著者
伊藤 明美 水落 雄一朗 嘉村 由美子 太田 美穂 竹山 廣光 祖父江 和哉
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.991-995, 2011 (Released:2011-06-15)
参考文献数
15

本邦において入手できる微量元素製剤にはセレンが含まれていないため、在宅中心静脈栄養 (Home Parenteral Nutrition;以下HPNと略) 管理中にセレン欠乏症を起こす危険性は少なくない。今回、HPN管理開始3年でセレン欠乏症を発症し、これまでに報告のない毛髪形態変化 (巻き毛) をはじめ多様な臨床症状を呈し、院内セレン製剤の投与により一定の症状改善をみた症例を経験した。セレン欠乏症による臨床症状は、重症化すると不可逆となる可能性があり、その予防には臨床症状の慎重な観察とセレン値の定期的なモニタリングが必要である。
著者
伊藤 明美
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.3-6, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
8

妊娠時から産褥期における栄養管理の目的は、妊婦の健康と胎児の発育を守ることである。通常、「日本人の食事摂取基準」を満たすような食生活が理想と言える。しかし、平成29年の「国民健康・栄養調査」結果では、20歳代女性のやせ(BMI<18.5㎏/m2)の割合は21.7%と多く、カルシウム、マグネシウム、鉄は推定平均必要量を下回っている。非妊娠時のやせや妊娠時の体重増加不良は、低出生体重児のリスクが高いことが知られている。また、胎児の発育に影響を及ぼす葉酸、ビタミンA、Dのように不足と過多の両方に配慮が必要な栄養素もあり、妊娠前からの栄養教育が必要である。妊娠を機に起こりうる病態や代謝異常には、妊娠悪阻、糖代謝異常、妊娠高血圧症候群などがあり、これらの患者には特別な栄養管理が必要となる。今回、これらの妊婦の栄養サポートに関わるスタッフが知っておきたい栄養管理について概説する。
著者
伊藤 明美
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-14, 2004

共感は、異文化コミュニケーション研究において一般的に使用される概念の1つとなったが、その理解については研究者の個人的判断にまかせられることが多い。本論では、これまで共感研究の中心であった心理学での発見と日本および英語文化圏での日常的理解を参考にしながら、異文化コミュニケーションで求められる共感について「互恵的関係構築を目的とし、他者の視点や立場からそれらが埋め込まれた文化文脈の中で他者感情や体験を共有する認知的・情緒的能力」と定義し、その上で、こうした共感には非二元論的な自己理解が重要となることについて論じる。共感には他者との同一性を求める感性や態度が少なからず必要と考えるが、このような意味で仏教における無我の概念は多くの洞察を与えてくれる。なぜなら、無我の根底には二元論を超えた自己理解が存在するからである。しかも、無我は無自己を意味するのではなく、むしろ自己追求のプロセスであり、共感が自己喪失を招くとする米国人的な不安もない。異文化コミュニケーションで目指されるべき建設的な人間関係の構築は、こうした東洋的自己理解を前提とした共感によって、大きな一歩を踏み出しうるのではないかと考える。
著者
伊藤 明美
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.3-6, 2019

<p>妊娠時から産褥期における栄養管理の目的は、妊婦の健康と胎児の発育を守ることである。通常、「日本人の食事摂取基準」を満たすような食生活が理想と言える。しかし、平成29年の「国民健康・栄養調査」結果では、20歳代女性のやせ(BMI<18.5㎏/m<sup>2</sup>)の割合は21.7%と多く、カルシウム、マグネシウム、鉄は推定平均必要量を下回っている。非妊娠時のやせや妊娠時の体重増加不良は、低出生体重児のリスクが高いことが知られている。また、胎児の発育に影響を及ぼす葉酸、ビタミンA、Dのように不足と過多の両方に配慮が必要な栄養素もあり、妊娠前からの栄養教育が必要である。妊娠を機に起こりうる病態や代謝異常には、妊娠悪阻、糖代謝異常、妊娠高血圧症候群などがあり、これらの患者には特別な栄養管理が必要となる。今回、これらの妊婦の栄養サポートに関わるスタッフが知っておきたい栄養管理について概説する。</p>
著者
伊藤 順一郎 福井 里江 坂田 増弘 山口 創生 種田 綾乃 相川 章子 伊佐 猛 市川 亮 伊藤 明美 大島 真弓 岡本 和子 黒木 紀子 坂本 麻依 佐竹 直子 佐藤 由美子 澤田 優美子 関根 理絵 富沢 明美 友保 快児 二宮 史織 久永 文恵 藤田 英親 松長 麻美 松谷 光太郎 村木 美香
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、共同意志決定 (SDM)を促進するツール(SHARE)を用いた包括的なSDMシステムの構築とその効果検証であった。SHAREは利用者のリカバリーゴール(希望する生活の実現に向けた目標)や自身の精神的健康にとって大切なこと、自身の状態を適切に医師に伝えることに焦点を当てたPCソフトウェアである。利用者は診察前にピアスタッフのサポートを受けながら自身の情報をSHAREに入力した。医師はSHAREの情報をもとに診察を進め、診察の最後にSDMを実施する。このSDMシステムは、臨床的なアウトカムに影響を及ぼすことはなかったが、患者と医師のコミュニケーションや関係性の向上に効果を示した。
著者
勝間 みどり 伊藤 明美 西村 理恵 柿原 繭子 西川 千歳 善家 里子 神徳 規子
出版者
神戸市看護大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13428209)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-25, 1998-03-05

阪神・淡路大震災から2年が経過した時点での,学生の震災体験の状況,災害観と災害対策,災害看護の授業に関する調査を行い,平成11年度より開講される「災害看護」の教育内容を検討した。調査の結果,8割の学生が震災を経験し,心身や学習,住居などに影響を受けていた。災害観は日本人の特徴である災害を天災や運命ととらえる運命論や天譴論が多かった。しかし一方では,災害対策を講じれば被害はくいとめられるという災害意識を持っていた。また,6割の学生が災害看護の授業を希望しており,救護活動,応急処置,看護婦の役割と責任など実践的な内容に関心が高かった。以上のような学生の状況を認識したうえで,学生や講師の実体験を生かし,被災地の特性をふまえた授業内容・方法の工夫が必要である。さらに,授業を行うことが災害の啓蒙活動にもつながり,災害看護学を確立していくことになる。