著者
久保田 清 張 戈 羽倉 義雄
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
生物生産学研究 (ISSN:1341691X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.135-143, 1993-12

各種食品のクッキング、殺菌など食品を各種変換、処理する装置を設計し、制御化を行っていくためには、食品のクッキングなど変換、処理する非等温実験を行って、得られる実験データからアレニウス式における速度パラメータを設定していくことが必要になることがある。これまでにジャガイモのクッキング速度式の設定を例として、非線形最小二乗法を用いる方法(久保田ほか, 1981, 1988)と、簡便な手法を用いる方法(岡崎ほか, 1991, 1992, 張ほか, 1993-B)とを用いる研究を行ってきた。本研究では、これまでに示してきた簡便な手法について比較検討を行った。本研究で提案した改良したクッキング値を用いる方法は、簡便な事法の一方法としてクッキング値を用いるこれまでに利用されてきている方法よりも有用であった。岡崎により提案された修正クッキング時間を用いる方法(岡崎ほか, 1992)も有用な方法であった。In order to design and to control various food transforming apparatuses such as for the chemical reactions, cooking, sterilization and so on of food materials, it is necessary to determine the Arrhenius' rate parameters from the non-isothermal experimental data of cooking and so on of food. In previous papers, we have studied the cooking rate equations of potato by various methods such as non-linear least square method (KUBOTA et al., 1981, 1988) and simple methods (OKAZAKI et al., 1991, 1992, ZHANG et al., 1993-B). In this paper, we investigated the determination of the rate parameters in non-isothermal processes by using simple methods proposed in previous papers. The modifyed cook value method in this paper was useful for finding the rate parameters in cooking rate equations. The corrected cooking time method (OKAZAKI et al., 1992) was useful too as simple method.
著者
土井 悦四郎 小林 猛 久保田 清 河村 幸雄 上野川 修一 松野 隆一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究班は2グループよりなる。1のグループは、化学工学的手法を用いて研究を行い、2のグループは、分子論的手法を用いて、研究し、両者の討論により研究を進めてきた。1のグループは、食品のマイクロ波加熱を、速度論的に解析する手法を開発し、エクストルージョンクッキング、高周波処理による水分収着挙動を熱力学関数による解析を行った(久保田)。高度不飽和脂肪酸の包括、粉末化による酸化抑制効果を包括剤としてマルトデキストリン、プルラン、カゼインナトリウウム、及びゼラチンを使用し、酸素透過速度により評価した。そして拡散速度が、膜の含水率に依存する事を見いだした(松野)水/油/乳化剤の三成分よりなるW/O/W型エマルシヨンについて分散小胞粒子の水透過性、ゼーター電位に及ぼす小糖類の影響を詳細に調べた(松本)。2のグループは、モノクローナル抗体を用いて、β-ラクトグロブリンの変性構造の中間状態における立体配置を検出することに成功した(上野川)。α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンの混合系あるいは他のタンパク質の加熱ゲルの構造と、ゲル形成機構を明らかにした。大豆タンパク質の加工特性並びに生理機能(抗高血圧症)の分子機構を検討した(河村)。卵白アルブミン、血清アルブミン、リゾチームなどの各種食品タンパク質の加熱ゲル形成過程を詳細に検討し、普遍性のあるゲル網目構造の形成機構に関するモデルを構築し、その妥当性を証明した(土井、中村)。1と2のグループの結果を総合して食品物性の分子論的知見と化学工学的手法による結果の矛盾点を討論し、食品物性研究の新しい方向を見いだした。以上の結果は今後のわが国の食品科学研究にたいして新しい方向を与え、食品製造、加工の実用面にも大いに貢献するものである。