著者
水川 知子 水川 敦裕 松岡 るみ子 佐藤 宏昭 小林 有美子 村井 盛子 宍戸 潔 草野 英昭
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.364-371, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
27

過去29年間に当科を受診した小児のムンプス難聴49例中,厚生省特定疾患高度難聴調査研究班の作成した診断基準(1987)に基づいて診断した確実例37例を対象として,性差,両耳性,発症年齢,耳下腺腫脹から難聴発現までの日数,前庭症状,初診時聴力検査,治療,治療後聴力検査成績につき検討した。性差は男性20例,女性17例であり,一側性35例(95%),両側性 2 例(5%)であった。耳下腺腫脹から難聴発現までの日数は,耳下腺腫脹の 1 日前~16日後までで,平均6.6日であった。初診時聴力検査では,37例中32例が重度難聴あるいは聾であり,治療にもかかわらず 1 例を除く36例では聴力の改善がみられなかった。当科を受診したムンプス難聴患者数の経時的な増減は,全国のムンプスの流行の時機とよく一致していた。従来の報告と同様,今回の検討でもムンプス難聴の予後は不良であり,対策としては早期の予防接種の定期化が重要である。同時にムンプス難聴の啓蒙活動,小児科医との連携,ムンプスワクチンの質の向上が必要と考えられた。
著者
亀井 昌代 桑島 秀 片桐 克則 平海 晴一 佐藤 宏昭 小田島 葉子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.580-585, 2020-07-20 (Released:2020-08-06)
参考文献数
13

集音器はあくまで「家電製品」として販売されており, 管理医療機器である補聴器とは異なる. われわれは, 補聴器2機種と通信販売されている集音器2機種の4機種について周波数特性を測定し, 20~22歳の若年者と41~55歳の壮年者の健聴被験者に対して客観評価, 印象評価について検討した. その結果, 集音器の周波数特性は, 語音聴取に必要な特性ではなく, リニア増幅で出力も 100dB SPL を超えるため短時間の会話でも聴取時間によっては騒音性難聴の危険があることが分かった. 補聴器の周波数特性は各種聴力検査の結果を基に調整を行い, また出力制限は症例に応じて調整可能で騒音性難聴の危険はない. 雑音下語音明瞭度は, 補聴器が集音器に比較し有意に高値であったが, 印象評価では集音器が良い傾向であった. したがって, 補聴器は印象評価が集音器に比較し低い傾向があるが, 十分な調整と補聴リハビリテーションをすることにより聞き取れ, 集音器は聞き心地がよく聞こえた感じはあるが聞き取れているわけではないことが分かった.
著者
佐藤 宏昭
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.241-250, 2010 (Released:2010-09-28)
参考文献数
78
被引用文献数
6 1

急性低音障害型難聴 (ALHL) が突発性難聴と異なる疾患として認知されるようになって30年が経過した。2000年には厚生労働省急性高度難聴に関する調査研究班により本疾患の診断基準 (試案) が設けられ, この基準に基づく多くの報告がなされてきた。本総説では, ALHLの問題点として, 診断基準, 難治例, 治療薬剤について取り上げた。診断基準では高音部に加齢による難聴を有する例を準確実例として診断基準に加える必要があること, およびALHLの反復, 再発例とメニエール病非定形例 (蝸牛型) の名称の問題について述べた。長期的にみるとALHLは反復, 再発例やメニエール病への移行例が少なくなく, 少数ながら進行性の感音難聴をきたす例もみられ, この中には稀であるが低音障害型感音難聴で発症する聴神経腫瘍もあり注意を要する。また, ステロイドやイソソルビドなど現在使われている薬剤の有効性に関しても, 十分なエビデンスが得られていない点が問題点といえる。
著者
亀井 昌代 佐藤 宏昭 上澤 梨紗 米本 清 小田島 葉子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.308-314, 2021-08-30 (Released:2021-09-22)
参考文献数
14

要旨: 補聴器が音声を実質的にどれだけ増幅しているか測定する方法として2015年に JIS より「音声に近い試験信号による補聴器の信号処理特性の測定方法」が発行された。我々は, 4機種の補聴器に国際音声試験信号 (以下 ISTS) を提示したときの長時間平均音声スペクトル (以下 LTASS) やパーセンタイル音圧レベルを測定算出し, 種々の機能を on や off の条件で比較検討した。また, 難聴症例50例を対象として装用している補聴器の LTASS やパーセンタイル音圧レベルを測定しその結果と, 補聴器適合検査結果と比較検討した。一般的に補聴器の特性は機能を on と off の条件で同じであることが望ましいが, 本研究の結果では補聴器メーカによっては差がみられることがわかった。また難聴症例の中には, 補聴器適合検査結果と ISTS の測定結果との間に乖離のある症例もみられた。しかし, この測定方法 (分析方法) は補聴器を装用している条件で分析でき, その特性に会話音域が十分含まれているかの判断材料となると考えられた。
著者
佐藤 宏昭
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.188-193, 2018-06-30 (Released:2018-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Acute low-tone sensorineural hearing loss (ALHL) is the most common among the causes of acute sensorineural hearing loss. It is well known that some cases of ALHL eventually develop typical or atypical Meniere's disease. Recently, gadolinium-enhanced inner ear MRI has revealed that endolymphatic hydrops is frequently seen not only in Meniere's disease, including the atypical type, but also in cases of ALHL. Therefore, it can be said that one of the fundamental differences between ALHL and Meniere's disease is whether the condition is episodic or not. We propose to conduct a re-evaluation in the future of the classification of the causes of primary endolymphatic hydrops, such as ALHL and Meniere's disease, by gadolinium-enhanced inner ear MRI, as proposed by Gürkov.
著者
佐藤 宏昭 中村 一 本庄 巖 藤田 明彦 高橋 晴雄 林 正彦
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.1383-1387, 1988-09-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
10
被引用文献数
2 7

The clinical usefulness of Tsumura-Saireito, which was judged by tympanoaudiometric tests, was compared with that of cepharanthin in 64 ears of 42 children with otitis media with effusion. The trial was a randomized controlled study.The efficacy rate for the 32 ears treated with Tsumura-Saireito was 43.8% and that for the 32 ears treated with Cepharanthin was 18.8%; the difference was significant (p<0.05). No side effects were observed in either group.These results indicate that Tsumura-Saireito is more effective in children with otitis media with effusion than Cepharanthin.
著者
小林 有美子 佐藤 宏昭 岩井 詔子 村井 盛子 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.192-198, 2010 (Released:2010-07-15)
参考文献数
16

今回我々は, 1997年から2007年までの間に岩手医科大学耳鼻咽喉科小児難聴外来を受診した, 明らかな外因のない両側感音難聴患者64例を対象とし, GJB2 変異, SLC26A4 変異, ミトコンドリアA1555G変異について解析を行った結果と, それ以前に本人及び家族の聴力検査, オージオグラムの特徴などから遺伝性難聴と診断されていた例と比較検討し, 遺伝性難聴の頻度がどの程度変化したのか, またそのオージオグラムの特徴について検討を行った。両側感音難聴64例のうち, 難聴の病因と考えられる遺伝子変異が見つかったのは11例 (17.2%) であった (GJB2 変異9例, SLC26A4 2例)。遺伝性難聴の頻度は遺伝子検査以外の検査から診断した例に遺伝子検査で確認された例を加えることによって, 全体の45.3%となった。遺伝子変異例のオージオグラムの特徴は, その左右対称性などこれまでに知られている遺伝性難聴の特徴と一致することが多いことがわかった。
著者
岩崎 聡 宇佐美 真一 髙橋 晴雄 東野 哲也 土井 勝美 佐藤 宏昭 熊川 孝三 内藤 泰 羽藤 直人 南 修司郎
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.149-155, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

平成28年2月下旬に日本耳鼻咽喉科学会に登録している人工内耳実施施設109施設を対象に日本耳科学会人工聴覚器ワーキングループによるアンケート調査を実施した結果を報告する。85%の施設で平均聴力90dB未満の患者が人工内耳手術を希望されていた。48%の施設で一側の平均聴力90dB未満の患者に人工内耳手術を行っていた。82%の施設が1998年の適応基準の改訂が必要と考えていた。人工内耳手術を行った最も軽い術側の平均聴力レベルは91dB以上が20. 7%、81〜90dBが51. 7%、71〜 80dBが14. 9%であった。93%の施設で適応決定に語音明瞭度も重要と考えていた。67%の施設が両側人工内耳を実施したことがあった。本アンケート調査結果を踏まえて、成人人工内耳適応基準改訂が必要と考えられた。
著者
村井 紀彦 佐藤 宏昭
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.909-912, 1994-07-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

A 42-year-old man was referred to our hospital because of left nasal obstruction. Anterior rhinoscopy disclosed a mass in the left nostril attached to the nasal septum. CT scanning showed a well-demarcated soft tissue density mass in the anterior part of the left nasal cavity. Biopsy revealed that the mass comprised spindle cells without atypia. Under local anesthesia the tumor was removed by the transnasal approach. The histopathological diagnosis was neurilemmoma.
著者
西村 宏子 山本 悦生 山内 盛雄 岩永 迪孝 藤田 佳代子 岩崎 博 佐藤 宏昭 竹内 俊二 鶴原 秀晃
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2special, pp.328-337, 1983 (Released:2011-11-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1

昭和52年1月から昭和57年9月までの6年9ヵ月間, 京大病院耳鼻咽喉科を訪れた顔神麻痺患者662名について統計的観察を行い以下の結果が得られた.(1) 顔神麻痺患者は, 外来新患数の1.8%を占めていた.(2) 年度別発生件数では, 各年ともベル麻痺が1番多く, 62.0~80.5%を占め, その他の頻度はまちまちであった.(3) 診断別分類では, ベル麻痺が1番多く, 447例 (67.5%), 以下, ハント症候群59例 (8.9%), 手術損傷性45例 (6.8%), 頭部外傷性45例 (6.8%), 先天性23例 (3.5%), 耳炎性15例 (2.3%), 中枢性6例 (0.9%), 側頭骨外疾患4例 (0.6%), 聴神経腫瘍2例 (0.3%), その他16例 (2.4%) であった.(4) ベル麻痺, ハント症候群における男女の差は著明でなかった.(5) ベル麻痺, ハント症候群とも左側にわずかに多かった.(6) ベル麻痺, ハント症候群の月別発生頻度は, 前者は11月に少なくなっている他は著明な差は見られなかった. 後者も季節的な一定の結論を出すのは困難であった.(7) ベル麻痺, ハント症候群とも青壮年が多く罹患していた.(8) 再発性麻痺は40例あり, 一側反復性麻痺14例, 両側交代性麻痺25例, 両側同時性麻痺1例を含んでいた.(9) ウイルス感染については, 検索を行った73例のうち, 感染ベルは21.3%で, ハント症候群では75%に帯状疱疹ウィルスに感染が認められた.