著者
大本 久美子 鈴木 真由子 タン ミッシェル
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

公正で持続可能な社会の形成者としての「消費者市民」を育成するために、リーガルリテラシーを育むことが重要であるという認識のもと、本研究では、リーガルリテラシーを育む消費者市民教育のカリキュラム開発を行い、教員養成のための大学授業シラバスと教材を提案した。海外の先駆的な取組の視察調査などから課題を把握し、子どもの発達段階に合わせた教育課題を明確にした。コンシューマー・リーガルリテラシーの道徳的要素を『配慮、思いやりによって自らの行動に責任を持つ』と『道徳、倫理、社会的正義の判断によって意思決定し、社会の一員として協働し社会参画できる』こととし、それらを育むことができる授業内容と教材を開発した。
著者
服部 晃次 鈴木 真由子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.105-105, 2011

<BR>【目的】<BR> 家庭科は、自分や家族の過去現在未来の生き方について考える「自分をみつめる」学習の機会が随所にあるという教科特性を持つ。しかし、授業の中でどこまで自己開示を求めるか、生徒たちが抱える問題の個別性やプライバシーへどう配慮するかなど、ある種の「やりにくさ」を感じている教員も少なくないと考える。<BR> そこで本研究では、中学校・高等学校家庭科教員の「自分をみつめる」学習とその中での自己開示への意識を明らかにし、そこに見られる課題を抽出することによって、「自分をみつめる」学習の展開の手がかりとすることを目的とする。<BR>【方法】<BR> 大阪府下の国立、公立、私立の中学校と高等学校731校の家庭科教員を対象に、郵送法による自記式質問紙調査を行った。調査期間は、2011年7~8月、有効回答数は190部、回収率は26.0%であった。調査の主な内容は、①家庭科学習の中で「やりにくい」と感じる内容とその理由について、②「自分をみつめる」学習の実施状況と重要性や配慮事項に関する意識について、③授業での生徒・教師の自己開示についての3点である。<BR>【結果及び考察】<BR> ①家庭科の中で最も「やりにくさ」を感じる内容を聞いたところ、家族(31.1%)、住生活(17.9%)が多かった。主な理由は、「複雑な家庭環境の子どもを傷つけてしまう恐れがある」、「家族の形が多様化している」、「正解不正解が無い」などが挙げられた。それ以外の内容に対する「やりにくさ」の理由についても、類似の記述がみられた。家庭科では、家族・住生活をはじめとする全ての内容について、多様な家庭環境の生徒や個々の問題を抱える生徒へのリスクを教師が感じていることが「やりにくさ」の原因の一つとなっていると推測できる。<BR> ②「自分をみつめる」学習を授業に取り入れている教員は、75.3%であった。実施時期は1学期の導入が多かった。内容は家族や保育が多く、「人生を展望する」、「ライフスタイルを考える」、「人生を振り返る」などの題材で行われていた。授業に取り入れていない教員は、「家庭環境の個人差」「時間数不足」「勉強不足」「道徳や総合でしている」等を理由に挙げていた。また、「自分をみつめる」学習の重要性については、「重要だと思う」「まあまあ重要だと思う」を合わせると96.2%であった。配慮についてはほとんどの教員が必要だとしており、配慮が必要な生徒としては、「父子母子家庭」「施設から通っている」「虐待されていた」等を挙げていた。具体的には、「お父さん」などの言葉を「保護者」と表現するといった教員の言葉遣いに関する配慮や、プリント記入などの時に「書くことを強要しない」、「開示しても良いかどうかを知っておく」等の授業の方法・準備の配慮が挙げられた。<BR> ③授業の中で「生育歴」「現在の家族」「将来」に対する生徒個々の考えをどの様に開示させるべきか、またはさせないべきかについて尋ねた。その結果、「生育歴」「現在の家族」については、約6割の教員が「教員しか見ない」と回答した。「将来」については意見が分かれたが、「授業で発表」が40.6%で最も多く、続いて「匿名にしてプリント配布」が29.1%、「教員しか見ない」が28.0%となった。過去、現在の自分に関しては自己開示させることに対して消極的だが、将来の自分に関して自己開示させることについては積極的な傾向が見られた。また、教員自身の自己開示について尋ねたところ、9割以上の教員がその必要性を認めていた。理由としては、「生き方の参考例の一つになる」「自己開示しにくい生徒に対して方法を示す」「自分ができないことを生徒には求められない」等が挙げられた。しかし、「教員の自己開示が生徒に与える影響が大きい」「教員にもプライバシーがある」など、自己開示の必要性を認めながらも教員自身の自己開示に抵抗を感じる記述があることも、「自分をみつめる」学習の課題の一つであるといえよう。<BR>
著者
奥谷 めぐみ 鈴木 真由子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第II部門 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-34, 2011-09-30

アニメやテレビゲーム,漫画,音楽,ファッションといった幼児期から青年期をターゲットとした子どもをとりまく消費文化は1980年代以降,顕著に発展した文化である。そこで,本研究では高度情報社会における消費文化の変遷や,これらのマーケティングや市場の動向,メディアツール,インターネットの発展がもたらす,子どもの消費文化との接触のあり方を生活課題の一つとして捉え検討することを目的とする。調査方法として,消費文化が発展し始めた1970年代から2000年代にかけて,消費文化に関する特徴的な事象,環境の変容を先行研究等から整理した。その結果,子どもをとりまく消費文化の時代的特徴が把握できた。1970年代後半から,子どもをふくめ大衆は同じ欲求をもって消費文化に関するモノ・サービスを消費してきた。1990年代以降,モノ・サービスの多様化,メディアの発展,価値観の多様化が生じ,消費文化においても細分化が生じていることが明らかになった。こうした消費文化の変遷や,メディアツールの変化といった子どもの周辺で起きている環境変化から,4つの生活課題を抽出した。まず,メディア,消費文化への没頭が挙げられる。次に,消費文化やサービスに関わっていない第三者には見えにくい,新しい価値観が生じている点である。さらに,SNSを中心とするインターネットコミュニケーションが宣伝としての役割を持ち始め,子どもを中心に強い影響を与えている可能性が指摘できる。最後に,消費の場面がバーチャル化したことで,金銭に対する価値が見えにくくなっている。そのため,従来とは異なる金銭教育の必要性があることが明らかになった。子どもをターゲットにした消費のなかで生じている問題は第三者から見えにくいものであり,子どもと共に解決の方向性を問い直し気づかせる必要性が不可欠であると考える。Japanese youth culture, animation and computer games, music, fashion, has expend remarkable since 1980s. The purpose of this paper is taking up influence of consumer culture around children, and marketing for young consumer as problems in daily life. So, based on precedence research, it is sorted out the change of consumer culture from 1970s when consumer culture start to expend to 2000s. The general public had same desire and expanded same materials and service on consumer culture from1970s to 1980s. But, diversification of materials, service and value, and development of media ware happened from 1990s. Four problems are picked up from change of consumer culture. First, children are absorbed in consumer culture and media. Second, value of material and service are change, outsiders of consumer culture or service can't understand these values. Third, social networking service functions as advertisement. And children who can't control desire and information are greatly influenced. Finally, people trade various materials and service on virtual. Therefore, it is necessary to focus on sense of the value of money.
著者
増田 啓子 古寺 浩 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子 田崎 裕美 吉本 敏子 村尾 勇之
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.63, 2003

【目的】学校教育法の一部改正に伴い、大学が文部科学相の認証を受けた認証評価機関による第三者評価を定期的に受けることが制度化された。実際の施行は平成16年度からで、当初は対象となる専門分野がある特定の分野に限られるものの、今後、様々な専門分野の教育・研究の質を個々にどのような認証評価機関が、どのような手続きにより、どのような基準によって評価するのか大変注目されるところである。本報告では、わが国における大学評価の全般的な現状をふまえながら、報告者らの研究グル-プがこれまでに明らかにしてきたアメリカ家政学会による認定活動に関する研究成果と、わが国においてすでに実施されている特定専門分野における認定活動における評価基準および、認定組織・手続きを比較・分析することにより、わが国で大学に対する専門分野別第三者評価が現実のものとなった場合の家政学分野における諸課題を見出すことを研究の目的とする。【方法】学校教育法の改正内容と特にその経緯を中教審などの公表資料(議事録など)から明らかにするとともに、アメリカ家政学会が発行している専門分野別基準認定手引書、日本技術者教育認定機構(JABEE)の同様な手引き・申請書式などから認定評価基準・認定組織・申請から認定取得に至る手続きを明らかにし、両者のそれを比較・分析する。【結果】比較した日米両組織が設定する認定評価基準は、教育プログラムの構造をはじめ細部にわたるもので、中教審の議論にもみられたように大学による自由な教育権との関係を明確にする必要がある。改名・改組という流れの中で、わが国の家政系学部・学科構成は多様化しており、特定専門職者育成に関わる分野に比して基準策定・適用が困難である。
著者
荒井 紀子 鈴木 真由子 綿引 伴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<br><br><br><br>【目的】<br>&nbsp; &nbsp;1980年代後半以降、学校の中でしか通用しない力を標準テスト等で測るのではなく、現実の生活の中で真に働く力を評価する方法論が米国を中心に模索されてきた。ウィギンス(Wiggins, G.)等により「真正の評価(Authentic assessment)」の概念が提示され、それ以降、「リアルな課題」に取り組ませるプロセスのなかで子どもを評価する試みが各国で施行されている。スウェーデンにおいても、2011年のシラバス改訂により、評価基準を明示化し、その到達に向けての学習の工夫が志向されている。本報告では、同国の家庭科の新シラバスにおける評価尺度を検討すると共に、評価方法として提示されている「真正の評価」の事例として、パフォーマンス評価をとりいれた学習事例を取り上げ、子どもの学習の実際と、学習構造の特徴について分析する。<br><br>【方法】<br>&nbsp;&nbsp; スウェーデンの2011年家庭科シラバスおよび関連文書、教師用解説書等について文献調査を行なった。また2014年10月に、ヨーテボリ市郊外の中学校において、「真正の評価」の方法論としてパフォーマンス評価を採用した授業を参観するとともに教師の面接調査を行った。加えて新シラバスおよび評価方法について、ヨーテボリ市、ストックホルム市およびウプサラ市の大学関係者と家庭科教師に、聴き取り調査を実施した。<br><br>【結果および考察】<br> &nbsp;&nbsp; スウェーデンでは、2011年に知識の獲得と定着、選択の自由の拡大、生徒の安全の確保の3点を促進する新教育法を制定し、新カリキュラムを導入した。大きな特徴として、学習の評価尺度をAからFまでの6段階(このうちA~Eが合格)で示し、評価を第6学年から開始することを定めるとともに、知識をより深く広く獲得するための方法として「真生の評価」の方法を提示している。家庭科については、2つのパフォーマンス評価の演題「持続可能なランチ」「タコスの夜」が開発され、それを活用することが推奨されている。<br> &nbsp;&nbsp; 今回参観した「持続可能なランチ」(9年生、6時間)の学習は、以下のような3段階構造をとっていた。1)「持続可能」をキーワードに、a.健康・栄養、b.価格や品質、c.環境への影響の3点(これらは生徒が生活の質について考えるうえで重要な家庭科シラバス全体を貫く観点)に配慮した献立を各自で考え、活動内容、道具・調理方法、時間行程を検討し計画を練る。(180分) 2)12名が調理実習者と観察者の6組のペアになり、実習者は自分で考えた献立のもとに、手順に沿って食材を調理し、料理を完成し、片付けまで全て1人で遂行する。観察者は終始そばで実習の様子を観察し、評価シートに結果を記入する。この役割は週毎に入れ替わる。(80分) 3)実習後、キーワードと3つの観点から自己の実習について省察し、観察者による評価シートも参考にしながら、改善点を考え自己評価を行う。(60分)<br>&nbsp;&nbsp; 全体的に、実習者の集中力と意欲の高さは際だっており、かつ楽しんで活動する様子が観察された。知識を理解しつつ、それをスキルに結びつけ、かつ試食という本番に向かう学習の構造であること、および本人の自由な発想が保証されていたことが、生徒の意欲ややりがいを刺激した要因と考えられる。また評価の視点が全員に通知され共有化されており、さらに、「健康」「経済」「環境」の3観点を目ざすことがどの程度できたかを生徒が省察的に自己評価することになっている。評価という行為が、生徒の学習の深化を促す契機となり得ているのは、こうした学習の構造によるところが大きいと考えられる。<br>&nbsp;&nbsp; なお、これらの授業が、実習時間の長さ、1クラスの人数の少なさ、機能的なシステムキッチンの整備などに支えられている点も無視できず、日本の家庭科の学習環境の問題がみえてくる。<br><br>&nbsp;&nbsp; パフォーマンス評価のもうひとつの演題「タコスの夜」の分析と、日本における「真生の評価」に関わる授業のさらなる開発が今後の課題である。<br><br>
著者
丸山 智彰 鈴木 真由子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.67, 2008

【目的】<BR> 家庭科における「福祉」は、特別な支援を必要とする社会的弱者のみならず、すべての生活者(個人・家族・コミュニティ)を対象にした広義の概念と考える。その場合、「福祉」をすべての領域に通低する"視点"として捉える必要があり、そのためには、福祉の視点を取り入れた授業が検討されなければならない。<BR> 我々は2007年7月、教員養成系大学における家庭科専攻学生に対し、「調理実習」の授業において、試食時に食事介助体験を導入し、学習の意義や可能性について検討した<SUP>1</SUP>。介助体験について自由記述で回答を求めた結果、食事を快適にする介助技術や被介助者に対する配慮等の記述が散見された。また、中高生が食事介助を体験することは、福祉の視点を身につけるために有意義であるとの指摘があった。<BR> そこで、本報告は、高等学校における調理実習の試食時に食事介助体験を導入する可能性について検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR> 大阪府立N高等学校における『家庭総合」の調理実習の試食時に食事介助体験を設定し、前後に自記式質問紙法調査を行った。<BR>1)事前調査<BR>1.調査期間:2007年10月<BR>2.調査対象:普通科2年生全クラス240名、回収数220票、有効回答数(有効回答率)203票(男子93名女子110名)(84.6%)<BR>3.調査項目:「食事介助の経験の有無」「食事介助に気をつける点」「高齢者のイメージ」等<BR>2)食事介助体験実習<BR>1.実習期間:2007年11月<BR>2.実施方法:介助役→被介助役→介助役をA、被介助役→介助役→被介助役をBとし、二人一組あるいは三人一組で実施<BR>3.メニュー:ロールパン、コーンポタージュ、サケのホイル焼き<BR>3)事後調査<BR>1.調査期間:食事介助体験実習と同日<BR>2.調査対象:回収数208票、有効回答数(有効回答率)206票(85.8%)<BR>3.調査項目:<BR>A「介助時の気持ち」「被介助時の気持ち」「被介助後の介助変化」等<BR>B「被介助時の気持ち」「被介助後の介助変化」「Aの介助変化」等<BR>【結果】<BR>・食事介助経験がある生徒は20名(9.9%)、被介助経験がある生徒は8名(3.9%)と少なかった。<BR>・高齢者について、ポジティブなイメージを持っている生徒75名(36.9%)に対して、ネガティブなイメージを持っている生徒は134名(66.0%)と3割以上多かった。なお、このうち両方のイメージを併記していた生徒も26名(12.8%)いた(重複カウント)。<BR>・「被介助時の気持ち」については、「食べにくい」「恥ずかしい」「自分で食べたい」「怖い」等の回答が多かった。<BR>・「被介助経験後の介助」は、被介助時に不快に感じたことを通じて「被介助者の経験をしたから」「自分がされて不安だったから」何らかの変化を伴ったとの回答がほとんどであった。<BR>・食事介助体験の感想には、「汁物は食べさせ難い(食べ難い)」等、介助技術に関する記述が多かったが、介助する側・される側の困難を体験し、相手の立場を思いやることの重要性の指摘も散見された。<BR>【引用文献】<BR><SUP>1</SUP>丸山智彰 鈴木真由子「調理実習の試食における食事介助体験導入の可能性~教員養成カリキュラムでの試みより~」生活文化研究 大阪教育大学 Vol.47 2007年(印刷中)
著者
國友 宏渉 江上 いすず 長谷川 昇 鈴木 真由子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.75-79, 1999-03-31 (Released:2019-07-01)

日々の生活習慣が健康に与える影響は大きいといわれる.誤った生活習慣は年齢に関わらず, 生活習慣病と呼ばれる厄介な病気につながることがある.このことは大学生の学生生活, とりわけ不規則な生活スタイルに陥りやすい学生にとっては重大な問題である.そこで本研究は, 学生の生活習慣と健康状態との関係に着目し, どのような生活習慣が健康に対してどれだけの影響力をもつのか, また各生活習慣要因の相対的な影響力の位置関係がいかにあるのかについて明らかにしようとした.本調査によって得られたデータを分析した結果, 学生生活において日常的かつ基本的な生活習慣, 特に食生活に関わる習慣が健康状態を大きく左右する要因として浮かび上がった.中でも, 「食事の規則性」, 「睡眠時間」, 「欠食」などの要因が相対的に大きな規定力をもって現れた.また, 毎日の食品摂取の在り方においても, 「清涼飲料」, 「インスタント麺」, 「菓子類」等の過剰摂取が健康状態にマイナスの因子として働いていることが示唆された.
著者
平野 順子 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.312, 2006

【目的】 近年の消費者トラブルの急増と悪質化に鑑み、一般の消費者よりも不利な立場にある高齢者の実態を把握するために実態調査を行った。本報では、高齢者が消費者トラブルに関する情報と一般的な情報を得る経路についての実態把握を行い、今後の高齢者に対する消費者教育のあり方について検討することを目的とした。【方法】 2005年1月に、全国の65歳以上の一般男女1350人に対して、訪問面接法によってアンケート調査を行った。有効回収率は77.6%であった。本調査は、平成16年度内閣府請負事業として実施されたものである。【結果】 _丸1_一般的な情報の入手経路として多かったのは、テレビ(男性95.4%、女性95.8%)、新聞(男性89.2%、女性81.8%)、友人・知人(男性41.0%、女性46.5%)であった。_丸2_消費者被害情報の入手経路として多かったのは、テレビ・ラジオ(男性91.0%、女性92.9%)、新聞(男性81.3%、女性65.9%)、家族・友人との会話(男性26.7%、女性38.8%)、自治体や自治会の広報(男性24.9%、女性21.4%)であった。_丸3_前述までの通り、高齢者の多くは積極的な入手経路によって情報を得るよりも、メディアや身近な人からの情報入手が多いことが分かった。とりわけ身近な人からの情報によって、消費者トラブルが自分の身近な問題であることを再認識するきっかけとなることが分かっている。今後、高齢者にとってより有効な情報伝達手段を使っての情報提供が期待される。
著者
増田 啓子 東 珠実 鈴木 真由子 吉本 敏子 古寺 浩 田崎 裕美 村尾 勇之
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1105-1113, 2000-12-15

本研究はアメリカの家政系学部がスコッツデール会議(1993)における名称変更の決議をどのように受け止め, 家政学についてどのような問題意識をもっているかを明らかにする事を目的とする. アメリカ家政系学部の部科長を村象に1995年9月にアンケート調査を実施した結果, スコッツデール会議で採択された新しい名称「Family and Consumer Sciences(FCS)」については, 支持する回答が61.0%を占め, それに伴い学部名称をFCSに変更する動きがみられた. さらに1998年の追跡調査によると, FCSを用いている大学は20校から46校に増加し, Home Economicsは60校から28校に減少した. アメリカ家政学の名称変更をめぐる背景には, プロフェッションの認識とそのアイデンティティをめぐる様々な問題に対し, 名称変更によってその状況を改善しようとする動きが見られた.
著者
木村 範子 竹田 美知 正保 正惠 倉元 綾子 細江 容子 鈴木 真由子 永田 晴子 中間 美砂子 内藤 道子 山下 いづみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

今日の日本社会では、家族をめぐる問題は、虐待や暴力など複雑で多様となってきている。その打開のためには、人や物にかかわる「家族生活」のトータルな支援・教育と、地域のネットワークづくりが必要である。そのことは、日本のみならず、グローバル・ウェルビーイングの観点から,世界共通の家族問題の打開のために必要な視点である。本研究は、日本で生涯学習として「家族生活教育」を行うために「家族生活アドバイザー」の資格化を視野に、その養成のための研修講座のカリキュラム開発を行うことを目指して行われた基礎的研究である。
著者
永田 智子 赤松 純子 榊原 典子 鈴木 真由子 鈴木 洋子 田中 宏子 山本 奈美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.問題の所在と研究の目的  家庭科教員を取り巻く現状は厳しい。小学校においては継続的に家庭科の実践研究を行う教員は少なく,家庭科授業の手本を示してくれる先輩教員や情報交換できる同僚が身近にいないことが多い。別の方法で小学校家庭科の授業者を支援する手立てが必要である。  小倉ら(2007)は,全国の小中学校における日々の理科授業の改善に役立てるため,優れた特徴をもつ理科授業をビデオ収録するとともに,その実践の何が優れているかを具体的に示すことによって,理科を指導する教師が参考にすることを目的とした研究を行った。本研究の基本的な発想は小倉らの研究に依拠する。つまり家庭科授業をビデオ収録し,その指導案を集めるだけでなく,家庭科教育の有識者が,その授業の何が優れており,何が課題なのかを具体的に示すことによって,家庭科の授業実施や改善を支援できると考えた。  ただし,小倉らの研究では,授業ビデオと報告書に掲載された評価コメントを,視聴者自身が対応付けながら視聴しなければならない点で不自由がある。そこで,共有された授業風景動画の特定場面と討論中の発言内容の対応を明示化する動画共有システムVISCO(小川ほか2009)を利用することにした。VISCOではコメントを具体的な映像場面に直接付与すると,吹き出しのように表示することなどが可能になるため,視聴しやすくなることが期待できる。  そこで,小学校家庭科授業の実施・改善を支援することを目指し,優れた点や課題点などのコメントを授業ビデオとともに閲覧することのできる動画共有システムと家庭科授業ビデオを一つのパッケージとして開発することを本研究の目的とした。 2.パッケージの開発手順と特徴  今回開発したパッケージには,VISCOおよび7本の小学校家庭科授業の動画ファイル,各授業の指導案が含まれている。   VISCOはWindows7を推奨環境とするシステムで,動画の映像場面にコメントを付与すると,インターネットを通じてコメント情報がサーバに蓄積される。視聴時には,インターネットを通じて,蓄積された複数人のコメント情報を動画上に吹き出しの様に重ねて表示させることができる。またコメントはリスト表示され,そこからコメントを挿入した場面に動画を移動させることもできる。  小学校家庭科授業およびその指導案は日本家庭科教育学会近畿地区会の有志によって収集・編集された。授業は学習内容A~Dから各1本以上とし(A=1本,B=2本,C=3本,D=1本),題材(テーマ)は重ならないように調整した。授業は学校長の許諾を得た上で撮影し,かつ子どもの名前や顔にはモザイク加工を施した。音声が聞き取りにくい場面にはテロップを付け,授業内容がわかる程度の長さにカットした(最短約16分,最長約38分,平均約24分)。  このように編集された7本の授業ビデオに,教員養成系大学・学部で家庭科教育に携わる研究者7名が分担して,VISCOを使って優れた点や課題・助言,解説等のコメントを付与した。1本当たりのコメント者数は3名,コメント数は平均48.3±11.5件であった。 3.今後の課題 小学校と同様の手続きで中学校・高等学校家庭科教育のパッケージを開発するとともに,研究者の付与したコメントの妥当性や有効性を検証することが今後の課題である。 本研究はJSPS科研費 24531124の助成を受けたものである。参考文献 小倉康ほか(2007)優れた小中学校理科授業構成要素に関する授業ビデオ分析とその教師教育への適用,平成 15 年度~18 年度科学研究費補助金 基盤研究(A)(1) 研究成果報告書 小川修史・小川弘・掛川淳一・石田翼・森広浩一郎(2009)協調的授業改善を支援するための動画共有システムVISCO 開発に向けた実践的検討,日本教育工学会論文誌,Vol.33, Suppl., 101-104
著者
奥谷 めぐみ 鈴木 真由子 大本 久美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>【目的】</b><b></b> <br>&nbsp;&nbsp;発表者は日本家庭科教育学会第58回において、情報社会における生活課題に焦点を当てた中学校家庭科の授業開発・実践の成果を報告した。デジタルコンテンツの売買に焦点を当て、実物との契約の仕組みの違いを扱うことで、消費者としての自覚、権利意識の育成を図ることができた。 しかし、生徒の生活経験や家庭環境によっては、デジタルコンテンツを身近な商品として捉えられず、一部の生徒にとって理解が困難な題材となってしまったことが課題として挙げられた。<br> &nbsp;&nbsp;そこで、デジタルコンテンツ購入のプロセスを動画化することが有効であると考えた。本研究では、ヴァーチャルな商品との関わり方を考え、市場における事業者側の意図について理解を促す動画教材の開発・評価を目的とする。 <br> <br> <b>【方法】</b><b><br></b> &nbsp;&nbsp;K中学校の中学生第2学年118名を対象に、全2時間分の授業実践を行った。1時間目を平成27年11月24日(火)に、2時間目を12月9日(水)、12月15日(火)の2日間に分けて実施した。<br>&nbsp;&nbsp; 分析対象は授業前アンケート(平成27年11月)と、授業時のワークシート、グループワークの結果、授業後アンケート(平成28年2月)である。 授業のワークシートからは、動画から読み取れることや課題を話し合った結果を、事前と事後からは普段の消費行動と、デジタルコンテンツへの意識についての変容(回収数109名/回収率92.4%)について分析することとした。結果分析は、Microsoft Excel2013及びIBM SPSS statistic22.0を用い、アンケート及びワークシートの記述内容を分析した。<br> <br> <b>【結果】</b><b><br> </b>(1)授業前後の消費行動とデジタルコンテンツに対する意識の変化<br> &nbsp;&nbsp;デジタルコンテンツに対する意識と日頃の消費行動に関する9項目の質問を設定し、「全くそう思わない~とてもそう思う」の5段階で回答を求めた。授業前後において同一の質問を行い、t検定によって平均値を比較した。うち6項目に有意差が見られた。特に、顕著(p<0.001)に差が見られたのは「商品やサービスを購入する時、作っている人のことを考える」や「商品やサービスについての不安や疑問があった時、企業や消費生活センターに相談することができる」といった項目であることから、事業者と消費者との関わりに視野を広げ、事業者側の意図を知る必要性を認識できたと考える。<br>&nbsp;&nbsp;また、「デジタルコンテンツにお金をかけることは良くないことだ」も肯定的な方向で変容があった。時間的、経済的に適切な情報技術との付き合い方を伝えるという点では、デジタルコンテンツ=悪としない、設問や内容に工夫が必要であったと考える。 <br> <br> (2)動画教材から読み取られた特色と授業の評価<br>&nbsp;&nbsp; ワークシートには、中学生に高額請求を受けた事例を挙げ、事例のみを聞いた状態でのトラブルの原因と、動画を見てから新たに考えた原因の2つの記述を求めた。事例のみの原因は「友人との競争意識」、「現金を使っている感覚がなかったから」等、消費者側の経験や感情に則した記述がみられた。動画からは「規約や確認画面、ペアレンタルコントロールの確認」や「ランクアップやゲームオーバー等プレイを続けさせたくなる仕組み」に関する記述がみられた。利用者側の問題だけではなく、サービスそのものにお金を掛けたくなる仕組みがあることに気付いていた。<br>&nbsp;&nbsp; また、授業での説明は分かりやすいものだった88.1%(N=109)、動画は見やすいものだった89.8%(N=108)、動画は自分の生活に身近なものだった85.1%(N=108)と、授業理解に関する肯定的な評価は概ね8割を超え、動画教材が理解を促す一助になったことが伺える。 <br>&nbsp; &nbsp;今後は、動画のポイント、問いかけ、解説等を加え、どのような教師でも利用でき、生徒の理解を促す仕掛けを持った動画教材に改善する必要がある。<br>&nbsp;&nbsp;本研究は、JSPS科研費26381267の助成を受けたものである。&nbsp;