著者
中込 さと子 堀内 成子 伊藤 和弘
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-62, 2004

目的<BR>本研究は, 遺伝的特質を親から子へ引き継ぐことの意味を探ることを中心に据えて, 遺伝性疾患をもつ女性Fさんにとって子どもを産み育む体験を記述することを目的とした。<BR>対象および方法<BR>1) 協同研究者: 軟骨無形成症をもち, 既婚で, すでに1人以上の子どもを得ており, 現在妊娠していない女性Fさんである。<BR>2) 研究方法: 研究デザインは質的帰納的記述研究とした。研究方法は, Giorgi, A.の提唱した現象学的アプローチとし, Heidegger, M.の存在論を前提立場とした。分析は, 第1に協同研究者の語りから生きられた体験 (lived experience) を統合的に記述し, 第2に記述された体験をHeidegger, M。の存在論に基づき研究者が解釈を加えた。データ収集は, 非構成的面接を2002年8月~11月に行った。<BR>結果<BR>Fさんは新生突然変異で出生し, 他の家族に同じ特質の人がいない環境で育った。Fさんは,「障害」と認めたくない母親から, 何事も同級生たちと同じように取り組むことを期待され努力し続けた。しかし高校卒業時より, 社会での自立に向かう過程でさまざまな障壁があり屈辱的な思いもした。しかし, 身障者の人びととの出会いや身障手帳を取得した以降, 社会的に「正当に」評価されたと感じ精神的に安定した。娘が同じ病気だと知って, 娘に対して, Fさん自身が親から育てられた方針とは逆の,「頑張らなくてよい」というこの身体的特質に対する正当な考え方を教えた。そして娘の身体だけでなく, その時々で感じる辛さも理解し, それに対応できるよう先々に準備をした。<BR>またFさんは, 親の会活動に参加し親や当事者たちを支えた。Fさんは「軟骨無形成症」をもった当事者の声を発信する活動と, 当事者としての自分自身の「個人史」を書き始めた。この活動を通して「骨無形成症者」が社会に広く理解されることを願っている。<BR>Fさんの体験の中心的な意味は,「自分の人生をかけて, 娘とすべての当事者を慈しむ」として理解された。中心的意味を形成する事柄として, 1) 他者評価を超えて, 自己を正当に評価する, 2) 生きてきた体験をもとに, 子どもの人生に関与する, 3) 子育てを通じて, 自己の存在の意味が明確になっていく, 4) ありのままの自分たちを受け入れ, 形のないものを志向する, が確認できた。<BR>結論<BR>子どもに遺伝的特質を引き継いだ体験は, 病の体験を引き継ぐ辛さではあったが, 自分の体験をもとに子どもの人生に関与し, わが子の存在によって自己の存在の意味を明確になっていった。またこの遺伝子がこれからも引き継がれるという観点から, 自分たち親子だけにとどまらず, 地域社会の未来の平和に対する志向の拡がりが確認できた。
著者
茶圓 智子 横尾 京子 中込 さと子
出版者
広島大学保健学出版会
雑誌
広島大学保健学ジャーナル (ISSN:13477323)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.102-110, 2007-09

本研究は, 予防接種における2歳から3歳の年少幼児の行動を類型化し, 行動の持つ意味を親や医療者の関わりの視点から考察し, 予防接種への対処を助けるために必要とされる看護ケアについて検討することを目的とした. 対象は日本脳炎の予防接種を受けた健康な2歳から3歳の年少幼児とした. データ収集は平成14年7月26日から同年9月12日までの1.5か月に行い, M小児科医院外来で行った. データ収集方法は, ビデオカメラを用いて, 第1回および第2回の日本脳炎予防接種の来院時点から帰院までの幼児の一連の行動と親, 兄弟, 医療者の行動を含めて撮影・録画した. データ分析は, 画像は事例別に全行動を言語で記述し, 予防接種に対する反応に関連する行動を抽出し, 幼児の予防接種に対する反応の出現時期(嫌がる時期, 泣き始める時期, 痛いと言う時期, 泣き止んだ時期), および, 幼児と医療者・親・兄弟との関わりを抽出し, 予防接種を受ける対象の行動の類型化を行った.その結果, 予防接種における年少幼児の行動は, 嫌がり・泣き始め・泣き止みの時期, 痛いという表現, 第1回・第2回の行動の相違点から, 3つに類型化した. タイプⅠの行動は, 第1回・第2回とも注射針刺入までに嫌がり泣き始め, タイプⅡの行動は, 第1回・第2回とも注射終了後に痛いと言って泣き始め, タイプⅢは, 第2回においてのみ注射針刺入時に痛いと言い液注入時に泣き始めるという行動であった. 年少幼児でも, 他者と注射の方法や意義について理解できること, 嫌がり・泣きがあってもがんばろうとしていたこと, 痛みに耐えようとしても耐えられないと泣いてしまうこと, 注射を見ることで不安が増強すること, 反応の内容や強さは個人差があることが考えられた.年少幼児の予防接種におけるケアとしては, 1)がんばるという心構えを支えること, 2)痛み体験を受け止め, がんばったことをほめる, 3)痛みを緩和すること, 4)注射部位の固定・注射の準備の仕方, 5)個別なアセスメントを行うことが示唆された.The purpose of this research is to find patterns in the behavior of infants during immunization injections and to ascertain the care needed when dealing with infants at vaccination. The subjects were five infants (aged from 2 years 11 months to 3 years 8 months old) who received immunization injections for Japanese encephalitis. The data was collected using a video camera of a series of interactions between the subjects, parents, siblings, and the medical treatment staff from their arrival at the clinic to their departure. Semi-structured interviews with the parents were also used to obtain information about the background of the subjects.As a result of inductive and descriptive analysis, the behavior of infants during immunization injections could be classified into three types. Infants of type I showed their dislike of the injection and cried before the prick of the needle at both the first and second injections. Infants of type II complained that it was painful and began to cry after the injection was over at both the first and second injections. Infants of type III said that it was painful at the prick of the needle but cried only during the second injection.Infants could talk with others about the meaning and the method of the vaccination. They tried to bear with the discomfort even though they disliked it and wanted to cry.When they could not endure it, they cried with pain. Seeing the syringe increased their anxiety. There were also individual differences in the strength of their reaction.Based on the infants' backgrounds and their behavior according to type, points relating to the care of infants during vaccination were enumerated as follows: 1) Child's determination to do his/her best. 2) Understand the infant's experience of pain and praise his/her endurance. 3) Consider methods of easing the pain. 4) Devise a method choosing the injection spot and for preparing the materials of the injection. 5) Individual assessment and correspondence.
著者
中込 さと子 柊中 智恵子 武田 祐子 佐々木 規子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究プロジェクトの目的は単一遺伝子疾患や染色体異常をもつ人と家族の自助グループ(以下、遺伝サポートグループ)と看護職が、個人、家族、社会の健康問題を解決するための協働方法、それによりどのような変化がおこるかを探ることである。7疾患のサポートグループから協力を得、患者家族が抱える課題について、サポートグループと看護師のコミュニケーションを図る企画を行った。看護ケアに仲間支援を導入することが有効である可能性が示唆された。サポートグループと協働すべき課題は、生活に伴う症状管理方法の改善、本人や家族が抱える価値変容を支えること、ケア負担の軽減と親きょうだい亡き後の第二の生活環境の整備であった。
著者
柊中 智恵子 中込 さと子 小野 ミツ 前田 ひとみ 武藤 香織 北川 小夜己 矢野 文佳 村上 理恵子 福田 ユカリ
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、遺伝性神経難病である家族性アミロイドポリニューロパチーに焦点を当て、患者・家族と看護職のニーズ調査をもとに、看護職に対する遺伝看護教育プログラムを開発することを目的として実施した。患者・家族のニーズ調査から、発症前遺伝子診断を受けて生きる人、発症者、家族といった立場の様々な苦悩や葛藤の様がわかった。また、看護職も遺伝性疾患ということで、対応に困難を感じていた。これらの結果に基づき、教育プログラムに盛り込む内容を検討した。