著者
藤幡 士郎 坂本 宣弘 松尾 洋一 佐藤 幹則 木村 昌弘 竹山 廣光
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.617-621, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
8

患者は24歳,女性.食後の悪心を主訴に近医を受診し,腹部CT検査にて左傍結腸溝付近に45×24mm大の嚢胞性腫瘍を指摘され,当院消化器外科を紹介された.腹部は平坦・軟であり腫瘤は触知されず,圧痛も認めなかった.紹介後に当院施行の腹部造影CTにて60×20mm大の嚢胞性病変が指摘され,MRI T2強調画像では50×32mm大の高信号域が前述の部位に指摘された.内部に結節等の充実性病変は認められなかったが,徐々に増大する良性嚢胞性疾患の診断の下予防的切除に同意され手術を施行した.腹腔鏡下に手術を施行,下行結腸外側の後腹膜に境界明瞭な嚢胞性の腫瘤を確認し被膜を損傷することなく摘出した.嚢胞内容物は粘液様で細胞診は陰性であったが,生化学検査ではCEA・CA125が高値であった.病理組織学検査の結果,粘液嚢胞腺腫の診断を得た.術後9カ月の現在,再発の兆候を認めていない.
著者
伊藤 明美 水落 雄一朗 嘉村 由美子 太田 美穂 竹山 廣光 祖父江 和哉
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.991-995, 2011 (Released:2011-06-15)
参考文献数
15

本邦において入手できる微量元素製剤にはセレンが含まれていないため、在宅中心静脈栄養 (Home Parenteral Nutrition;以下HPNと略) 管理中にセレン欠乏症を起こす危険性は少なくない。今回、HPN管理開始3年でセレン欠乏症を発症し、これまでに報告のない毛髪形態変化 (巻き毛) をはじめ多様な臨床症状を呈し、院内セレン製剤の投与により一定の症状改善をみた症例を経験した。セレン欠乏症による臨床症状は、重症化すると不可逆となる可能性があり、その予防には臨床症状の慎重な観察とセレン値の定期的なモニタリングが必要である。

2 0 0 0 OA がんとEPA

著者
溝口 公士 竹山 廣光
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.941-946, 2015 (Released:2015-08-20)
参考文献数
20

n-3系不飽和多価脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン酸(EPA)には抗炎症作用や抗がん作用があることが多くの研究で明らかとなってきている。古くはグリーンランドでの疫学調査でEPAを豊富に含む食事を摂取する人々には急性心筋梗塞の発症率が低かったとする報告により注目を浴びたのだが、それ以降の研究でEPAには様々な作用があることが解明されてきた。なかでも今回注目したがんに対する作用については日々新たな研究成果が発表され、臨床応用がなされつつある。さらなる研究によって詳細な作用機序の解明と本格的な臨床応用が待たれるところである。EPAとがんというテーマでEPA の抗がん作用に対する近年の研究を見るとともに、がんと密接な関係にある炎症、その炎症を抑える作用においてEPAより代謝される脂質メディエーターの作用についても注目し報告する。
著者
小川 了 竹山 廣光
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.293-300, 2019-12-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
31

n‐3系脂肪酸は魚油, ボラージ油 (ルリジサ種子油) に豊富に含まれている脂肪酸で, n‐6系脂肪酸とともに必須脂肪酸である. このうちEPA, DHAには抗炎症作用や抗癌作用があることが多くの研究で明らかとなってきている. 作用機序に関してはいまだ十分に解明されていないが, 近年, n‐3系脂肪酸から細胞間生合成経路によって産生されるレゾルビンなどの代謝産物が同定され, 脂質メディエーターとして働き, 炎症の消退に関与していることがわかってきている. また, EPAの癌に対する作用については, 細胞レベルの実験では膵癌, 乳癌, 結腸癌, 肝細胞癌, 肺癌, 食道癌などにおいて種々の癌によって報告されている. EPAはNF‐κBの活性化を抑制し, 炎症性サイトカインの産生を制御することから, 癌制御目的や抗炎症目的にEPAを投与もしくはEPA含有する免疫栄養療法が注目され, 前向き試験が行われてきた. しかし, 現時点は臨床において炎症や癌の制御に対するはっきりとした有効性は認めていない.
著者
竹山 廣光 社本 智也
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-10, 2014 (Released:2014-03-21)
参考文献数
32

n-3系多価不飽和脂肪酸 (EPAやDHA) には炎症を抑える働きが報告されてきたが、その作用機序は十分には解明されていない。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸から細胞間生合成経路によって産生されるレゾルビンなどの代謝産物が同定された。これらは脂質メディエーターとして働き、炎症の消退に積極的に関わっていることが示された。炎症を強力に収束する作用を持ち、炎症を基盤とするさまざまな疾患に対して効果が期待されている。このような脂質メディエーターの生理活性機構の理解がn-3系多価不飽和脂肪酸の抗炎症効果の解明につながると考えられる。
著者
舟橋 整 赤毛 義実 竹山 廣光 毛利 紀章 若杉 健弘 寺西 太 早川 哲史 福井 拓治 田中 守嗣 真辺 忠夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1601-1605, 2001-11-01
参考文献数
9

切除不能進行胃癌に対し腹腔動注併用化学療法が奏功した症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性.上腹部痛を主訴に来院し, 上部消化管内視鏡検査にてBorrmann IV型胃癌を指摘された.1999年6月手術施行するもT4, N3, P1, H0, M1, CY1:stage IVのため試験開腹とし, 左右横隔膜下にリザーバーを留置してmodified low doseCDDP+5FU regimenにて化学療法を施行した.9月にTh9/10のレベルでAorta内に動注用リザーバーを留置し, 以後外来通院にて腹腔動注併用化学療法を施行した.2000年4月食思不振にて再入院するまでQOLを損なうことなく外来通院にて腹腔動注併用化学療法が施行できた.