著者
岡本 浩一 二宮 致 廣瀬 淳史 中村 慶史 尾山 勝信 宮下 知治 田島 秀浩 藤村 隆 太田 哲生
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.983-987, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
15

【目的】食道癌術後縫合不全におけるCaHMB・L-アルギニン・L-グルタミン配合飲料(以下、アバンド™と略)投与の有用性につき検討した。【対象及び方法】2003年1月から2014年12月の期間に食道切除・胃管再建術を施行した食道癌205症例において、アバンド™を手術日の14日以上前から術後にかけて周術期栄養療法に追加したアバンド群55例と、非投与症例(対照群)150例における縫合不全発症率を検討した。また、保存的に治癒が得られた縫合不全症例19例(アバンド群8例と対照群11例)における縫合不全発症日数、縫合不全治癒までの期間、合併症などにつき後方視的解析を行った。【結果】両群間における縫合不全発症率に有意差は認めなかった(アバンド群14.3%、対照群7.3%、P=0.115)。縫合不全治癒期間はアバンド群で13.5±14.3日であり、対照群の35.0±17.4日と比較して有意に治療期間が短かった(P=0.043)。【結論】アバンド™は食道癌術後縫合不全の治療期間短縮に寄与する可能性が示唆された。
著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 中沼 伸一 林 泰寛 高村 博之 二宮 致 伏田 幸夫 萱原 正都 太田 哲生
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 = The Journal of Japan Pancreas Society (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.178-184, 2013-04-25
参考文献数
13
被引用文献数
3

膵頭部癌の膵頭十二指腸切除術後消化吸収障害に対する,腸溶性高力価膵消化酵素剤パンクレリパーゼの有効性を,従来の膵消化酵素剤から本剤に切り替えた7症例で評価した.消化吸収障害は下痢の程度,体重の増減,日常生活の活動性,消化不良の症状を織り交ぜWong-Bakerのフェイススケールにあわせて,0から5までのGrade分類を新たに作成して評価した.1例で重度の下痢がみられ投与中止した.他の6例では腸溶性パンクレリパーゼへの変更によって,5例で体重増加がみられ,4例で止痢剤減量を要した.消化吸収障害Gradeは,体重増加のなかった症例,止痢剤減量ができなかった症例も含め6例全例で0または1にまで改善していた.膵頭部癌術後の消化吸収障害の改善に,腸溶性パンクレリパーゼの投与は,有用であることが示唆された.また,今回考案した臨床に即したGrade分類は,消化吸収障害の評価に有用であった.<br>
著者
西村 元一 二宮 致 橋本 之方 鎌田 徹 米村 豊
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.951-955, 1993-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

メネトリエ病の報告例は増加しているが,まだ治療法および癌との関連性に関しては一定の見解が得られていない.われわれは保存的治療で効果が得られず,胃全摘術を施行したメネトリエ病の1例を経験したので,増殖帯の検討も含めて報告した. 症例は34歳男性.低蛋白血症を合併したメネトリエ病の診断で抗プラスミン剤,H2-プロッカーを投与したが無効であったため,胃全摘術を施行した.術後経過は良好で低蛋白血症は認めていない.また切除標本では増殖帯を検討したところ,増殖帯の拡大は認められたが,増殖細胞の密度や分布の異常は認められなかった. 今後,さらに癌化の可能性を探索することが治療法を選択する上での課題と思われた.
著者
寺川 裕史 牧野 勇 正司 政寿 中沼 伸一 酒井 清祥 林 泰寛 中川原 寿俊 宮下 知治 田島 秀浩 高村 博之 二宮 致 北川 裕久 伏田 幸夫 藤村 隆 尾山 武 井上 大 小坂 一斗 蒲田 敏文 太田 哲生
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 = The Biliary tract & pancreas (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.481-485, 2014-05-01

症例は56歳, 男性. 検診にて膵頭部腫瘍を指摘され, 当科紹介となった. 腹部USでは膵頭部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は多彩なエコー輝度が混在するモザイク状であった. CTでは膵外に突出する境界明瞭な多房性嚢胞性病変として描出され, 嚢胞壁および隔壁に造影効果を認めた. MRIにおいては自由水の信号と比較してT1強調像ではより高い信号, T2強調像ではより低い信号, 拡散強調像ではより高い信号を呈しており, 粘調度や蛋白成分の高い内容物の存在が示唆された. 年齢, 性別, 画像所見およびCA19-9高値などを総合的に評価し, lymphoepithelial cyst (LEC)を第一に疑った. 他の膵嚢胞性疾患が否定できないため切除生検としての腫瘍核出術を施行し, 病理学的にLECと診断した. 詳細な画像検査に加え, 性別やCA19-9値などを総合的に評価することにより, 膵LECを疑うことが可能であると考えられた.