著者
大橋 唯太 井原 智彦 高根 雄也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.37(2023年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.27-32, 2023-12-08 (Released:2023-12-08)
参考文献数
21

東京23 区の夏季熱中症と虚血性心疾患の高齢者死亡リスクを,沿岸と内陸の地域別に高温経験の遷延性を考慮して解析した。日最高気温99 パーセンタイルの37℃高温経験は,沿岸地域で3日後,内陸地域で6日後まで熱中症リスクを高めていた。日中の高温条件では沿岸のほうが内陸よりも死亡リスクが高い一方,夜間の高温となる日最低気温28℃では逆に内陸のほうが死亡リスクは高くなった。虚血性心疾患の遷延性は特に沿岸地域で熱中症よりも長く12~13 日後までみられ,死亡リスクも沿岸が内陸よりも高くなっていた。日中の気温が高い日ほど業務・商業施設が集中する沿岸地域への高齢者の流動人口は減少し,気温による大規模な行動変容が確認された。
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。
著者
高根 雄也 近藤 裕昭 日下 博幸 片木 仁 永淵 修 中澤 暦 兼保 直樹 宮上 佳弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100126, 2016 (Released:2016-11-09)

本研究では、地表面からの非断熱加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、風下末端地域の高温の発生に寄与しているという仮説を、3つの異なる手法・視点:独自観測・数値シミュレーションによる感度実験・過去データの統計解析から検証した。このタイプのフェーンは、1)典型的なドライフェーン(断熱加熱)と、2)地表面からの加熱(非断熱加熱)の複合効果によって生じる。フェーンを伴うメソスケールの西寄りの風に沿った地上気象要素の現地観測により、1)の典型的なフェーンの発生が確認できた。このフェーン発生地の風下側の平地における2)地表面からの非断熱加熱の効果に関しては、風下の地点ほど温位が高くなるという結果が得られた。そして、その風下と風上の温位差がフェッチの代表的土地利用・被覆からの顕熱供給(地表面からの非断熱加熱)で概ね説明可能であることが、簡易混合層モデルによるシンプルな計算にから確認できた。この非断熱加熱の存在を他の手法でより詳しく調査するため、WRFモデルによる風上地域の土壌水分量の感度実験、および過去6年分の土壌水分量と地上気温、地上風の統計解析で確認した。その結果、風上側の地表面から非断熱加熱を受けた西寄りの風の侵入に伴い、風下の多治見が昇温していることが両手法によっても確認された。この地表面加熱を伴うハイブリッドタイプのフェーンが、この風の終着点である多治見の高温に寄与していると考えられる。
著者
大橋 唯太 亀卦川 幸浩 井原 智彦 高根 雄也
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

人口が集中する都市の屋内外環境における急性循環器系疾患の死亡リスクを、気象と都市の数値流体モデルによって高解像でマップ化することが、本研究の主課題である。建物室内での生活、屋外空間での歩行や労働など、個々の活動条件を想定した疾患リスクの定量評価を試みる。この物理モデルで得られた結果をもとに、AI(機械学習)による疾患リスク予測の簡易手法を確立する。また、将来の気候変動によって予想される極端な高温化が、急性循環器系疾患の死亡リスクをどの程度上昇させるかについても、予測評価を試みる。
著者
高根 雄也
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本で最も暑い街として知られている多治見の高温に及ぼす風上側の地面状態の影響を調査した。多治見が高温の日には、西寄りの山越え気流が頻繁に卓越していることを予め確認後、この風が高温に寄与するメカニズムに関する仮説:風上地表面からの非断熱加熱を伴うフェーンを検証した。その結果、本仮説を実証する結果を得た。すなわち、風上側の地面状態が風下側の高温に大きな影響を及ぼしていることを確認した。また、気流が都市域を通過する時や、日射が大きくかつ土壌が乾燥している日に、風上地面状態の影響が特に大きくなることが分かった。以上の結果は、風上の土地利用の改変が今後風下都市の熱環境に影響を及ぼすことを示唆している。
著者
岡田 牧 日下 博幸 髙木 美彩 阿部 紫織 高根 雄也 冨士 友紀乃 永井 徹
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.23-29, 2014-01

2010年当時の国内最高気温40.9℃が記録された岐阜県多治見市における夏季の気温分布を調べるために,2010年8月に多治見市並びに愛知県春日井市の学校及び公園に計15台の気温計を設置した.月平均気温の空間分布から,盆地底に位置する多治見市中心部ほど気温の高い様子が示された,また,日最高気温35℃以上の日数(猛暑日数)と日最低気温が25℃以上の日数(熱帯夜数)についても,多治見市中心部で最も多かった.更に,日最低気温が現れやすい早朝の気温分布においても,多治見市中心部ほど気温が高かった.夜間の盆地底は冷気層の形成によりその周囲よりも低温になりやすい.しかしながら気温が下がりにくかったという結果から,多治見市の日最低気温の形成に多治見市の都市化が影響していることが推察された.