著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。
著者
永淵 修 中澤 暦 篠塚 賢一
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.29-37, 2022-01-15 (Released:2022-02-16)
参考文献数
21

マイクロプラスチック(MPs)は,都市域のみならず,世界最高峰のエベレスト山の雪やマリアナ海溝の最深部の堆積物,北極圏の雪など地球上のあらゆるところで発見されている.しかし,その輸送経路については未知の部分が多い.ここでは,北および西風が卓越する冬季に人為汚染のない自由対流圏にある高山で樹氷と積雪を採取し,MPsの有無についてFTIRイメージングを用いて検証した.その結果,積雪と樹氷中にMPsの存在が明らかになった.樹氷中には,8.34×106 m-3 から12.3×106 m-3 の範囲でMPsが検出され,積雪中には1.34×106 m-3 のMPsが存在した.樹氷中のMPsの濃度は積雪中の約10倍であった.樹氷中のMPsの粒径分布をみると,100 µm以下に90 %以上が存在し,その大部分が断片であった.構成成分はポリエチレン(PE)が主成分であった.都市域から離れた自由対流圏にある高山にもMPsによる汚染が存在していることが明らかになった.
著者
永淵 修 中澤 暦 篠塚 賢一
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-42, 2019 (Released:2019-01-10)
参考文献数
51

上流域に自衛隊の射撃場を持つ, ため池の鉛汚染について, その起源を特定する方法を検討した。鉛は各鉛鉱山によりその安定同位体比が異なることが知られている。そこで, 射撃場を含む流域内の堆積物と土壌を採取し, その鉛同位体比を基に起源を検討した。その結果, 射撃場の影響下にある土壌・堆積物とその影響を受けないものでは鉛同位体比が異なっていた。さらに, 銃弾に使用されている亜鉛, 銅と鉛の組成比からD.I. (Distance Index) を計算し, D.I.値を用いてクラスター分析を行ったところ射撃場の影響を受けた地点と受けてない地点ではD.I.の値が大きく異なり, クラスターも二つに分離された。したがって, 土壌・堆積物の鉛汚染の起源を特定する方法として, 鉛同位体比を含めた金属組成比によるD.I.およびクラスター分析等の結果を統合する解析法は, 鉛汚染の起源推定の確度を上昇させる優れた手法であることを確認した。
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100126, 2016 (Released:2016-11-09)

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。