著者
中野 廣一 結城 真理子 久保 由紀子 亀谷 哲也 小豆島 正典 坂巻 公男
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.100-105, 1998-08-24 (Released:2017-06-05)
参考文献数
14

The upward curving of the inferior border of the mandible anterior to the mandibular angle is known as the antegonial notch. Previous studies suggest that antegonial notch development is dependent on the growth of the mandibular condyle and the mandibular ramus, and the mandibular angle’s attachment to the superficial layer of masseter muscle and medial pterygiod muscle.The functions of the muscle group of the upper hyoid bone for opening movement are known to influence maxillofacial growth which is also affected by the position of the hyoid bone group and the mandibular shape. We assume that antegonial notch variables relate to the variance in the position of the hyoid bone. The aim of this paper is to determine possible associations between the antegonial notch’s depth and maxillofacial morphology which includes the mandible and the position of the hyoid bone.This study was based on 31 adult female subjects with a mean age of 23 years and 5 months (S. D., 1 year,2 months). Lateral roentgenocephalograms were taken to study the depth of the antegonial notch, facial shape, and the position of the hyoid bone. Simple correlation analysis was used to assess the cephalometric variables.In subjects with a deep antegonial notch, point B was significantly positioned to the posterior position (p<0.05), the ramus height was shorter (p<0.05), the mandibular plane angle was larger (p<0.05), the lower facial height was longer (p<0.01), and the angle between the mandibular plane and the hyoid bone was larger (p<0.01).This suggests that the depth of the antegonial notch was affected not only by mandibular shape and size but also by the position of the hyoid bone.
著者
井上 直彦 郭 敬恵 伊藤 学而 亀谷 哲也
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.90-97, 1981 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17

歯と顎骨の不調和 (discrepancy) の, 齲蝕に対する病因性を検討する目的から, いくつかの時代に属する日本人古人骨について, 齲蝕の調査を行った。そのうち, 今回は主として後期縄文時代における齲蝕の実態について報告し, すでに発表した鎌倉時代, および厚生省による1975年の実態調査の結果と対比して考察した。齲蝕有病者率からみるかぎり, 縄文時代の齲蝕は, 鎌倉時代よりも少く, 現代よりはるかに少いが, 齲歯率, 喪失歯率, 重症度別分布などからは, むしろ現代人に近い商い頻度と, 重症度をもっていたことが知られた。これに対して, 鎌倉時代は, 日本人が齲蝕に悩まされることが最も少なかった時代であったと考えることができる。縄文時代には, discrepancyの程度がかなり低かったことは, すでに著者らが報告したが, 今回の調査における, 歯の咬合面および隣接面の咬耗の様式からも, このことが確かめられた。そして, 齲蝕の歯種別分布の型からみても, この時代の齲蝕は, 口腔内環境汚染主導型の分布であると考えられた。これに対して鎌倉時代および現代における齲蝕は, それぞれ, discrepancy主導型, および複合型の分布と解釈された。以上の他, 縄文時代および鎌倉時代の食環境についても若干の意見を述べたが, これらを含めて, 今後検討すべき課題は数多く残されているように思われる。
著者
井上 直彦 高橋 美彦 坂下 玲子 呉 明里 野崎 中成 陳 李文 亀谷 哲也 塩野 幸一
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.1-29, 1992 (Released:2008-02-26)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

中華民国(台湾)中央研究院において,中国河南省安陽県殷墟の犠牲坑から出土した398体の頭骨標本の調査を行う機会を得た.侯家荘西北高における,1928年から1937年まで通算15回の発掘による標本の数は,1,000体におよぶものであったというが,当時の中央研究院が戦乱を避けて移動する間に,現在の数にまで減少したという.甲骨文字の解読による史実と,同時に出土した遺物との対照によれば,1,400~1,100BC頃,すなわち殷商時代の後半と推定されている.この標本群は,歴史的な裏付けのある資料としては恐らく最古のものであり,しかも,標本数も大きい点で,古い時代の形質と文化との関わりを知るための資料としてきわめて貴重なものと考えられる.この資料についての過去の研究の中でとくに関心がもたれた重要な課題は,殷商王朝の創建者はどのような人種であったのかという点であるという(楊,1985b).すなわち,本来の中国人というべきものがすでに存在していたのか,東夷あるいは西戎であったのか,また,単一民族であったのか,あるいは楊が指摘したように数種の異民族を包括して統治していたものかなどである(Fig.1~Fig.3).もし,複数民族の存在が事実であるならば,それは,同一の時間,同一の空間に異民族が共存していたという比較的まれな例であるということができる.本研究は,長年にわたる人種論争にあえて参加する立場はとらず,各群が,群として認められるに足りる形態学的な根拠をもっかどうかを検討し,さらに文化の影響としての歯科疾患が,同じ生活圏に存在したと考えられる異なる民族群においてどのように分布するかを知り,著者らがすでに指摘した形質と文化との独立性をさらに確かめることを目的とした.
著者
亀谷 哲也 三浦 廣行 中野 廣一 八木 實 清野 幸男 猪股 恵美子
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.144-151, 1988-08-30 (Released:2017-11-19)
参考文献数
19

新しい診査基準を用いて, 岩手県紫波郡矢巾町の0歳から6歳までの咬合診査を行った。その結果, 不正咬合は, 1歳6カ月児から46.2%という高い頻度で認められ, とくに乳歯咬合の完成に近い2歳児では49.1%とさらに高い頻度でみられた。不正要因は, discrepancy要因のものが1型, 2型とも多く, 年齢群では, 1歳6カ月児, および2歳児が最も多かった。他の骨格型や機能型は各年齢群を通じて大きい変動はなく, 全体として出現頻度は低いが, 骨格型では6歳児で13.9%に認められた。重症度は, A, B, の段階までが約90%を占めていたが, Cと診断される不正咬合の保有者も少数ではあるが認められた。以上の結果に基づく保健指導は, とくに顎骨の発育を促進させるような食生活の指導を補強する必要があると考えられた。治療に関する指導では重症度を参考に骨格型, discrepancy型を中心に治療開始の適当な時期を見逃さないように指摘しておくことが重要であると思われた。