著者
渋谷 哲也
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦後ドイツ映画における移民表象の変遷を辿りながら、移民をめぐる社会状況の変化を考察した。とりわけ日本では無名ながらドイツでは高い評価を受けているトルコ系移民二世の映画作家トーマス・アルスランの作品を取り上げ、トルコや移民というテーマを扱う際にいかに紋切り型的表現から距離を取り、社会の多様性を浮き彫りにする手法を明らかにした。
著者
須貝 栄
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、職場において日常的に相互接触している文化背景の異なる者が持つ文化的価値とチームワーク価値を研究した。調査参加者は、在日英国商工会議所およびThe Japan HR Society会員の有志であり、在日英国人9名(駐在員2名、現地雇用員7名)およびその日本人同僚1名であった。また、英国籍経営者のITベンチャー企業もインタビュー調査に参加した。研究結果は、文化的価値に関して、在日英国人が、関与特定的-関与拡散的、感情中立的-感情表出的、内的-外的コントロールの3文化次元において、日本文化の影響をかなりの程度まで受けていると解釈された。しかし、これら以外の文化次元に関して、在日英国人は、英国人らしさを固持していると解釈された。また、在日英国人の多くは、文化シナジーへ結びつく他国文化の価値観から始まる文化統合的価値を頻繁に選択するという特徴も示していた。チームワーク価値に関して、在日英国人は、「実際に知っている最も有能なリーダー」が英国人であろうと日本人であろうと、1.友好的な行動についての価値、2.公式権威に基づく課業達成志向を受容する価値、3.支配に関する価値の順で重視していた。これに対して、日本人参加者は、友好的行動を最重視するのは在日英国人と同じであったが、これ以外のチームワーク価値の順位は異なっていた。結論として、在日英国人は、異文化相互接触が不可避な職場において、人間関係構築・維持について日本文化の影響を強く受け、その影響がチームワーク価値、特に、職場での友好的行動に関する価値の最重視に反映されていると解釈された。
著者
渋谷 哲也
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ドイツのニューシネマにおけるラディカルな映像美学とメディア批判を実践した映画監督たち、とりわけストローブ=ユイレとファスビンダーの映画における文学的要素の活用方法を考察した。とりわけ彼らの脚色映画を取り上げ、歴史的な原作テクストから20世紀後半のアクチュアルな政治性を掘り起こす手法、そして文学性を強調する演出法が映像メディアへの批判的な意識を喚起する技法を明らかにした。
著者
渋谷 哲也
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

戦後ドイツにおいて独自の美学や様式を生み出した映画監督たちについて、国籍、時代、ジャンル、テーマの境界を越えて作品分析を行い、戦後ドイツという特殊な社会的かつ歴史的コンテクストの中で特徴を考察した。主にニュージャーマンシネマのファスビンダー、ストローブ=ユイレ、クルーゲ、ネストラー、「新ベルリン派」のシャーネレクを中心に取り上げた。主に日本未公開作を中心にした映画上映、作品解説のレクチャー、観客との討論という形でイベントを行い、その成果の一部は論文等の文章として公表した。他の成果は今後文章化する予定である。
著者
村上 善紀
出版者
東京国際大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、組織が高い経営成果を達成するために必要となる、組織内における上司-部下間の情報伝達を促進・阻害する要因を探求することである。 本研究では、研究目的の達成のために、包括的な質問票調査を行い、(1)情報伝達の程度、(2)伝達される情報の内容、(3)情報伝達の促進・阻害要因、を中心にデータを収集した。分析結果からは、(1)情報伝達の程度は、伝達情報の内容に大きく依存すること、(2)促進・阻害要因としては、上司の態度や職場の雰囲気が非常に重要であり、特に部下の学習・成長を促進するようなリーダーシップをとる上司に対して、部下からの情報伝達程度が高い、といった知見が得られた。
著者
上代 圭子
出版者
東京国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

①「婚活」「結婚」「出産」をキーワードとして日本人女性アスリートのキャリアプロセスを明らかにすることと、②Role Exit Theoryの有効性を検証することを目的に実証研究を行った。その結果、トップリーグでプレーする際には不安を抱かず、現役中にも引退後に不安を抱かずに、自主的に引退を迎え、未練も持たない。だが、結婚を意識することによって、キャリアプロセスを決定していた。つまり、彼女たちのキャリアトランジションには、結婚にともなう性役割観が影響を与えると言える。したがって、Role Exit TheoryおよびRole Exit Modelには女性特有の要因を考慮した修正が必要である。
著者
布川 清彦 井野 秀一 関 喜一 酒向 慎司
出版者
東京国際大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖を用いて能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.目的を達成するために次の4つの研究を計画した.研究1:白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析,研究2:白杖 によって作られる音情報における人の効果検証,研究3:白杖によって作られた音情報の効果検証,研究4:総合考察.本年度は,研究1と2を実施した.研究1と2の両方で,推定する対象を硬さにした.硬さを推定する対象としては,一辺の長さが300mmの正方形で,その厚さが12mmであるゴム板を用いた.また,使用する白杖には,視覚障害者に広く用いられているアルミニウムの主体とペンシルチップ(石突き)を用いた.研究1では,人を介在させずに機械的に一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を作成した.この装置を用いて,機械的に対象を打った時の音を録音した.ゴムの硬さは,20度から10度刻みで90度までの8種類を用意した.そして,周波数分析を行うプロトコルを作成して,周波数分析を行い,硬さに対する基本的な白杖の打撃音の特性を検証した.研究2では,白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として,視覚障害白杖ユーザと晴眼大学生を実験参加者として,白杖で対象となるゴム板を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法を用いて硬さを推定する実験を行った.研究1の一部について,国内学会で発表し,そのプロシーディングを出版した.
著者
石黒 久仁子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、日本企業における女性の活躍に対する政策とインプリケーションを得ることを目的に、デンマーク、ノルウエー等北欧諸国を中心とした国々のジェンダー平等と女性のキャリア形成の事例を分析・比較した。調査から、北欧諸国において女性は1900代初頭から男女平等の権利を有していたことに加え、経済成長に伴う労働力不足を補う女性の労働力化促進のために出産・育児に対するサポート政策を積極的に推進し、現在では政府・企業・個人そして社会間でジェンダー平等のコンセンサスが形成され、男女共にワーク・ライフ・バランスを実現できる社会づくりの基礎となり、女性が企業の重要な戦力として活躍していることが明らかになった。