著者
松本 明子
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.55-68, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
179
被引用文献数
3 16

Human aldehyde dehydrogenase 2 (ALDH2) is a 56 kDa mitochondrial protein that forms homodimers through hydrogen bonding interactions between the Glu487 and Arg475 residues of two ALDH2 proteins. Two ALDH2 homodimers can interact to form an ALDH2 tetramer. ALDH2 is widely distributed throughout the organs of the body. In addition to its dehydrogenase activity, ALDH2 also exhibits esterase and reductase activities, with the main substrates for these three activities being aldehydes, 4-nitrophenyl acetate and nitroglycerin, respectively. ALDH2 can be readily inhibited by a wide variety of endogenous and exogenous chemicals, but the induction or activation of this enzyme remains unlikely. The polymorphism of ALDH2 to the corresponding ALDH2*2 variant results in a severe deficiency in ALDH2 activity, and this particular polymorphism is prevalent among people of Mongoloid descent. It seems reasonable to expect that people with the ALDH2*2 variant would be more vulnerable to stress and diseases because ALDH2 defends the human body against toxic aldehydes. However, it has been suggested that people with the ALDH2*2 variant are protected by alternative stress-defending systems. The ALDH2*2 variant has been reported to be associated with many different kinds of diseases, although the mechanisms underlying these associations have not yet been elucidated. ALDH2 polymorphism has a significant impact on human health; further studies are therefore required to determine the practical implications of this polymorphism in the fields of preventive and clinical medicine.
著者
田中 宏 江口 由紀 松本 明子 杉井 健祐 坂口 智香 丹後 ゆかり 丸濱 勉 藪嶒 恒夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.248-253, 2016 (Released:2016-11-02)
参考文献数
12

終末期における抗がん治療の現状を知り緩和ケア病棟(PCU)の意義を検討する目的で,2013年10月からの2年間に当院で死亡したがん患者414例(PCU 219例,一般病棟195例)を対象に,抗がん治療歴や緩和ケア状況を検討した.その結果,一般病棟ではPCUに比べ高齢で,診断が遅く,病勢進行が速い患者が多く,これらが標準的な抗がん治療や緩和ケアの機会を妨げる要因となった可能性が示唆された.一方,化学療法施行例においては,最終治療日から死亡までの中央値がPCU 110日に対し一般病棟は55日と有意に短く,死亡前1カ月間の化学療法施行率もPCU 2%に対し一般病棟は32%と高率であった.終末期の抗がん治療を適正化する上でPCUの意義は大きいと考えられたが,診断時期や病勢進行速度にかかわらず早期からの緩和ケアを実践するには,社会全体に向けた緩和ケアやアドバンスケアプランニングの普及啓発が大切である.
著者
松本 明子 井原 庸 油野木 公盛 細井 栄嗣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.177, 2013 (Released:2014-02-14)

宮島には餌づけによって市街地周辺に約 500頭のニホンジカが生息する.島外との個体の移出入がない閉鎖個体群で,生息密度が高く餌資源制限の状態にあると考えられる.体格の小型化と成長の遅延がみられるほか,繁殖開始齢が上昇し多くのメスが 4歳以上で初産を迎える.ほかの地域のニホンジカと比べて成長に要する時間が長く,育児期間が長期化している.また,子ジカの体重はばらつきが大きく,同じ時期に約 3倍の差があることがわかっている.そのため,性成熟していない複数齢の子ジカが母ジカとともに行動している場合や,1歳への授乳が散見されるなど,育児様式が多様化している.また,繁殖コストのうち哺乳は妊娠に比べて多大なコストがかかることが知られ,金華山では栄養状態の悪化により隔年繁殖を招いている.同様に栄養状態が悪いといわれる宮島でも授乳中の母ジカの体重が 10%程度低下する場合もあり,幼獣にも母ジカの栄養状態の影響と考えられる成長の遅滞が観察された.そこで,翌年の繁殖への投資やタイミングに影響を与える子ジカの成長パターンや死亡率を明らかにし,出生時期や性による違いを検討した.さらに,子ジカに対する授乳行動の性差についても成長や死亡率との関連から考察した.また,ニホンジカのような体サイズに性的二型がある種では,体の大きいオスのほうが栄養の要求量が大きく成長速度が速い反面,脆弱性と結びついている可能性が指摘されている.金華山などでは初期のオスの死亡率が高いことが指摘されている.宮島においても 0歳から 1歳までと 1歳から 2歳までの子ジカの死亡率を推定し,性による違いがあるかを検討した.