それぞれの専門から研究を行い、現在報告書の成作を完了した。厳、蘇、陳、何および劉は、新石器時代の稲作文化および古代民族移動に関する報告書を作成した。
著者
磯村 達也 村上 亜弥 犬塚 恭子 川口 美佳 佐藤 恵美子 中村 郁朗 岡 寛 KP White 西岡 健弥
出版者
The Japanese Society for Clinical Rheumatology and Related Research
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.130-136, 2014

目的:London Fibromyalgia Epidemiology Study Screening Questionnaire (LFESSQ)は6問からなる英語の質問票で,一般集団を対象とした疫学研究において,線維筋痛症患者をスクリーニングするためにWhite KPらによって開発された.LEFSSQを日本の臨床現場に導入するため,言語的妥当性を担保した日本語版を作成した.<br>方法:日本語版の作成は,開発許可を取得後,言語的な妥当性を担保した翻訳版の開発において標準的に用いられる手順(①順翻訳,②逆翻訳,③パイロット調査)に沿って実施した.この手順を通し,原作と同等の内容が反映された,日本人にとってより自然な文章表現である翻訳を目指した.内容の同等性については,適宜,原作者に確認した.<br>結果:①順翻訳:日本語を母国語とする2名の翻訳者が,それぞれ日本語に翻訳し,協議を通して一つの翻訳案を作成した.②逆翻訳:英語を母国語とする独立した翻訳者が,英語に逆翻訳した.その後,原作者や専門医との協議を経て,日本語暫定版を作成した.③パイロット調査:6名の日本人成人男女を対象に面接調査を行い,結果を踏まえ,日本語暫定版の文章表現の妥当性を検討した.参加者は,6名中4名が女性,平均年齢は50.0歳であった.調査の結果,質問票の分かりやすさ,及び表現や内容の正確な理解は,全体として問題はなかった.<br>結論:一連の作成手順と検討を通し,言語的妥当性を担保した日本語版LFESSQを作成した.
著者
長田 賢一 岡 寛 磯村 達也 中村 郁朗 富永 桂一朗 高橋 忍 小島 綾子 西岡 久寿樹
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-28, 2008-03-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
13

The fibromyalgia impact questionnaire (FIQ) is a 10-item, patient-reported outcome measure to capture the total spectrum of symptoms and problems related to fibromyalgia. The original version of the questionnaire was developed in English and psychometrically validated. It has been translated into 8 languages and used worldwide as the only disease-specific questionnaire for measuring patient’s fibromyalgia status. In order to develop a Japanese version of the FIQ, we translated the original into Japanese and performed a linguistic validation of the translated questionnaire. The translation and evaluation were performed in a standard manner to ensure conceptual equivalence between the original and its translation: 1) forward-translation by two independent Japanese translators (English to Japanese); 2) back-translation by an English native translator (English to Japanese); and 3) a pilot testing for comprehension in patients with fibromyalgia. The original developer and two Japanese clinicians were involved throughout the validation process. As a result of the evaluation, the translation of daily activities such as “walking several blocks” and “doing yard work” proved challenging. Cultural difference was the main cause in finding equivalents. The numerical rating scales were not always completed properly; therefore, detailed scale instructions were attached to the front page of the questionnaire. Through multiple procedures, a linguistically validated Japanese version of the FIQ (JFIQ) has been successfully developed.