著者
若井 郁次郎
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.51-56, 2014 (Released:2014-12-27)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1
著者
伊藤 達也
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.23-31, 2019 (Released:2019-08-19)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿の目的は河童を使った水辺環境保全と地域振興効果を、福岡県久留米市田主丸町での調査から明らかにすることである。田主丸町は筑紫平野に位置し、河童を信仰する地域住民が河童を祭る祠を立て、毎年8月8日に祭りを開催している。筆者が行ったアンケート調査では、河童を使ったイベントの地域振興効果は、主として田主丸町の人々の交流を活発にし、人々を元気にさせるという経済効果の間接的側面で明らかになった。また、こうした河童を使ったイベントを肯定的に捉えている人が全体の80%を超え、田主丸町の河童が地域の水辺環境の保全に関わっていると考える人は3分の2を超え、そうした河童のいる水辺を守りたいと考える人が4分の3を占めた。田主丸町において、河童による地域振興効果は経済効果としては間接的であるものの、河童のいる水辺環境の保全意識は強く、そうした河童を信じる心、愛する心が河童によるイベントを支えていると思われる。
著者
大熊 孝
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.84-92, 1987-04-25 (Released:2009-04-22)
被引用文献数
1 1

昭和60年度までに完成している多目的ダムは267ダムに達するが,本論文では建設中のダムを含め,データの得られた353ダムについて,洪水調節機能を中心として地域的,経年的特徴をみたものである。まず,目本全国を9地域区分に大分割し,そこにおけるダム群の有効貯水容量・洪水調節容量を降水量との関係において特徴をみた。その際,ダム容量はダムの支配流域面積と相対評価する必要があるので,それを流域に降った雨のうち何mmまで貯留できるかという値,即ち,相当雨量に換算して評価を行った。次に,その相当雨量の経年変化をみると,近年,洪水調節容量の相当雨量は200~400mmと大きくなってきており,ダム下流に洪水を流下させないですむダムが出現していることを示した。さらに,洪水調節容量確保方式について検討を加え,洪水調節容量確保方式は予備放流方式が減少し,サーチャージによる確保方式が増えていることを,また,洪水調節方式は洪水時にゲート操作の頻繁な一定率・一定量放流方式から,ゲート操作のほとんど要らない一定開度方式・自然調節方式が増えてきていることを示した。
著者
田渕 直樹
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.159-164, 2015 (Released:2015-12-28)
被引用文献数
1

東北地方太平洋沖地震が藤沼ダムを決壊させ、8人の犠牲者を出した。その原因はM9.0にも達した地震だけでなく、築堤材料や施工、維持管理に瑕疵があったからである。しかしダム津波に気付いて避難した人や、流されても脱出して助かった人もいる。それゆえハード対策だけでなく、ソフト対策も充実させれば、犠牲者を減らすことが可能であったと考える。
著者
田渕 直樹
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-89, 2017 (Released:2017-12-29)

1960~80年代四国3県で計画された原発立地の中で、映画「シロウオ」で描かれた徳島県阿南市椿町の蒲生田原発立地計画は、四国電力株式会社が2度目に撤退したものである。住民は個人から隣組、傍示へと反対運動を拡大し、漁村の椿泊町では漁協総会で反対の議決が行われた。市議会と県議会では推進派が多数であったが、反対派議員が活発に活動した。そして住民は集団で県知事や県議会、市長や市議会に陳情・請願を行い、県外から専門家を招いて活発な学習会を行った。つまり強力な住民運動の上に、労働組合や市外の自治体や漁協、県外の専門家や市民の支援を得て、「原子力ムラ」と対峙することを可能にしたのである。更に、スリーマイル島原発事故や四国電力株式会社の醜聞も重なり、市長・県知事は立地計画を白紙撤回した。
著者
木村 一夫
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.10, pp.60-66, 1997-12-25 (Released:2009-04-22)
被引用文献数
1 1

1957年12月10日、揖斐川源流が電源開発株式会社の調査区域に指定された。調査対象となった岐阜県揖斐郡藤橋村および徳山村の両住民とも相ついで「区集会」、「村議会」などで「ダム反対」の決議をした。これに対し建設省は、水資源開発公団に移管し、発電計画だけでなく、洪水調節など公共の福祉につながる「多目的ダム」とした。1964年「徳山ダム」予定地より16km下流の藤橋村に「横山ダム」が完成した。紆余曲折を辿って1987年3月、徳山村は閉村し、隣村の藤橋村に編入合併された。廃村と前後して徳山村住民の移転が始まった。ダム問題に翻弄された30年間の追跡調査を「多目的ダム開発と"揖斐谷"住民の変転」にまとめ、『水資源・環境研究、第4号』に発表した。新しく、この小論は、廃村前後から12年間、かつて徳山村に住んでいた人々が離村して辿った変転を追跡調査したまとめである。
著者
水野 亮
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-14, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

本稿は、佐渡の農家がトキ野生復帰の取り組みをどのように受け止め、それによってコメ産地としてどのような変化を遂げてきたのかを、各種統計や筆者が実施した農家への聞き取り調査の結果から考察した。トキの餌場を増やす必要性と2004年の台風被害以降しばらく続いていたコメ産地としての厳しい状況を抜け出す必要性から環境保全型農業の取り組みが進み、2008年から「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度が始まった。農家への聞き取り調査から、佐渡の農家を五つの類型に分け、農家の中には認証米の参加に積極的な農家と消極的な農家がいることがわかった。積極的な農家は、環境に配慮した栽培を行うことによって他の農家との差別化を図り、コメを優位に販売したいという意図があった。一方で、消極的な農家は認証米が抱える生産面や所得面などの課題を意識し、認証米には、あまりメリットを感じていない。認証米の存続には、これらの課題の解決が不可欠となっている。
著者
原田 禎夫
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-51, 2015 (Released:2015-07-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

近年、海岸へのごみの大量漂着が各地で問題となり、生態系への影響も深刻化するなど、「海ごみ問題」は新たな地球環境問題として社会的にも関心が高まりつつある。こうした海ごみの多くは河川からの流出による陸域由来の生活廃棄物が多くを占めることが明らかになっている。しかし、河川の漂着ごみは移動性がきわめて高い上に、発生源が多岐にわたることから、その実態はほとんど明らかになっておらず、抜本的な対策も進んでいない。本研究では、こうした河川の漂着ごみをめぐる最近の研究や日本と韓国の取り組み事例をレビューし、その発生抑制に向けた社会的な仕組みづくりの課題について考察する。
著者
梶原 健嗣
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.57-64, 2019 (Released:2020-01-24)
被引用文献数
1 1

2018年の改正水道法では、集権的広域化の推進が目指されている。しかし、そこには3つの疑問がある。「収入減少下における大量更新」という時代を迎えるなかで、広域化は有効な解決策になりうると言われる。しかし、少なからぬ水道事業者が広域化に消極的であり、中央と現場に乖離があることは重要な問題である。 そもそも、改正水道法は給水収益の減少を水道事業の重要課題に位置付けていた。しかし、その理由を人口減少のみに求めている点は誤りである。議論の出発点に疑問がある。 最後に責任水量制の問題がある。責任水量制の下で進められる統廃合は、ダム水源への依存度を過度に高める形になりやすい。しかし、それは安定給水の確保に必ずしも繋がらない。工業用水で検討されているように、水道用水供給事業でも責任水量制の見直しが必要である。そうしてこそ、財政およびリスク管理という点から、合理的な統廃合が可能になってくるはずである。
著者
亀井 克之
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-31, 2022-06-28 (Released:2022-06-28)

水資源・環境問題は、企業に対してさまざまな「リスクと機会」を提供している。2023年春に開始予定の福島原子力発電所事故由来の汚染水に処理を施した水の海洋放出(以下、「原発事故由来処理水の海洋放出」)は、近年、世界的に標榜されている「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に大きく影響を及ぼすリスク事象である。水資源・環境問題と日本の企業・ビジネスを考える上で、避けて通ることはできない事象である。本稿では、まず第一に、企業リスクマネジメント論の枠組みで「原発事故由来処理水の海洋放出」を位置付けた後、第二に実施を1年後に控えた2022年3月段階までの新聞報道を提示する。 現実に海洋放出が開始されるにあたり、廃炉の行程や汚染水の処理というハードコントロールに加えて、風評リスクに関わるリスクコミュニケーションというソフトコントロールがきわめて重要となる事象であることが認識できる。安全のコストに関わる判断(津波対策の不徹底)や、事故処理のコストに関わる判断(凍土壁の採用)が、結果として長期的に膨大な環境コストを必要とする事態を招いたと言えるのではないか。
著者
大上 博基
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.13, pp.27-34, 2000-12-25 (Released:2009-04-22)
参考文献数
8

植生や水辺からの蒸発散は、私たちが住む地域にとって、消費水量としての側面と熱環境を緩和する役割を併せもつ。本稿では、農地による熱環境緩和効果の定量的な評価を目的として、以下のことを明らかにした。(1)蒸発散によって地表面近くの熱環境を緩和する真夏の正午頃における水田の能力は、家庭用のエアコンが2~3m四方の地面に一台の割合で設置された状態に相当する。(2)水田は、湛水条件とイネの気孔開度の影響で表面の水分が比較的高く、植生の空気力学的特性によって熱や水蒸気の輸送能力が高いという二つの効果がはたらくため、水面、裸地、畑地よりも表面温度を低く抑制する。また、蒸発散による消費水量あたりの熱環境緩和効果は、水面や裸地よりも植生面のほうが高い。(3)潅漑農地は、風上の裸地や舗装地から輸送された熱の吸源になり、その風卞に大気の冷却効果をもたらす。その効果がローカルスケールで定量化できた。
著者
仲上 健一
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.44-51, 2019 (Released:2020-01-24)
被引用文献数
2 2

改正水道法(平成30年法律第92号、平成30年12月12日公布)における国会議論と残された課題を検討する、地方自治体の反応の特徴を整理した。改正水道法の最大の論点は、水道事業へのコンセッション方式の導入であり、コミュニケーション方式のメリット・デメリットについて類型化した。水道事業のコンセッション方式の導入において、浜松市における、 「浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書」(平成30年2月)を対象に、コンセッション導入検討プロセスについて検討するとともに、本報告書における結論は、水道事業を経済性のみでの判断を基本にコンセッション方式の優位性が導き出された結論であり、水道利用者の住民や事業者のコンセッション方式の意向が把握されていないことを指摘した。水道法改正にあたっては、問題解決の方法として、水道事業の経営の視点で議論されており、水道事業の全体環境である行政・労働者・地域住民・社会の視点で問題点を検証し、課題解決の道を探る必要がある。
著者
川内 眷三
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-52, 2004

伝仁徳天皇陵の周濠池である大仙陵池を事例に、狭山池用水の導水につとめた歴史的経緯をふまえ、「狭山除川並大仙陵掛溝絵図」の現況復原によって、深刻な状況におかれた周濠池の水利事情をとらえる。これをもとに、堺市が推進する「内川水系水環境改善基本計画」、大阪府が実施主体となって施工された「狭山池治水ダム化事業」の水環境再生施策の構図について、大仙陵池の浄水化に対する取り組みと関連させ、その問題点を明らかにする。さらに現況調査から諸課題を析出するなかで、大仙陵池と狭山池の水利空間のネットワーク化から、将来にわたって相乗効果が期待される動態的な水環境再生施策のあり方を考える。併せ、現実の諸問題と対峙し、問題解決への思考・関わりと呼応した、歴史地理学からの地域環境問題に対する視点を検討する。
著者
伊藤 達也
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.8, pp.23-35, 1995-12-25 (Released:2009-04-22)
被引用文献数
1