著者
仲吉 信人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.238-250, 2016-07-05 (Released:2016-08-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本解説は,個人の動線に沿った微気象変化,およびそれに伴う人体生理応答を計測・評価する都市生気象学の新たな研究手法について紹介するものであり,本手法の根幹技術であるウェアラブルな気象・生理計測システム,およびそれを用いた都市街区での被験者実験に焦点を当て報告する.ウェアラブル計測システムは,微気象因子として全ての熱環境因子(気温,湿度,風速,短波・長波放射),生理因子では皮膚温度,脈拍,活動量指標,温熱感覚を計測する.微気象因子のうち,風速,短波・長波放射量は本手法のために開発した新センサ,グローブ風速・放射センサを用い評価する.本手法の応用例として,2011年8月22-24日にかけ岐阜県多治見市の都市街区にて温熱生理実験を実施した.本計測システムにより,AMeDASなどのルーチン観測網では評価できない街区微気象の局所性が可視化され,また微気象に対する生理応答に性差・体格差といった明確な個人属性の影響が見られることが確認された.都市の微気象評価や生気象研究における本手法の有用性が示された.
著者
仲吉 信人
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は次の二つの事項を達成する.1:地上気象ビッグデータ取得デバイスの開発,2:地上気象ビッグデータの数値気象モデルへの同化手法の構築,および計算精度の向上性の評価.それぞれについて今年度の実施状況は以下の通りである.1.地上気象ビッグデータ取得デバイスの開発:3つの球形温度センサを用いた気象3変数逆同定システムであるグローブ風葬放射センサを従来の直径12 mmから4 mmまでダウンサイズすることに成功した.また,同定する3気象変数として,風速・日射・輻射熱の組み合わせから風速・日射・気温の組み合わせを逆同定するシステムを新たに構築した(Globe Radio-anemo Thermometer; GRaT).GRaTとすることで,正確な気温測定に必要であった強制通風筒が必要なくなるため,システム全体の低消費電力化,さらなる小型化が可能となった.GRaTに関して特許の出願を行った.加えて,PM2.5を測定する簡易・小型測定デバイスを開発した.2.地上気象ビッグデータの数値気象モデルへの同化手法の構築:地上気象ビッグデータの気象シミュレーションへのデータ同化インパクトを評価するため,オープン気象モデルWRFの3Dvarを用いたデータ同化数値実験を行った.夏の晴天日を対象としたシミューレーションにより地上気象データの同化が上空の気象解析値を有意に修正させることが確認された.一方で,精度の向上は確認されておらず,2020年度は4dvarを用いた同化数値実験を行う.上記に加え,上空風速の簡易・安価な測定原理であるCIV(Cloud Image Velocimetry)の開発,および羽田・成田空港を離発着する航空機から排出される排熱・排ガスのメソ気象用データベースの構築を行なった.
著者
仲吉 信人 大久保 洸平 Alvin C.G.VARQUEZ 神田 学 藤原 忠誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1741-I_1746, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

This paper analyzed the behavior of sea breeze (hereafter SB) penetration to urban area in Kanto. In order to analyze SB penetration, we proposed a new method for SB-front detection using very high-resolution-geostationary satellite images, or MTSAT-2 Rapid Scan, with 1 km-spatial and 5 min.-temporal resolution. From the images, the detailed behaviors of SB were successfully visualized. For the selected SB events, the penetrations to in-land from Tokyo bay and Sagami bay were discussed using the point data of AMeDAS and Atmospheric Environmental Regional Observation System (AEROS), and also a result from the meso-scale simulation, where the important urban effects were parameterized (e.g., actual aero-thermodynamic parameters, anthropogenic heat and vapor emission). Along Tokyo-Saitama line, SB stagnation occurred in every sea breeze event. The observed higher air temperature and convergence resulted in increased vertical mixing, leading to SB stagnation.