著者
柴田 圭子 渡邉 容子 今村 美穂 小幡 明雄 安原 安代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.301-307, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
32

本研究の目的は,魚の漬け焼き―醤油を用いて調味した焼き魚の1種―において,その調理特性や食味におよぼす醤油の影響を評価することである。メカジキを異なる配合割合の醤油や食塩濃度の調味液に浸し,250℃オーブンで加熱した。 基準配合のNaCl 5.2%(w/w)調味液の場合,加熱歩留りには醤油配合割合の影響が見られなかった。しかし,醤油配合割合が25%以下の場合,加熱魚肉の嗜好性は低下した。 0.5時間の浸漬において,生臭みは標準と醤油無添加の調味液のみに有意差がみられ,このことは醤油配合調味液の短時間の浸漬の有用性を示した。調味液の食塩濃度が2.6%(w/w)以下の場合には,加熱魚肉の嗜好性が低下した。更に,漬け焼きとして好まれるには,調味液の食塩濃度が少なくとも3.9%(w/w)であることが認められた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 今村 美穂 小幡 明雄 安原 安代
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.301-307, 2015

本研究の目的は,魚の漬け焼き―醤油を用いて調味した焼き魚の1種―において,その調理特性や食味におよぼす醤油の影響を評価することである。メカジキを異なる配合割合の醤油や食塩濃度の調味液に浸し,250℃オーブンで加熱した。<br> 基準配合のNaCl 5.2%(w/w)調味液の場合,加熱歩留りには醤油配合割合の影響が見られなかった。しかし,醤油配合割合が25%以下の場合,加熱魚肉の嗜好性は低下した。<br> 0.5時間の浸漬において,生臭みは標準と醤油無添加の調味液のみに有意差がみられ,このことは醤油配合調味液の短時間の浸漬の有用性を示した。調味液の食塩濃度が2.6%(w/w)以下の場合には,加熱魚肉の嗜好性が低下した。更に,漬け焼きとして好まれるには,調味液の食塩濃度が少なくとも3.9%(w/w)であることが認められた。
著者
孟 琦 今村 美穂 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.249-254, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

醤油にみりんと砂糖を添加した調味液の加熱による香気の質的変化とその寄与成分を解明するために,醤油とその調味液から香気濃縮物を調製し,香気濃縮物を比較した。香気濃縮物のGC-O分析の結果,調理加熱によって感知できる香気成分数は醤油では減少したが,調味液では増加した。AEDA分析の結果,調理加熱前後の調味液中のFDfが最も高かったのはカラメル様のHEMFで寄与度に変化はなかったが,醤油ではHEMFの寄与度が低下した。みりんの主要成分であるグルコースを添加したモデル調味液は,調理加熱後に感知できる香気成分数が増加し,HDMFとHMFの寄与度が上昇した。このような香気成分の変化は,調味液と酷似していた。これらの結果は,グルコースを多く含むみりんの添加が調味液の調理加熱による香気の形成に大きく寄与することを示している。
著者
孟 琦 熊丸 陽奈 今村 美穂 中尾 隆人 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014

調理加熱前後の生醤油と火入れ醤油から,香気濃縮物を調製した。香気濃縮物のGC-O分析により生醤油では火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多く感知でき,スモーク様の香気成分は少ないこと,生醤油は調理加熱により感知できる香気成分が加熱前より増加することが判明した。AEDA分析により,生醤油で最も高いFDf成分は甘いカラメル様のHEMFと花様の2-phenylethanolであり,火入れ醤油ではHEMFと燻製様の4VGであることが判明した。さらに,調理加熱後も生醤油ではHEMFの寄与が最も高く,火入れ醤油ではHEMFの寄与度が低下した。甘く香ばしい香りを持つ生醤油は,調理加熱後も火入れ醤油と比較してより複雑な香りになることが明らかになった。さらに,官能評価により,調理加熱した生醤油の甘く香ばしい香りは調理加熱した火入れ醤油より有意に強いことが確認され,この香りの特徴は「豚肉のしょうが焼き」において好まれる傾向があることが判明した。
著者
今村 美穂 片山 弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.343-354, 2017-07-15 (Released:2017-08-18)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

市場に流通している生しょうゆと火入れしょうゆの官能的な品質の違いを客観的に示すことを目的として,異なるメーカーで製造された市販の生しょうゆおよび火入れしょうゆ6対,計12銘柄のQDA (Quantitative Descriptive Analysis)による詳細な分析を行った.また,得られたQDAの結果と過去の知見11) を統合し,日本のしょうゆから見出される91種の特性をフレーバーホイールとして体系化した.さらに,これらの過程で以下の知見を得た. (1) 12銘柄の生しょうゆおよび火入れしょうゆは48種の官能特性を呈した.これら特性のうち,13種は本研究が初めての報告であり,エステル系の特性や穀物系の風味,グリーンな香りが多いことを特徴とした. (2)生しょうゆは,火入れしょうゆと比較して,甘味,旨味に加え,大豆の風味が強いという特徴を有した.その一方で,火入れしょうゆは苦味,渋味·えぐ味,後味の苦味が強かった. (3)今日,日本で市販されている多くのしょうゆは20∼25種の共通する特性を有した.しょうゆの品質評価においては,それぞれのしょうゆに特徴的な特性を見出すだけでなく,基本的な特性のバランスの評価が重要と考えられた.なお,しょうゆや和食に対する嗜好性の確立や継承にしょうゆの苦味が与える影響の評価,および生しょうゆと火入れしょうゆの旨味の差異に対するメイラード物質の寄与の評価は,今後の課題と考えられる.
著者
今村 美穂 牛尼 翔太 宮田 慎吾
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67-80, 2019-04-05 (Released:2019-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2

郷土料理としょうゆの相性を検討するために,北海道の郷土料理「芋もち」と全国共通の料理「冷奴」を北海道,関東および九州のしょうゆで調味し,北海道在住の女性6世代(幼児,小学生,中学生,大学生,成人,高齢者)約50人ずつを対象に官能評価を行った。その結果,北海道の郷土料理である芋もちは,香り,色,味のいずれにおいても北海道のしょうゆで調味したものが好まれた。また,印象の評価においても高い評価を得た。冷奴についても,北海道のしょうゆは嗜好性と印象の双方で評価が高かった。なお,地元のしょうゆとその他の地域のしょうゆで調味した料理の評価に違いが現れるのは,中学生ころからであった。さらに,北海道のしょうゆを高く評価した被験者の共通点について検討したところ,芋もちの調味では年代という因子が抽出された。したがって,食生活の内容よりも,北海道に住み,そこで日々の食生活を送ることそのものが地元の味覚を育むために重要と考えられた。
著者
孟 琦 熊丸 陽奈 今村 美穂 中尾 隆人 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
4

調理加熱前後の生醤油と火入れ醤油から,香気濃縮物を調製した。香気濃縮物のGC-O分析により生醤油では火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多く感知でき,スモーク様の香気成分は少ないこと,生醤油は調理加熱により感知できる香気成分が加熱前より増加することが判明した。AEDA分析により,生醤油で最も高いFDf成分は甘いカラメル様のHEMFと花様の2-phenylethanolであり,火入れ醤油ではHEMFと燻製様の4VGであることが判明した。さらに,調理加熱後も生醤油ではHEMFの寄与が最も高く,火入れ醤油ではHEMFの寄与度が低下した。甘く香ばしい香りを持つ生醤油は,調理加熱後も火入れ醤油と比較してより複雑な香りになることが明らかになった。さらに,官能評価により,調理加熱した生醤油の甘く香ばしい香りは調理加熱した火入れ醤油より有意に強いことが確認され,この香りの特徴は「豚肉のしょうが焼き」において好まれる傾向があることが判明した。