著者
伊藤 康宏 加藤 みわ子 古井 景 伊藤 祥輔 若松 一雅
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.52-59, 2019 (Released:2019-01-01)
参考文献数
18

多くの人々は, 若くて健康な人の肌の色は, そうではない人と比べて黒っぽいと考えることが普通である. しかしながら, 病気で入院している患者や血液透析を受けている人は肌の色が黒っぽく感じられる. 人は重度の病気になると不安を感じ, 抑うつが高くなるものである. われわれは, 健常な学生ボランティアの皮膚のメラニン度数と抑うつを測定し, 両者の関係を検討した. その結果, 皮膚のメラニン度数と抑うつには相関が認められた. メラニンには黒・褐色のユーメラニンとピンク・黄色のフェオメラニンがある. このうち, フェオメラニンの生成にはグルタチオンなど多量の抗酸化物質が必要である. 抑うつによる生活リズムの乱れは生体の酸化ストレスを誘導し, それに対応するために抗酸化物質が使われる. その結果, フェオメラニンの生成量が減少してユーメラニンの比率が増加し, 皮膚への色素沈着が起こるものと考えている.
著者
伊藤 祥輔 若松 一雅
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

メラニンには黒色のユーメラニン(EM)と赤褐色のフェオメラニン(PM)の2型がある。本研究は、両型のメラニンの紫外線(UV)-A(および可視青色光)による分解過程およびその生理的意義の解明を目的とした。EMのモデルとしてのDHICAメラニンについて、UVAにより酸化されてキノン体となり、さらに酸化されて特異的分解産物を生じるが、これらの過程において、スーパーオキサイドラジカルおよび一重項酸素が生じることを示した。さらに、合成EMおよびPMについて、300-550 nmの光照射により前記の活性酸素を生じるが、メラニンにより速やかに捕捉されることを示した。
著者
富田 靖 吉村 達雄 根東 義明 五十嵐 裕 伊藤 祥輔
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.473-479, 1992

6ヵ月男児のメンケス病の一例を報告した。本例は低血清銅値と低セルロプラスミン値, 発育不良, 筋痙攣発作などの典型的症状を示した。皮膚症状としては, 頭髪の低色素ないし白髪と捻転毛を示した。これら諸症状は, 銅利用の先天的な欠陥が引き起こした銅酵素群の活性低下によるものである。頭髪のユウメラニンおよびフェオメラニン含量は健常人の半分程度で, 銅酵素であるチロシナーゼの活性低下が示唆された。乳幼児に白髪や捻転毛を示す疾患は限られており, これら頭髪の症状の出現は本症の診断に重要な意味を持つと考える。
著者
若松 一雅 伊藤 祥輔
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヒト中脳黒質中に存在するニューロメラニン)NM)を単離し、その構造研究を行った。その結果、NMはDAとCysが約4:1で酸化重合して生成したフェオメラニンの構造単位であるベンゾチアジンを持つ部分とDAの酸化重合で得られたユーメラニンの構造単位からなることがわかった。また、脳内被殻、前運動野皮質、小脳などの非カテコールアミン作動性ニューロンにおいて新しいNM様色素が存在することを発見した。この色素は、黒質や青斑核に存在するNMと違って、DA由来でなくDOPA由来であることが化学分解法とHPLC分析により確認された。