著者
伊東 美奈子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.135-146, 2011 (Released:2018-12-28)
参考文献数
13
被引用文献数
7

本研究の目的は,中堅看護師が転職前に行う転職への予測と転職先の病院で遭遇した現実との相違の構造を示すことである.臨床経験が5年以上で,1回の転職経験を持つ看護師をネットワークサンプリングにて募り,7名の看護師に対し半構造化面接を行った.得られたデータは,グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法に基づき継続比較分析を行った.その結果,7つのカテゴリーが抽出された.中堅看護師が転職前に行う予測は,【転職の理由】【転職先の吟味】【期待の抑制】から形成される【転職への期待や肯定的なイメージ】【転職後に起こりうることに対する予期的な懸念】であった.転職後に遭遇する現実には【予想や期待と相違する現実】の他に,事前の予測が及ばない【予想を超えた現実】があり,転職した看護師には新人看護師とは異なるリアリティショックがあることが示唆された.それに対し,現実的職務予告によって就業前に組織や職務に関する現実的情報を提供しておくこと,新人看護師とは別に,転職看護師に特化したサポート体制を整備することが必要と考えられた.
著者
菱沼 典子 大久保 暢子 加藤木 真史 佐居 由美 伊東 美奈子 大橋 久美子 蜂ヶ崎 令子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.123-132, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
38

目的: 看護技術研究の成果が実践や教育に活かされているかどうかを検討する目的で, 言い伝えや経験知に基づく看護技術の使用の実態を調査した. 方法: 看護協会等の研修会に参加した看護実践家と看護教員計476人を対象に, 研究により①確立されている技術, ②確立には至っていない技術, ③疑問が呈されている技術・手技について, 自記式質問紙調査を行った. 結果: 458部を回収 (回収率96.2%)し, 有効回答は374部 (有効回答率81.7%) であった. ①の例では点滴漏れへの対処に適切な冷罨法の実施は21.4%であった. ②では採血時に親指を中にして手を握ることを90.1%が実施していた. ③では浣腸前の摘便を27.5%が実施していた. 考察: 確立している技術が使われず, 確立途中の技術は使われ, 疑問を呈されている技術も使われている実態は, 研究成果と実践や教育に隔たりがあることを示している. 研究成果の活用には容易なアクセスと共有が課題であると考察した.
著者
伊東 美奈子 光永 悠彦 井部 俊子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.254-262, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:既卒採用者の離職の状況が不明であることから,全国的な調査を行い,既卒看護師の採用・離職の特徴を明らかにする.方法:都道府県毎の病院数や病床数によって層化し,無作為抽出された1,200病院の看護部門長を対象に,病院属性と2013年度の採用数および年度内離職者数を尋ねる質問紙調査を行った.既卒と新卒の結果について比較した.結果:246施設の回答を分析した.2013年度に採用を行った施設は240病院であった.既卒者は300床未満,一般病院,療養病床や精神病床を主とする病院で採用され,新卒者は300床以上,特定機能病院や地域医療支援病院,一般病床を主とする病院で採用される傾向があった.また,新卒は非常勤採用が0.8%とほぼ常勤で採用されるのに対し,既卒は24.3%が非常勤採用であった.採用年度内の離職率は新卒7.9%に対し既卒は17.9%と高く,特に100床未満の病院において既卒者が離職しやすい傾向があった.結論:既卒採用者は,新卒採用者より早期離職に至りやすく,定着対策,離職対策を早急に検討する必要がある.
著者
菱沼 典子 大久保 暢子 佐居 由美 加藤木 真史 伊東 美奈子 大橋 久美子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、看護技術の構成要素を科学性と病者-看護職の人間関係の両側面から、定義する目的で、看護技術の実態調査や文献検討、人間関係と看護技術に関する質問紙調査と面接調査を行った。その結果、看護技術は①目的、②方法、③安全性、④生体反応、⑤生理学的理論背景、⑥効果を得る確率と有効性から構成され、これらの根拠が示される必要があると結論付けられた。病者-看護職の人間関係は看護技術のパフォーマンスと病者・看護職両者の効果に影響し、看護実践の要素であることがわかった。