- 著者
-
丸山 恭司
- 出版者
- 日本監査研究学会
- 雑誌
- 現代監査 (ISSN:18832377)
- 巻号頁・発行日
- vol.2020, no.30, pp.115-126, 2020-03-31 (Released:2021-02-27)
- 参考文献数
- 19
地方自治法が改正され,地方自治体の監査委員監査において監査基準を設定することが明文化された。しかし,従来の監査委員監査では,各自治体において策定した監査基準で監査が行われており,改正後においても,監査委員自身が,自らの行為規範である監査基準を設定するとされている。これまでの監査基準と地方自治法改正で総務省が示している監査基準には大きな相違点がある。監査基準の運用状況や地方自治法改正前に市が準拠する都市監査基準の策定経緯を踏まえると,改正法により策定される監査基準では,監査人の懐疑心や独立性が強調されるべきである。また,専門性が十分でない小規模自治体の監査組織などを前提としたとき,例えば,行政監査の実施基準などについて,さらなる具体化を行う必要がある。町村などの小規模自治体であっても,公金の説明責任は,自治体の規模とは関係なく必要とされる。監査の品質確保は,すべての自治体において共通の課題である。監査品質の最低限について共通認識の醸成が今後の課題となる。