著者
井原 庸
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.87-109, 2008-12-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
4

ナミハグモ属の種多様性には,著しい地理的種分化と,体サイズの分化による同所的な種の組み合わせという2つの側面がある. 日本から70種以上が記録されているが,まだ多くの未記載種が残されている.ナガトナミハグモ種群は生殖器の形態に著しい地理的分化を示し,種内の複雑な地理的変異,環状重複,近縁種の側所的分布や同所的共存といった異所的種分化のさまざまな過程がみられた.また,体サイズは種分化とその後の同所的共存に重要な役割を果たすと考えられ,カチドキナミハグモ種群では体サイズの分化が種分化を促進した可能性がある.
著者
井原 庸
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.20-30, 2007-02-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
7

The spider genera Cybaeus (Cybaeidae) and Arcuphantes (Linyphiidae) comprise numerous species endemic to Japan. They are considered to have diverged as the result of geographic isolations, probably enhanced by their low dispersal abilities. The current paper analyses the species composition and geographic differentiation in the genera Cybaeus and Arcuphantes in western Honshu and adjacent areas. The genus Cybaeus contains species with a wide range body lengths (from ca. 3 to 15mm), with local species assemblages usually consisting of representatives of different size classes. Local species assemblages often constitute a group of closely related species, together with other similar-sized species that are allopatrically or parapatrically distributed with one another. Diversity in genital morphology and geographic differentiation patterns are discussed for species-groups of Cybaeus (C. nipponicus, C. kuramotoi-group, C. miyosii-group and C. hiroshimaensis-group) in western Japan. The kuramotoi-group, which contains species of medium size (approximately 5 to 7mm in body length), has the most diverse genital morphology and is characterized by the presence of a mating plug. The Arcuphantes longiscapus-group is composed of closely related but distinct species based on their morphology and geographical distribution. The group contains eight species that are distributed in western Honshu, northeastern Shikoku and some adjacent islands, Japan, but the distribution patterns are parapatric except for a few cases of narrow overlap. Among these species, morphology of the male palp and female epigynum was strictly speciesspecific. They operate like a lock-and-key system, so that mating is only possible between individuals of the same species.
著者
井原 庸
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.129-152, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
3 1

Arcuphantes (サラグモ科: ヤミサラグモ属) の longiscapus 種群について, 生殖器の形態と地理的な分布パターンにもとづき分類学的改訂を行った. 本種群の種として, A. longiscapus ナガエヤミサラグモ, A. hibanus ヒバヤミサラグモ, A. iharai アキヤミサラグモの3既知種と, A. saitoi イズモヤミサラグモ (新称), A. setouchi セトヤミサラグモ (新称), A. tsurusakii ツルサキヤミサラグモ (新称), A. nojimai ハリマヤミサラグモ (新称), A. okiensis オキヤミサラグモ (新称) の5新種を記載した. これらの8種は, 本州西部と四国北東部および付近の島に限って分布する. それぞれの種の分布は側所的なパターンを示し, 狭い分布重複域をもつ場合がある. 雄触肢と雌の外雌器の間には, 種特異的な形態の対応が認められる.
著者
井原 庸
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.87-109, 2008
被引用文献数
4

ナミハグモ属の種多様性には,著しい地理的種分化と,体サイズの分化による同所的な種の組み合わせという2つの側面がある. 日本から70種以上が記録されているが,まだ多くの未記載種が残されている.ナガトナミハグモ種群は生殖器の形態に著しい地理的分化を示し,種内の複雑な地理的変異,環状重複,近縁種の側所的分布や同所的共存といった異所的種分化のさまざまな過程がみられた.また,体サイズは種分化とその後の同所的共存に重要な役割を果たすと考えられ,カチドキナミハグモ種群では体サイズの分化が種分化を促進した可能性がある.
著者
松本 明子 井原 庸 油野木 公盛 細井 栄嗣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.177, 2013 (Released:2014-02-14)

宮島には餌づけによって市街地周辺に約 500頭のニホンジカが生息する.島外との個体の移出入がない閉鎖個体群で,生息密度が高く餌資源制限の状態にあると考えられる.体格の小型化と成長の遅延がみられるほか,繁殖開始齢が上昇し多くのメスが 4歳以上で初産を迎える.ほかの地域のニホンジカと比べて成長に要する時間が長く,育児期間が長期化している.また,子ジカの体重はばらつきが大きく,同じ時期に約 3倍の差があることがわかっている.そのため,性成熟していない複数齢の子ジカが母ジカとともに行動している場合や,1歳への授乳が散見されるなど,育児様式が多様化している.また,繁殖コストのうち哺乳は妊娠に比べて多大なコストがかかることが知られ,金華山では栄養状態の悪化により隔年繁殖を招いている.同様に栄養状態が悪いといわれる宮島でも授乳中の母ジカの体重が 10%程度低下する場合もあり,幼獣にも母ジカの栄養状態の影響と考えられる成長の遅滞が観察された.そこで,翌年の繁殖への投資やタイミングに影響を与える子ジカの成長パターンや死亡率を明らかにし,出生時期や性による違いを検討した.さらに,子ジカに対する授乳行動の性差についても成長や死亡率との関連から考察した.また,ニホンジカのような体サイズに性的二型がある種では,体の大きいオスのほうが栄養の要求量が大きく成長速度が速い反面,脆弱性と結びついている可能性が指摘されている.金華山などでは初期のオスの死亡率が高いことが指摘されている.宮島においても 0歳から 1歳までと 1歳から 2歳までの子ジカの死亡率を推定し,性による違いがあるかを検討した.
著者
井原 庸
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.87-93, 1994
被引用文献数
5

本州中国地方産の <i>Cybaeus</i> (ナミハグモ属) の2新種, <i>C. hibaensis</i> ヒバナミハグモ (新称), <i>C. tottoriensis</i> イナバナミハグモ (新称) を記載した. いずれも, 中型からやや小型で体色の淡い種である. また, 分布は互いに異所的で, それぞれ中国地方の中部 (広島•島根両県の東部および岡山県西部) と北東部 (鳥取県および岡山県北部) に分布する.
著者
鶴崎 展巨 岡田 珠美 有田 立身 井原 庸
出版者
鳥取県生物学会
雑誌
山陰自然史研究 (ISSN:13492539)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-48, 2008-12-31

文献記録と新たに採集された標本にもとづき, 鳥取県産として44科438種の真正クモ類(クモガタ綱クモ目)の記録をまとめた。次の26種は鳥取県内初記録となる:イトグモ, テナガマシラグモ, ナルトミダニグモ, コガネヒメグモ, マダラヒメグモ, クロササヒメグモ, クロテナガグモ, シバサラグモ, タイリクコサラグモ, ズブトヌカグモ, チュウガタシロカネグモ, チクニドヨウグモ, キタドヨウグモ, キヌアシナガグモ, オオクマヤミイロオニグモ, シロゴミグモ, クマダギンナガゴミグモ,Lathysdihamata Paik 1979,ムナキワシグモ, ヤマヨリメケムリグモ, モリメキリグモ, アシダカグモ, トライコアシダカグモ, チクニエビスグモ, ヤガタハエトリ, ナカヒラハエトリ。|On the basis of literature records and specimens newly obtained, a total of 438 species belonging to 44 familes of spiders (Arachnida, Araneae) from Tottori Prefecture, western Honshu, Japan are catalogued. Following 26 species are recorded as new to spider fauna of Tottori Prefecture: Loxosceles rufescens (Duf'our, 1820), Masirana longimana Yaginuma, 1970, Ischnothyreus narutomii (Nakatsudi, 1942), Chrysso scintillans (Thorell,1895), Steatoda triangulosa (Walckenaer, 1802) , Thymoites okumae (Yoshida, 1988), Bathyphantes robustus Oi, 1960, Neriene herbosa (Oi, 1960), Parasisis amurensis Eskov, 1984, Saitonia orientalis (Oi, 1960), Leucauge blanda (L. Koch, 1878) , Metleucauge chikunii Tanikawa, 1992, Metleucauge yaginumai Tanikawa, 1992; Tetragnatha lauta Yaginuma, 1959; Araneus acusisetus Zhu & Song, 1994, Cyclosa alba Tanikawa, 1992, Cyclosa kumadai Tanikawa,1992, Lathys dihamata Paik, 1979, Cladothela unciinsignita (Bösenberg & Strand, 1906), Drassyllus sasakawai Kamura, 1987, Gnaphosa potanini Simon, 1895,Heteropoda venatoria (Linnaeus, 1763), Sinopoda koreana (Paik, 1968), Synaema chikunii Ono, 1983, Pseudeuophrys erratica (Walckenaer, 1825), Sibianor kochiensis (Bohdanowicz & Proszynski, 1987).