著者
志村 俊昭 小山内 康人 豊島 剛志 大和田 正明 小松 正幸
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.654-665, 2006-11-15
参考文献数
57
被引用文献数
2

日高変成帯は,第三紀の火成弧の地殻断面であると見なされている.シンテクトニックなトーナル岩マグマは地殻規模のデュープレックス構造のフロアースラスト,ランプ,ルーフスラストに沿って迸入している.このトーナル岩マグマは露出していない最下部地殻のアナテクシスによって生じた.<br>日高変成帯北部の新冠川地域には,含輝石トーナル岩類(最下部トーナル岩体)が分布している.このトーナル岩体には,斜方輝石の仮像や,アプライト脈などの様々な冷却過程を示す証拠を見ることが出来る.これらの組織から,このトーナル岩体の冷却過程が明らかになった.シンテクトニックなトーナル岩体と,変成岩層の<i>P</i>-<i>T</i>-<i>t</i>経路は地殻の上昇テクトニクスを示している.一方,デラミネーションを起こした最下部地殻の<i>P</i>-<i>T</i>-<i>t</i>経路も推定することが可能である.<br>
著者
亀井 淳志 阿部 幹雄 志村 俊昭 柚原 雅樹 大和田 正明 束田 和弘 外田 智千 木下 雅章
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.283-299, 2009-11-30

第50次日本南極地域観測隊(第50次隊)夏隊のセール・ロンダーネ山地地学調査隊は67日間におよぶ野外調査を行い,その間に必要な電力を太陽光発電で賄った.今回使用した太陽光発電システム(出力電圧約12 V)の1日あたりの発電量は6724 Ahであった.そして,この調査によって以下の3つの重要なことが明らかとなった.1)南極での野外調査生活に必要な電力は太陽光発電システムにより得ることが可能である.2)最大出力電流2.3 Aの太陽パネルは1日あたり910 Ahを発電する.3)夏季の南極は白夜のために日照が途絶える事はないが,当山地では0000 LTから0500 LT (昭和基地時刻) の間に太陽光発電ができない.
著者
西田 和浩 山本 慎一 今岡 照喜 加納 隆 大和田 正明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-34, 2002-01-25

オリオン290A型デジタルイオンメータを用いた珪酸塩岩石のフッ素定量を,蒸留操作なしに行った.岩石試料の溶融は,試料と酸化亜鉛および炭酸ナトリウムを混合して,電気炉を900℃の一定温度に保ち,30分間試料の溶融を行った.白金るつぼに直接蒸留水を加えてホットプレート上で2時間加熱することによって,内容物は,白金るつぼから容易に剥離でき,岩石試料中のフッ素を完全に回収することができた.イオン強度調整剤として,0.2Mクエン酸ナトリウムー0.2M硝酸カリウム溶液を使用した.この方法を用いて,いくつかの岩石標準試料のフッ素定量を試みた.それらの分析値は,推奨値および既報値と良い一致を示し,好結果を得た.また,インドのアラバリベルト,イースタンガーツベルト,ケララコンダライトベルトおよび東南極のセルロンダーネ山地メフェール花崗岩コンプレックスのフッ素定量を行った.ケララコンダライトベルト中のインシピエントチャーノッカイトのF含有量およびGa/A1比は,同一露頭中の片麻岩の値よりも高い.
著者
上塘 斎 大和田 正明 加納 隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.637-647, 2011-11-15 (Released:2012-03-18)
参考文献数
38
被引用文献数
1

飛騨帯は日本列島の骨格をなす地帯であり,主に各種深成岩類と高度変成岩類から構成される.飛騨帯中部地域の熊野川-長棟川地域には,飛騨帯の広域変成作用を受けた斑れい岩複合岩体が分布する.この複合岩体は火成岩組織をよく保存していることから,マグマ過程やマグマ形成場の検討に適している.本論文では,熊野川-長棟川斑れい岩複合岩体の産状と地球化学的性質について検討した.その結果,複合岩体を構成する全ての岩相はマグマ同士で共存し,それらのマグマは海洋プレートの沈み込む大陸縁辺部で形成されたと推察される.
著者
岩田 修二 白石 和行 海老名 頼利 松岡 憲知 豊島 剛志 大和田 正明 長谷川 裕彦 Decleir Hugo Pattyn Frank
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.355-401, 1991-11

第32次南極地域観測隊(JARE-32)夏隊のセールロンダーネ山地地学調査隊は, 1990年12月24日あすか観測拠点を出発し, 1991年2月7日に再び「あすか」に帰り着くまでセールロンダーネ山地中央部で, 地形・地質・雪氷調査を行い測地作業も実施した。雪上車とスノーモービルを利用してキャンプを移動しながら調査するという従来と同じ行動様式をとったため, 設営面でもおおかたはこれまでの方式と同じである。地学調査は, 地形では, 野外実験地の撤収, 岩石の風化の調査, モレーン・ティルのマッピング, 地質では, 構成岩石の形成順序の解明, 構造地質学的・構造岩石学的そして地球化学的研究のためのサンプリング, 測地では, 重力測量, 地磁気測量, GPSによる基準点測量が行われた。ベルギーからの交換科学者は氷河流動・氷厚などを測定した。
著者
岩田 修二 白石 和行 海老名 頼利 松岡 憲知 豊島 剛志 大和田 正明 長谷川 裕彦 Decleir Hugo Pattyn Shuji Iwata Kazuyuki Shiraishi Yoritoshi Ebina Norikazu Matsuoka Tsuyoshi Toyoshima Masaaki Owada Hirohiko Hasegawa Hugo Decleir Frank Pattyn
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.355-401, 1991-11

第32次南極地域観測隊(JARE-32)夏隊のセールロンダーネ山地地学調査隊は, 1990年12月24日あすか観測拠点を出発し, 1991年2月7日に再び「あすか」に帰り着くまでセールロンダーネ山地中央部で, 地形・地質・雪氷調査を行い測地作業も実施した。雪上車とスノーモービルを利用してキャンプを移動しながら調査するという従来と同じ行動様式をとったため, 設営面でもおおかたはこれまでの方式と同じである。地学調査は, 地形では, 野外実験地の撤収, 岩石の風化の調査, モレーン・ティルのマッピング, 地質では, 構成岩石の形成順序の解明, 構造地質学的・構造岩石学的そして地球化学的研究のためのサンプリング, 測地では, 重力測量, 地磁気測量, GPSによる基準点測量が行われた。ベルギーからの交換科学者は氷河流動・氷厚などを測定した。The Sor Rondane field party as part of the summer party of the 32nd Japanese Antarctic Research Expedition (JARE-32) carried out geomorphological, geological, geodetic, and glaciological fieldworks in the central area of the Sor Rondane Mountains for 45 days from December 24,1990 to February 7,1991. The field trip was conducted by two parties, consisting of 9 persons, traveling from mountains to mountains to shift tented camps using 4 snow vehicles towing their equipments on sledges behind. Nine snowmobiles (motor toboggans) were used for their field researches on glaciers. Geomorphologists carried out measurements in the periglacial field experimental sites, observations of rock weathering, and mapping of chronological sequence of tills and moraines. Geologists studied chronological sequence of rock formation and collected rock specimens for structural, petrological, and chemical analyses. A surveyor set up geodetic control stations using GPS satellite positioning system and made gravity surveys on glaciers as well as at some control stations. Two Belgian glaciologists took part in the fieldwork as exchange scientists and studied dynamics of glacier movement and ice thickness.
著者
小山内 康人 中野 伸彦 大和田 正明 サティッシュクマール エム 河上 哲生 角替 敏昭 角替 敏昭 足立 達朗 SAJEEV Krishnan JARGALAN Sereenen
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では,アジア大陸の広範な地域で地質調査を展開し,大陸衝突帯深部地質について変成岩岩石学的・火成岩岩石学的解析を行うと同時に,最先端同位体年代測定を実施して,ユーラシア大陸極東部(アジア大陸)全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸形成テクトニクスを明らかにした.また,アジア大陸形成過程と密接に関連するゴンドワナ超大陸の形成・分裂テクトニクスや,日本海形成以前のアジア大陸東縁部におけるテクトニクスについても考察した.5年間の研究成果は国内関連研究も含め51編の原著論文として学術誌に公表し,招待講演を含む多数の学会発表を行った.
著者
加納 隆 今岡 照喜 大和田 正明 大和田 正明 JAYANANDA M.
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

隠岐島後の基盤岩中に, 新たに典型的なS-type花崗岩を見出し, その産状と岩石学的性質を明らかにした. また飛騨片麻岩に伴うミグマタイト質花崗岩との性質を比較し, 産状は同じでも, 母岩の片麻岩の岩相構成と対応して両者に違いがあることを見出した. これにより, 従来飛騨-隠岐帯として一括されてきたが, 両者は異なる地質体に帰属する可能性が大きいことを示した. また併せて飛騨帯とダルワールクラトンの花崗岩類の温度構造や熱史について比較・検討した.
著者
加々美 寛雄 飯泉 滋 大和田 正明 濡木 輝一 柚原 雅樹 田結庄 良昭 端山 好和
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.309-320, 1995-11-30
被引用文献数
10

瀬戸内・近畿地方の領家帯地域に分布する火成岩類の活動時期は, ジュラ紀初期-中期, 後期白亜紀, 中新世中期の3回である。最初のジュラ紀初期-中期に活動した火成岩類は領家花崗岩中に捕獲岩体として分布するはんれい岩, 変輝緑岩である。前者は下部地殻条件下 (6-8 kb) におけるソレアイト質マグマからの早期晶出相と考えられる。ノーライト, 角閃石はんれい岩, 変輝緑岩によるSm-Nd全岩アイソクロン年代は192±19 Maである。また, ノーライト, 角閃石はんれい岩中に不規則な形の産状を示す斜長岩質はんれい岩のSm-Nd全岩年代は162±29 Maである。後期白亜紀の火成活動は約110 Ma 前, 安山岩質マグマの活動で始まり, その後, 花崗岩の大規模な深成作用に引き継がれた。この深成作用は100-95 Maと80-75 Maの2つの時期に分けることができる。中新世中期の火成活動はユーラシア大陸から西南日本が分離, 移動したことにより引き起こされたものである。日本海形成(15 Ma)に関係した火成活動は, ユーラシア大陸東縁部の狭い範囲で始新世後期-漸新世初期に始まった。ジュラ紀初期*中期火成岩類の ^<87>Sr/^<86>Sr初生値, εNd初生値は後期白亜紀花崗岩類のこれらの値と似ている。このことは両火成岩類が似た起源物質から形成されたことを暗示している。一方, 中新世中期火成岩類のSr同位体比初生値, εNd初生値は以上の火成岩類の値とは著しく異なっている。中新世中期の日本海形成とともに, 西南日本弧の大陸性リンスフェアがフィリピン海プレート上にのし上げた。この出来事によって, 瀬戸内, 近畿領家帯地域下のリンスフェア・マントルはLILあるいはLREE元素に枯渇した化学組成をもつ様になった。中新世中期に活動した玄武岩はこの様にして形成された新しいマントルから形成された。高マグネシア安山岩は玄武岩を形成したマントルより浅い, 沈み込むプレートに由来する流動体相の影響を受けたマントルから形成された。安山岩, 石英安山岩は上部マントル由来のマグマと下部地殻の部分溶融によって出来たマグマとの混合物から形成された。それらのSr同位体比初生値とεNd初生値は, 下部地殻の部分溶融によって出来たマグマの寄与の程度により変わる。この下部地殻は苦鉄質化学組成をもち, 西南日本弧の後期白亜紀に活動した花崗岩類にとっても重要な起源物質である。