- 著者
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佐居 由美
- 出版者
- 聖路加看護大学
- 雑誌
- 聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
- 巻号頁・発行日
- no.30, pp.1-9, 2004-03
- 被引用文献数
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看護において,「安楽」という用語は「安全」と共に看護の目的とされ,実践場面においても看護目標としても多用されている言葉である。だが,「安楽」という用語は抽象的であり,研究者は看護者によってその意味するところが異なるという体験がしばしばあった。そこで,本研究においては,看護領域において用いられている「安楽」という用語を,実践場面で使用されている側面から検討し,その意味するところを明らかにすることとした。このことは,看護識者が「安楽」なケアの提供を意識化し,概念化する手がかりとなる。本研究の対象は,内科系外科系病棟看護師29名であり,質問紙を用いた半構成的面接法を行った。分析の視点は,Rodgersによる概念分析の方法に準拠し,『定義(Definition),先行するもの(Antecedents),帰結(Consequences),代替となる用語(Alternative Terms),関連する概念(Related Concept)』の5つの枠組を採用した。半構成的面接法によって得られた記述データを,Rodgersの5つの枠組毎に分析して,内容を抽出(原データ)し,その内容を要約した題目をつけ(コーディング1),更にそれらを類型化(コーディング2)した。その結果,29名の看護師から,29通りの「安楽」の定義が示された。「安楽」に"先行するもの"は,患者に関するものとして「苦痛」「不快」「不安]「環境」等が,看護師に関するものとして「安全」「看護技術」等が抽出された。「安楽」の"帰結"としては、「患者の満足」「自然治権力を高める」などが抽出された。"「安楽」の意味するもの"を, "「安楽」に先行するもの"を用いて,構造化した。看護師が患者により安楽なケアを提供するには,この構造図の要素を充実・強化する必要があることが示唆され,看護実践場面における「安楽」という用語の意味は,この構造図の範囲内において説明でき,連想されることが示された。