- 著者
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吉村 寿紘
井上 麻夕里
- 出版者
- 日本海洋学会
- 雑誌
- 海の研究 (ISSN:09168362)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.3, pp.81-99, 2016-05-15 (Released:2018-10-25)
- 参考文献数
- 101
- 被引用文献数
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カルシウムは海水の主成分元素であり,生体必須元素でもある。化学風化で岩石から溶け出したカルシウムは土壌で動植物に利用され,河川や地下水に運搬されて,最終的には海に注ぎ,そこで炭酸カルシウム,リン酸カルシウムなどの固体として多様な生物に利用される。海洋におけるカルシウムの挙動は炭素循環と密接に関連しており,現代と過去の地球環境変動の理解にとって欠かせない。カルシウム安定同位体比の高精度測定が可能となって20 年弱が経過した。本総説では,海洋に関連する各リザーバーの同位体組成とそれを駆動する生物学,化学,地球化学的な反応過程について,現代と過去のカルシウム循環を紐解くツールとしての役割とともに概説する。