著者
伊藤 汎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.524-525, 1978

糖蜜甘味香の主要成分の一つであるバニリンの精糖工程中における生成の有無を検討した。試料としては同一精糖工場の同一期間の原料糖,ファインリカー,洗糖蜜,廃糖蜜を継続して10日間採取して,原料糖からの流れのタイムラグを防止した。<BR>その結果,原料糖から移行したバニリンは清浄脱色工程で全て除かれ,清浄脱色工程を通らない洗糖蜜に含まれて回収晶析工程を経て糖蜜中に残ったものだけが廃糖蜜中に蓄積されることがわかり,精糖工程中でのバニリンの生成はないことが明かとなった。
著者
吉松 藤子 下村 道子 福永 淑子 伊藤 汎
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-27, 1992-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12

“Geppei” is a traditional Chinese food. A way of preparing “Geppei” is as follows: First of all, the mixture of sugar, water and vinegar is boiled until the sugar content becomes 67%. This sugar solution is used after aging for several weeks. Then, the sugar solution, lard, wheat flour, and “kan-sui”, which is a Chinese special alkaline solution, are kneaded to a dough. Bean paste wrapped in the dough is baked into “Geppei”. A characteristic of the crust of “Geppei” is that it retains its soft texture during several weeks storage. In this study, the effects of the vinegar in the sugar solution on the physical properties of the crust were studied.The crust made of the sugar solution with the vinegar was softer than the crust without vinegar. Invert sugar was produced markedly in the sugar solution with the vinegar during boiling or aging. The crusts were made using the sugar solution which contains sucrose, glucose and fructose in various ratio, and the breaking strength was measured by a Rheoner. The more the glucose and fructose was included, the smaller the breaking strength and the softer the crust was. This is thought to be due to high hygroscopic property of invert sugar. In addition, the effect of “kan-sui” was to make the crust a desirable brown color.
著者
吉松 藤子 下村 道子 福永 淑子 伊藤 汎
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-27, 1992

月餅の皮は日数を経過しても軟らかさを保っている、この理由を明らかにし、また材料の1つであるかん水の役割について検討した。(1)従来法により調製した月餅皮のドウ及び焼成した皮について検討した結果月餅のドウは食酢の添加の有無及び糖水の保存期間の長短にかかわらず物性の変化は殆どみられなかった。しかし焼成した皮では食酢を添加した糖水、あるいは長期間保存した糖水を用いた場合には軟らかい皮が得られた。また焼成1週間後のものは焼成直後のものより軟らかいものが得られた。(2)酸を添加した糖水の成分の変化をグラニュー糖を用いて調べた。その結果加熱過程中に転化糖が生成されることが明らかになり、またこれを保存することにより転化の進行が認められ、保存温度20℃より37℃の方が転化度は高かった。酸の無添加の糖水ではほとんど転化は見られなかった。(3)転化糖の存在が皮を軟らかくするように思われたのでモデル実験を行った。すなわち転化糖の量を三段階に変化させた糖水を用いて月餅皮を焼成した結果、転化糖量の多いものほど、しっとりとした軟らかい皮が得られ、転化糖が皮の物性に寄与していることが判明した。(4)かん水の使用が月餅皮の色に及ぼす影響について、かん水を用いないものを対照として比較したところ焼き色に好ましい色を与えることが明らかになった。