著者
梶 光一 吉田 剛司 久保 麦野 伊吾田 宏正 永田 純子 上野 真由美 山村 光司 竹下 和貴
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ニホンジカの島嶼化プロセスとメカニズムを解明するために、島に導入されたニホンジカの生態・形態・遺伝の年代的変化を調べた。餌資源化で体の小型化が生じ初産齢が上昇したが、間引きによって体重の増加と初産年齢の低下が生じた。餌の変化に対応して第一大臼歯の摩耗速度は初回の崩壊後に早まった。一方、臼歯列サイズは、減少から増加に転じた。有効個体群サイズおよび遺伝的多様性も一度減少したが、その後それぞれ安定および増加に転じた。以上は、餌資源制限下で形態・遺伝に対して正の自然選択が働いた可能性を示唆している。
著者
蔦谷 匠 久保 麦野 三河内 彰子
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.55-62, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
16

人類学・先史考古学の教育普及において博物館展示は特に有効だが,展示解説には常にさまざまな制約があり,さらに興味を抱いた来館者に対して効果的に展示を補足する工夫が求められる。既存のウェブサービスを活用すれば,大きなコストやスキルを必要とせずに,博物館展示を補足する解説システムを構築できる。本稿では,東京大学総合研究博物館の2009–2013年の人類学・先史考古学を扱った常設展示「キュラトリアル・グラフィティ―学術標本の表現」において実施した,Twitterやブログを利用した展示解説の取り組みについて報告する。2011年9月から2013年5月までの21ヶ月間に,ふたつのシステムを比較し,利用者にアンケートをとって解析した。その結果,以下の3点が明らかになった。(1)来館者の所持する携帯電話端末から閲覧できる展示解説は,多数の来館者から利用を希望されていたものの,モバイル通信ネットワーク経由で接続することを前提としたシステムでは,提供する情報量を絞り,軽量性を重視することも重要である。(2)2011–2013年時点の状況として,10代20代の若い世代の利用率が高く(それぞれ17%,24%)60代以降の利用率が低かった(7%以下)。(3)来館者のニーズは多様であり,どのような範囲のニーズに応えることを目指しているのかを明確にしていく必要がある。