著者
光永 悠彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.116-127, 2020-03-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
101
被引用文献数
2

本稿は2018年7月から2019年6月の1年間を中心とした「測定・評価・研究法」に関連する研究成果について,その動向をまとめた。そのうえで,今後の教育測定学や教育評価の研究が,新しい大学入試制度の導入に代表される,大規模なテストの制度設計にどのように役立てられるかについて,一つの指針を示すことを目的とした。新しい高大接続のための仕組みとして導入が予定されていた,大学入学のための共通テストに英語4技能入試や記述式を導入する試みが,導入を目前にして再考を迫られている今,これまで発表されてきた「心理尺度構成」「測定法に関する方法論的検討」「テストに関連する応用・実践研究」「その他,測定・評価・研究法に関連する研究」の諸論考から,テストで測られる構成概念の必要性の議論や,測定方法の実現可能性に関する議論を充実させることと,教育測定関連の研究環境の充実や新しい分析手法の検討が今後重要になることを指摘した。
著者
光永 亜希子 光永 悠彦
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は大綱化以降に設立された新設大学の変遷を検証する。新設大学は短期大学や専門学校からの昇格が多く、また学校法人内に他の学校種を併設していることが多い。そのため学校法人単位で検討する。大学昇格をする/しないは併設校の財務的余裕や、高学歴化志向だけで決まるわけではない。またその行動や成否は地方の産業構造や人口構成、進学構造などの特性に左右される。そのため学校法人については、受験案内書などを参照して量的指標を作成し、財務指標データを加え、これらを用いた多変量解析によって分類する。加えて学校法人の属する地方の特性を踏まえ、定員充足の構造を探り、大学昇格や学部構成の指針となるモデルを探索する。
著者
光永 悠彦 柳井 晴夫 西川 浩昭 佐伯 圭一郎 亀井 智子 松谷 美和子 奥 裕美 村木 英治
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.17-34, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
20

Background: As Japanese nursing colleges increasingly require common criteria for assessing practical nursing ability prior to entering clinical hospital practice, it is important to construct a test item bank that can facilitate the evaluation of multiple domains. However, ordinal IRT models, such as the 2 parameter logistic model (2PL), operate under the assumption of unidimensionality, preventing application to comprehensive testing of multiple domains. Method: We conducted a computer-based test with items from 20 domains, classified into three areas: (1) basic medicine, (2) basic nursing, and (3) clinical nursing. About 780 students answered items, which were applied to common-item design and calibrated item parameters using two strategies; the first strategy assumed one-factor model for each area, the second strategy assumed unidimensionality by domain. Conclusion: For constructing an item bank, estimating item parameters by domain results in larger test information and more appropriate parameter estimates than estimating parameters by area.
著者
伊東 美奈子 光永 悠彦 井部 俊子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.254-262, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:既卒採用者の離職の状況が不明であることから,全国的な調査を行い,既卒看護師の採用・離職の特徴を明らかにする.方法:都道府県毎の病院数や病床数によって層化し,無作為抽出された1,200病院の看護部門長を対象に,病院属性と2013年度の採用数および年度内離職者数を尋ねる質問紙調査を行った.既卒と新卒の結果について比較した.結果:246施設の回答を分析した.2013年度に採用を行った施設は240病院であった.既卒者は300床未満,一般病院,療養病床や精神病床を主とする病院で採用され,新卒者は300床以上,特定機能病院や地域医療支援病院,一般病床を主とする病院で採用される傾向があった.また,新卒は非常勤採用が0.8%とほぼ常勤で採用されるのに対し,既卒は24.3%が非常勤採用であった.採用年度内の離職率は新卒7.9%に対し既卒は17.9%と高く,特に100床未満の病院において既卒者が離職しやすい傾向があった.結論:既卒採用者は,新卒採用者より早期離職に至りやすく,定着対策,離職対策を早急に検討する必要がある.
著者
羽藤 由美 神澤 克徳 光永 悠彦 清水 裕子 坪田 康 桝田 秀夫 永井 孝幸 ヒーリ サンドラ 竹井 智子 山本 以和子 森 真幸 内村 浩 伊藤 薫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

学校・大学等が入試や定期考査において,それぞれのアドミッション・ポリシー,教育目標,受検環境などに応じた英語スピーキングテストを開発・実施するためのガイドライン策定を目標として,以下の(1)~(5)を完遂した。(1)京都工芸繊維大学が独自に開発し,学内で定期実施しているコンピュータ方式の英語スピーキングテストシステム(毎年約700名が受験)について,リンガフランカ(共通語)としての英語運用能力を測るテストとしての妥当性を高めるために,評定基準と採点者訓練およびオンライン採点システムを改善した。(2)上記スピーキングテストを京都工芸繊維大学の平成30年度ダビンチAO入試に導入した実績に基づき,同じ仕様のテストを学内で能力診断テストとして実施する際と入学試験の一環として運営する際の違い(公正性・公平性の担保,システムの安定性維持,リスクマネージメント,情報セキュリティーのレベル等の違い)や,入試利用の際のこれらの点に関する留意点を明らかにした。(3)京都市立工学院高校の定期考査(「英語表現II」の1,3学期末試験)において,生徒とフィリピン在住の面接・採点者をスカイプで結ぶスピーキングテストを実施した。昨年度実施分から,テスト内容の改訂(ディベートとロールプレイの組み込み),採点基準・採点者訓練の改善,効果的なフィードバックのためのマニュアル作成を行った。(4)上記(1)~(3)の遂行状況をプロジェクトのホームページを通して広く社会に公表するとともに,実践報告や,実践を通して得たデータの分析に基づくリンガフランカとしての英語能力評価(特に,採点基準と採点方法)に関する研究成果を関連学会で発表した。(5)これまでのスピーキングテスト開発・運営の実績に基づいて,2020年度から始まる民間試験の入試利用(共通テストとしての活用)の問題点を明らかにし,関連のシンポジウムやブログ,twitterで発表した。