著者
泉水 りな子 中間 美砂子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.14-21, 2002-04-01 (Released:2017-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

家庭科と公民科の関連性を明らかにし,連携の方策を検討するため,家庭科および公民科教員の意見,教科教育学研究者の教育目標論,教科書キーワード,学習指導要領記述等の比較を行った。結果の概要は,次のとおりである。(1)教育目標については,(1)公民科教員の意見では,家庭科で目指している能力目標13項目のうち,公民科でも育成したい能力として,50%以上の者が,5項目をあげており,関連性が高い教科ととらえられている。(2)両教科の教育学研究者の資質目標には共通性がみられる。(3)学習指導要領で示されている資質目標は明確に異なる。(2)学習内容については,(1)両教科担当教員の意見はほぼ同傾向を示し,家族領域は家庭科で,経済領域は公民科で,福祉領域,消費領域は両教科でとされている。(2)教科書のキーワード出現頻度の比較では,家族領域のキーワードは,「家庭一般」での出現頻度のほうが高く,家庭科独自の領域といえる。福祉領域,消費領域のキーワードは,両科目間の出現頻度差が低く,重複部分が多い領域といえる。(3)学習指導要領では,かなり重複する部分がある。(3)学習方法については,(1)教科担当教員の意見では,家庭科教員のほうが体験的学習導入への意欲が高い。(2)学習指導要領では,両教科とも,体験的,学習を重視しているが,家庭科では,実験・実習を通した学習を,公民科では,資料を通した学習を重視するという点で異なっている。以上の結果から,家庭科と公民科目標,内容,方法の関連性が明らかとなり,今後の連携のあり方についての示唆をえることができた。稿を終えるにあたり,本調査にご協力くださった方々に厚くお礼申しあげます。なお,本研究は,1997年7月6日,日本家庭科教育学会第40回大会において発表したものを発展させ,加筆したものである。
著者
木村 範子 竹田 美知 正保 正惠 倉元 綾子 細江 容子 鈴木 真由子 永田 晴子 中間 美砂子 内藤 道子 山下 いづみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

今日の日本社会では、家族をめぐる問題は、虐待や暴力など複雑で多様となってきている。その打開のためには、人や物にかかわる「家族生活」のトータルな支援・教育と、地域のネットワークづくりが必要である。そのことは、日本のみならず、グローバル・ウェルビーイングの観点から,世界共通の家族問題の打開のために必要な視点である。本研究は、日本で生涯学習として「家族生活教育」を行うために「家族生活アドバイザー」の資格化を視野に、その養成のための研修講座のカリキュラム開発を行うことを目指して行われた基礎的研究である。
著者
中間 美砂子 中山 麻衣子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.95-110, 2000-02-29

家庭科男女共学履修がジェンダー観,家庭科観にどのような影響をもたらしたかを明らかにするため,本研究を行った。研究にあたっては,まず,1 家庭科とジェンダー観のかかわりに関する先行研究にあたり,ついで,2 家庭科男女共学履修制度導入による家庭科カリキュラムの変化について学習指導要領の目標,内容の変化及び教科書の人物画像をジェンダー視点から分析した。そのうえで,大学生を対象に,家庭科男女共学履修によるジェンダー観,家庭科観の変化についての調査を実施した。結果の概要は次の通りである。1 家庭科とジェンダー観に関する先行研究では,「女子必修の家庭科はジェンダーに基づく偏向を伴った教科であった」,「家庭科は,ジェンダーにかかわるテーマを学習題材としており,性平等意識を育てる教科としての特性を持つ」の2点が指摘されている。2 男女共学履修制導入により学習指導要領の目標には,「主体的」「家族」という語が新たに取り入れられ,内容には,高齢者の生活と福祉,消費生活と消費者としての自覚,生活情報の活用,青年期の生き方と結婚,生命の誕生,子どもの人間形成と親の役割が新たに取り入れられた。3 男女共学履修制導入により発行された教科書の人物画像をみると,男性画像,平等場面が増加し,伝統的場面が減少しており,平等意識を育てる役割の一端を担っていると考えられる。4 家庭科男女共学履修によるジェンダー観,家庭科観の変化についての調査結果の概要は次の通りである。(1) ジェンダー観水準は,女子の方が男子に比べて高水準で,家庭科の学習内容の重視度も高い。(2) 男子の共学履修グループは,履修なしグループよりもジェンダー観は高水準で,学習効果の認識は高く,新設項目についての評価が高い。(3) 女子の別学履修グループは,共学履修グループよりも,ジェンダー観は高水準であるが,学習効果の認識度は低い。(4) ジェンダー観水準が高いグループは,男女とも学習効果の認識は高く,新設項目をより重視している。男子の場合,育成する能力の重視度は高く,女子の場合,学習希望は高く,新設項目を重視している。