著者
柴田 圭子 高見 朋子 渡邉 容子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.134, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】食品添加物として市販されるホタテ貝殻焼成カルシウム(以下,貝殻Ca)は,主成分が酸化カルシウムで,水と反応すると強いアルカリ性を呈し,野菜・果物類の抗菌洗浄に利用される。この貝殻Caの特性を利用し,洗米に使用することで貯蔵米の食味の向上を図ることが可能と考え,その有用性を検討した。【方法】貝殻Caは洗浄用に0.03% (w/v)の水溶液(以降,貝殻Ca水)に調製して使用した。試料米にはコシヒカリ(2013年度,山形県産)を用い,実験は2017〜2018年に実施した。米300gを脱イオン水1L/回×5回洗浄したものを対照試料,同じ5回洗浄のうち2回目のみ貝殻Ca水を用いたものを貝殻Ca水洗浄試料とした。飯は米の1.5倍加水して60分浸漬後,電気炊飯器で炊飯した。米粒のSEM観察および脂肪酸度の測定,飯粒の力学的測定(テクスチャー解析),飯の食味評価は分析型と嗜好型の官能評価を行い,更に飯のテクスチャーと味の評価はTDS法,におい評価はTI法を用いた。【結果および考察】貝殻Ca洗浄水はpH11.9だが,炊飯直前の浸漬液はpH7.4となった。米粒表面の構造は,貝殻Ca水洗浄試料と対照試料に顕著な差はないが,米の脂肪酸度は前者が有意に低値であった。飯の炊上り倍率・飯粒の形状に有意差はなかった。飯粒を80%圧縮した際,貝殻Ca水洗浄試料は最大荷重と凝集性で低値,付着性は高値の傾向がみられ,飯粒外周がかため,内部はやわらかめである事が示唆された。TDS法では,貝殻Ca水洗浄試料はもちもちして,後味の甘味が持続する傾向であった。TI法による対照試料と比較した貝殻Ca水洗浄試料の古米臭の強度は,約45%と評価され,低減効果が認められた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 三好 恵子 大貫 勇 眞田 英輔 宇田川 政喜 安原 安代
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.389-398, 2004-05-15
被引用文献数
2

オニオンスープをモデルに,ベースのスープ(炒めタマネギ添加前のブイヨンやコンソメ類)の影響およびタマネギの加熱方法がオニオンスープの食味や呈味成分へ及ぼす影響を検討し,以下のような結果を得た.(1)手作りのコンソメをオニオンスープのベースに用いた場合,特にうま味・こくが強くなって有意に好まれることが認められた.(2)即席コンソメを用いた場合でもオニオンスープの総合評価においては,嗜好的な有意差がみられなかった.(3)炒めタマネギの添加は遊離糖量の増加による甘味増強効果が認められた.同時に,有機酸量も増加したが,有機酸の種類と量および酸味抑制効果のあるペプチド類などの影響で官能的な酸味における有意な強弱差や嗜好差は認められなかった.(4)揚げタマネギを用いた場合,スープの色が濃く,甘味とうま味およびこくの弱い淡白な食味のオニオンスープであったことから,炒めダマネギの代用とはならず,別の食味を形成することが認められた.
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 早瀬 明子 安原 安代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.141-147, 2012 (Released:2014-03-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1

焼き魚の食味に及ぼす解凍方法の影響を検討するため,冷凍魚(メカジキ:学名Xiphias gladius)の数種類の解凍方法の実験を行なった。我々は5種類の解凍条件-1.電子レンジ(100 W断続照射);2.室温解凍;3.流水解凍;4.低真空チルド室解凍;5.冷蔵庫内解凍-を比較した。 解凍の内部温度終点を-1°Cにした場合,電子レンジ断続照射による解凍は解凍時間が最短で,最も解凍ドリップが少なかった。低真空チルド室の解凍は最も長い解凍時間であったが,解凍ドリップが比較的少なく,筋繊維も十分に水和膨潤していた。更にこの方法は調理歩留まりが高めになり,焼き魚の食味も好まれていた。流水解凍した場合の焼き魚は,ドリップ量が多いため多汁性が低く評価されていた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 今村 美穂 小幡 明雄 安原 安代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.301-307, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
32

本研究の目的は,魚の漬け焼き―醤油を用いて調味した焼き魚の1種―において,その調理特性や食味におよぼす醤油の影響を評価することである。メカジキを異なる配合割合の醤油や食塩濃度の調味液に浸し,250℃オーブンで加熱した。 基準配合のNaCl 5.2%(w/w)調味液の場合,加熱歩留りには醤油配合割合の影響が見られなかった。しかし,醤油配合割合が25%以下の場合,加熱魚肉の嗜好性は低下した。 0.5時間の浸漬において,生臭みは標準と醤油無添加の調味液のみに有意差がみられ,このことは醤油配合調味液の短時間の浸漬の有用性を示した。調味液の食塩濃度が2.6%(w/w)以下の場合には,加熱魚肉の嗜好性が低下した。更に,漬け焼きとして好まれるには,調味液の食塩濃度が少なくとも3.9%(w/w)であることが認められた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 今村 美穂 小幡 明雄 安原 安代
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.301-307, 2015

本研究の目的は,魚の漬け焼き―醤油を用いて調味した焼き魚の1種―において,その調理特性や食味におよぼす醤油の影響を評価することである。メカジキを異なる配合割合の醤油や食塩濃度の調味液に浸し,250℃オーブンで加熱した。<br> 基準配合のNaCl 5.2%(w/w)調味液の場合,加熱歩留りには醤油配合割合の影響が見られなかった。しかし,醤油配合割合が25%以下の場合,加熱魚肉の嗜好性は低下した。<br> 0.5時間の浸漬において,生臭みは標準と醤油無添加の調味液のみに有意差がみられ,このことは醤油配合調味液の短時間の浸漬の有用性を示した。調味液の食塩濃度が2.6%(w/w)以下の場合には,加熱魚肉の嗜好性が低下した。更に,漬け焼きとして好まれるには,調味液の食塩濃度が少なくとも3.9%(w/w)であることが認められた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 安原 安代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.411-419, 2007-12-20
参考文献数
26
被引用文献数
3

スープストックの呈味と呈味成分における動物性抽出材料の組合せ効果と野菜の添加効果を検討した。試料ストックは動物性材料30%(牛すね肉,鶏がらを単独または組合せ)と野菜10%(玉ネギ50%,人参25%,セロリ25%)により調製した。更に,標準試料(B20-C10-V;20%牛すね肉,10%鶏がら,10%野菜)を実験試料および市販品と比較し,標準試料の性質の検討と市販品との比較も行なった。研究室の熟練パネルにより評価したところ,鶏がら単独のストックは牛すね単独のストックより好まれ,混合ストックは牛すね単独のストックより好まれた。ストックへの野菜添加は,甘味・うま味・総合評価で有意に向上し,特にストックのうま味程度が程よいMSG等価濃度65mg/100mlあたりで向上した。更に,主成分分析より標準ストックの食味はバランスがとれていた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 安原 安代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.304-312, 2008-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
31
被引用文献数
9

和風のだし汁の食味特性を検討するため,かつおだし,煮干しだし,昆布だし,混合だしを日常使用頻度の高い濃度において調製した。更に市販だしも調製した試料と比較した。かつお-昆布だし(かつお2%,昆布1%)は4%かつおだしよりも官能評価では有意に高く評価され,また,抽出を促進する加熱時間の延長はスコアを向上させなかった。かつお-昆布だしをはじめ,煮干し-昆布だし(煮干し2%,昆布1%は)においても,呈味成分(Glu,5′-IMP)の測定,官能評価により相乗効果が確認された。主成分分析の結果より,各単独だしおよび混合だしのそれぞれの持つ特徴が確認できた。即ち,かつおだしはより強い酸味を持ち,煮干しだしは若干の苦味と生臭みを持ち,昆布は穏やかな甘味のあるうま味を持ち,混合だしは単独だしよりも複雑な食味を持っていた。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 早瀬 明子 安原 安代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.87-97, 2010-04-05
参考文献数
17

家庭における飯の冷凍保存とその電子レンジ加熱の方法を研究するため,女子大学生と消費者モニター(日立アプライアンス)にアンケート調査を実施した。その調査より得られたデータに基づき,電子レンジ加熱後の飯の食味におよぼす加熱条件の影響を検討した。アンケート参加者の多くが8~10cm四方,150g程度のかたまりの飯を1週間程度冷凍保存をしていた。その90%以上が冷凍飯を加熱するのに電子レンジを使用していた。飯がほどよく膨潤糊化していれば,150gの電子レンジ加熱した飯の食味は冷凍していない飯の食味に類似していた。しかし,たとえよく膨潤糊化した飯でも,300gの飯の場合には加熱ムラのために食味が低下した。ゆえに,家庭で飯を冷凍-電子レンジ加熱する場合,飯は小さめ(例えば150g程度)に冷凍し,電子レンジ加熱は庫内のプレートに直接置くのが最も適当であろう。