著者
中西 俊之 藤原 幸一 仙頭 佳起 祖父江 和哉
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1L5OS18b02, 2023 (Released:2023-07-10)

痛みは主観的な感覚であるため,自己評価スケールで評価されてきた.しかし,自己評価スケールは時間的に連続評価ができず,意識レベル低下時や小児では実施が難しい.そのため,熱や電気刺激に対する生体信号の変化を痛みの正解データとして用いることで,痛みの客観化が試みられてきた.しかし,実験環境での解析結果をそのまま実際の患者に適応できるかどうかは明らかでない.我々は,患者自身が痛みの増強時に鎮痛剤を投与する経静脈的患者自己調節鎮痛法(IV-PCA)の使用記録から痛みの経時変化を推定できると考えた.本研究の目的は,ウェアラブル心電計とIV-PCAを用い,生体信号と機械学習により術後の痛みを連続的に評価し,その増強を予測することである.時系列性を考慮した異常検知モデルである自己注意機構付きオートエンコーダ(SA-AE)を採用し,心拍変動指標を入力特徴量に用いて痛み増強を予測するAIを構築した.IV-PCAの使用を痛みの増強と定義し,8人の術後患者において痛み増強の15分前にTPR 54%,FPR 1.76 回/hの性能で予測できた.今後,データを蓄積してモデルの性能を改善する.
著者
仙頭 佳起
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.337-345, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

周術期管理において,術後患者の全身状態を安定化させるPostanesthesia Care Unit (PACU)が果たしうる役割を再考した.PACUに期待される機能は,術後安全性の向上,患者満足度の向上,手術室の効率的運用への寄与であり,その効果を検証することが求められている.本邦ではPACUを運営する施設が16.1%と少ないが,運営しない施設の60.0%でその必要性を感じており,場所や人員の確保に関する対策が求められると同時に日本に合った形のPACUについても検討すべきである.PACU運営の実際や効果検証の進捗に触れながら,今後の展望について解説した.
著者
佐野 文昭 仙頭 佳起 平手 博之 祖父江 和哉
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.504-510, 2018

<p>血液弾性粘稠度検査は,ベッドサイドでほぼリアルタイムに血液凝固機能を評価できる.血液弾性粘稠度検査を用いることで,心臓外科手術や肝移植手術において輸血量を減少させることが知られている.濃縮フィブリノゲン製剤は,本邦では後天的低フィブリノゲン血症には適応がないが,文献では濃縮フィブリノゲン製剤の使用で血液製剤の使用量低下,治療コスト削減,予後改善が報告されている.当院では倫理委員会の認可のもと,大量出血時の低フィブリノゲン血症に対し濃縮フィブリノゲン製剤を使用し,一定の成果を得ている.本稿では自験例を含め,周術期の凝固系管理を考える.</p>
著者
仙頭 佳起 星加 麻衣子 祖父江 和哉
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.117-123, 2018 (Released:2018-08-23)
参考文献数
18

現代の周術期管理においては,効率化のなかでも安全性に加えて患者満足度の向上が求められている.術後悪心嘔吐(postoperative nausea and vomiting:PONV)は,周術期の患者満足度を下げる大きな要因の一つであり,対策が求められている.シームレスな(=途切れない)周術期管理を展開するチーム医療は,PONV 対策においても効率的かつ効果的に機能し,患者満足度を向上させる可能性があり,今後はその効果検証が必要である.当院の『周術期ケアチーム』が実践しているPONV 対策の体制や成果を,周術期の流れ(術前評価,術中管理,術直後のPostanesthesia Care Unit 管理,術後回診)に沿って紹介しながら,PONV 対策における周術期管理チームの意義と役割について述べた.
著者
仙頭 佳起 鈴木 利保 祖父江 和哉
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.59-62, 2014

Postanesthesia care unit (PACU)を運営することにより,一般病棟での術後患者に発症しうる重篤な有害事象が減少しうるか否かを調査した。対象施設は名古屋市立大学病院とその教育連携施設2施設で診療録を後方視的に検討した。手術室退室あるいはPACU退室後12時間以内に院内救急コールが起動された症例は各施設で1-2例であった。手術件数あたりの術後院内救急コール症例数の割合は,PACUを運営する施設で0.006%,運営しない施設で0.02-0.03%と前者で低い傾向があった。PACUの運営により術後患者の一般病棟での重篤な有害事象をPACUが減少させる可能性があるが,さらなる大規模研究が必要である。