著者
亀井 昌代 桑島 秀 片桐 克則 平海 晴一 佐藤 宏昭 小田島 葉子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.580-585, 2020-07-20 (Released:2020-08-06)
参考文献数
13

集音器はあくまで「家電製品」として販売されており, 管理医療機器である補聴器とは異なる. われわれは, 補聴器2機種と通信販売されている集音器2機種の4機種について周波数特性を測定し, 20~22歳の若年者と41~55歳の壮年者の健聴被験者に対して客観評価, 印象評価について検討した. その結果, 集音器の周波数特性は, 語音聴取に必要な特性ではなく, リニア増幅で出力も 100dB SPL を超えるため短時間の会話でも聴取時間によっては騒音性難聴の危険があることが分かった. 補聴器の周波数特性は各種聴力検査の結果を基に調整を行い, また出力制限は症例に応じて調整可能で騒音性難聴の危険はない. 雑音下語音明瞭度は, 補聴器が集音器に比較し有意に高値であったが, 印象評価では集音器が良い傾向であった. したがって, 補聴器は印象評価が集音器に比較し低い傾向があるが, 十分な調整と補聴リハビリテーションをすることにより聞き取れ, 集音器は聞き心地がよく聞こえた感じはあるが聞き取れているわけではないことが分かった.
著者
亀井 昌代 佐藤 宏昭 上澤 梨紗 米本 清 小田島 葉子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.308-314, 2021-08-30 (Released:2021-09-22)
参考文献数
14

要旨: 補聴器が音声を実質的にどれだけ増幅しているか測定する方法として2015年に JIS より「音声に近い試験信号による補聴器の信号処理特性の測定方法」が発行された。我々は, 4機種の補聴器に国際音声試験信号 (以下 ISTS) を提示したときの長時間平均音声スペクトル (以下 LTASS) やパーセンタイル音圧レベルを測定算出し, 種々の機能を on や off の条件で比較検討した。また, 難聴症例50例を対象として装用している補聴器の LTASS やパーセンタイル音圧レベルを測定しその結果と, 補聴器適合検査結果と比較検討した。一般的に補聴器の特性は機能を on と off の条件で同じであることが望ましいが, 本研究の結果では補聴器メーカによっては差がみられることがわかった。また難聴症例の中には, 補聴器適合検査結果と ISTS の測定結果との間に乖離のある症例もみられた。しかし, この測定方法 (分析方法) は補聴器を装用している条件で分析でき, その特性に会話音域が十分含まれているかの判断材料となると考えられた。
著者
武田 篤 村井 盛子 浅野 義一 亀井 昌代 村井 和夫
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.258-265, 1993-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

難聴児がその同胞にどのような影響を及ぼしているかを検討するために, 当言語治療室で聴能訓練を行った52例にアンケートを実施した。 回答のあった47例の内17例 (36.2%) に, 腹痛, チック, 足痛, 吃音, 過食, 万引きなどの神経症的発症がみられた。 これらの予後は, 1年以内に改善ないし改善傾向を示すものが多いが, 3年以上かかるものや不変例もみられた。 しかし, これらの症状は祖父母同居例に発症が少なく, また発症後スキンシップを図ることにより症状が改善する傾向を示したことから, ともすれば難聴児にばかり親の目がいき, その同胞をなおざりにしてしまうことによる「愛情欲求不満」が関与していると推定された。 難聴児の訓練, 指導にあたっては, その同胞に対しても十分な配慮を行うべきと思われた。