著者
久保田 貢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.130-142, 2017-06-30 (Released:2018-04-27)
参考文献数
64

主権者とは国民主権の原理を採用する憲法によって定義づけられる。しかし教育現場は憲法と「断絶」し、主権者教育の歴史も忘れられている。永井憲一は主権者教育権論を提起した。主権者教育論は、他にも1950年代後半から日教組周辺の議論の中でみられ、歴教協などで深められる。いま国家が主権者教育の推進を図るが、これは新たな排除をもたらす。文化的自治のルートの回復と、教育現場の当事者たちによる、より直接的な協議の場の構築が課題となる。
著者
久保田 貢
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.467-478, 2007-12

大学の教育学研究者が、教育基本法「改正」をはじめ新自由主義的教育改革に、加担した責任があるのではないか。「教員養成GP」などの競争的資金は新自由主義的教育改革の一環である。これを獲得することは、「全体の奉仕者性」を見失い、教育の不平等をもたらしている。教育政策への批判的研究を封じ込まれることにもなる。大学と教育委員会との連携にも問題がある。東京教師養成塾や名古屋市スクールボランティア制度のように、疑問の多い企画に対して、大学はこれを抑止するどころか学生を送り出している。自分の大学からの教員採用数を増やしたいがために、教育委員会との連携が一線を越えたものとなってしまっている。このままでは、かつて教育学者が自らの戦争責任を深く反省したのと同じように、いつか自らの責任を問い直すことになるのではないか。平和のための科学とは何か、「市民社会」に対する大学の教育・研究の責任とは何かを再考すべきである。
著者
久保田 貢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.130-142, 2017

<p> 主権者とは国民主権の原理を採用する憲法によって定義づけられる。しかし教育現場は憲法と「断絶」し、主権者教育の歴史も忘れられている。永井憲一は主権者教育権論を提起した。主権者教育論は、他にも1950年代後半から日教組周辺の議論の中でみられ、歴教協などで深められる。いま国家が主権者教育の推進を図るが、これは新たな排除をもたらす。文化的自治のルートの回復と、教育現場の当事者たちによる、より直接的な協議の場の構築が課題となる。</p>
著者
子安 潤 久保田 貢
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.9-16, 2000-03-29

1950年代末より積極的に展開された「主権者教育論」は,その初期の頃,「国家の一員」におしとどめようとする教育内容が,「国家の教育権」のもとに強制されようとしていたことに抗し,「国民」を「主権者」と位置付け,次代の主権者を育てようと提起した点で,意義は大きい。しかし,「国民」に限定した点や,子ども自身が権利行使主体としてどのような行動ができ,あるいはその行動能力を育むのか,といった考察が乏しかった点など,問題点も残されていた。